ひとことで言うと
英語教授法(メソッド)は、英語をどう教えるかについての体系的な考え方と手順のことです。文法訳読法から始まって、その反発として直接教授法が生まれ、音声重視のオーディオリンガル、人間中心の教授法(TPR・サイレント・ウェイ・サジェストペディア・CLL)、意味のやり取りを中心にしたコミュニカティブ・アプローチ、タスク中心、内容と言語を統合するCLILへと、およそ150年かけて変わってきました。今の授業はどれか1つではなく、場面で使い分ける折衷が普通です。この一覧は、用語集の教授法のページの地図です。
出どころ
教授法の歴史は、応用言語学の教科書(リチャーズとロジャーズの Approaches and Methods in Language Teaching が定番)で整理されていて、日本の教職課程と教員採用試験の英語科ではこの系譜と略語が頻出です。日本での受容には独自の順序があり、1922年に来日したパーマーのオーラル・メソッド、1956年に来日したフリーズのオーラル・アプローチ、そして2009年告示の高校学習指導要領「授業は英語で行うことを基本とする」が節目です。
授業での実際の使い方
年代順の一覧です。それぞれ「何に反発して生まれたか」を見ると、覚えやすく、今の授業のどこに残っているかも分かります。
| 年代 | 教授法(略語) | 中心の考え方 | 何に反発したか | 今の授業に残っているもの |
|---|---|---|---|---|
| 19世紀 | 文法訳読法(GTM) | 文法の説明と訳 | ラテン語教育の型を近代語へ | 精読の確かめの訳 |
| 1880年代〜 | ダイレクト・メソッド(DM) | 訳さず目標言語だけで | 訳読では話せない | 教室英語・オールイングリッシュ |
| 1920年代(日本) | オーラル・メソッド(パーマー) | 口頭練習を先に・5つの習慣 | 日本の訳読中心 | オーラルイントロダクション |
| 1940〜50年代 | オーディオリンガル(ALM)・オーラル・アプローチ(フリーズ) | 模倣と反復のドリル・習慣形成 | 文法説明中心 | パターンプラクティス・チャンツ |
| 1960年代 | 認知学習理論(コグニティブ・コード) | 規則の理解と創造的な使用 | ALMの機械的反復(チョムスキーの批判) | 帰納的な文法の気づき |
| 1960〜70年代 | TPR・サイレント・ウェイ・サジェストペディア・CLL | 身体・発見・安心・共同体(人間中心) | 不安の多い教室と機械的練習 | 小学校の動作つき活動・安心して話せる教室づくり |
| 1970〜80年代 | コミュニカティブ・アプローチ(CLT) | 伝達能力・意味のやり取り | 形だけの正確さ | 言語活動・インフォメーションギャップ |
| 1983年 | ナチュラル・アプローチ(インプット仮説) | 理解できるインプットと低い不安 | 早すぎる産出の強制 | 聞いてから話す順序・スモールトーク |
| 1980〜90年代 | タスク(TBLT)・フォーカス・オン・フォーム | タスクを先に・活動の中で形へ | 文法項目順の授業(PPP) | やらせてから教える型・中間指導 |
| 1990年代 | 語彙アプローチ | チャンクで教える | 文法と単語の分離 | チャンクの単語テスト |
| 1990年代〜 | CLIL・イマージョン | 内容と言語を同時に | 言語のための言語の授業 | 教科の内容を英語で扱う単元 |
| 2000年代〜 | ポスト・メソッド(折衷) | 万能の方法は無い・文脈で選ぶ | 「唯一の正解」探し | 今の授業そのもの |
使い方は「1時間の中で並べる」ことです。導入はオーラル・メソッドの流れ(聞かせて言わせる)、練習はALMのドリル(3〜5分)、活動はCLTの言語活動、形への注意はフォーカス・オン・フォーム、読解の確かめはGTMの訳、というように、場面ごとに違う教授法の道具を使います。これが折衷(ポスト・メソッド)で、どれか1つに決める必要はありません。
教員採用試験と教育実習で聞かれるのは、略語と提唱者と中心の考え方の3点セットです(GTM・DM・ALM=フリーズ・TPR=アッシャー・サイレント・ウェイ=ガテーニョ・サジェストペディア=ロザノフ・CLL=カラン・ナチュラル・アプローチ=クラッシェンとテレル・CLT・TBLT・CLIL)。
よくある誤解
- 新しい教授法ほど正しい、ではありません。ALMのドリルもGTMの訳も、場面を限れば今の授業で最短の道具です。
- 教授法は1つに決めるもの、でもありません。1時間の中で並べて使うのが実際で、決めるのは「どの場面でどれか」です。
- 「英語で授業」=ダイレクト・メソッドの復活、でもありません。学習指導要領が求めているのは、生徒が英語を使う時間を増やすことで、説明の言語を縛ることではありません。
校種別の違い
| 校種 | 特徴 |
|---|---|
| 小学校 | TPRとナチュラル・アプローチの考え方(動作・聞いてから話す・不安を下げる)がそのまま活動になっている |
| 中学校 | 導入(オーラル・メソッド)→練習(ALM)→活動(CLT)の並びが基本。文法項目順の教科書の中で、活動を作る |
| 高校 | 訳読(GTM)が残っている校種。精読の道具に限り、論理・表現はCLTとTBLTで組む |
| 塾 | 入試のためにGTMと精読に寄りやすい。確認テストの前に相手のいる活動を1回入れる |
この用語が出てくる教材と記事
- 中学英語の授業の進め方。導入→練習→活動の並びを50分にした本編で、教授法を並べて使う形です。
- 教育実習の英語授業ガイド。指導案の教材観に教授法の考え方をどう書くかを含む、3週間の組み立てです。
- 入試の英語と、使える英語力は両立するか。訳読と「英語で授業」の葛藤の現実的なほどき方です。
- 中学英語のコミュニケーション活動18選。CLTの言語活動を全文法でそろえた活動集です。
- 授業の型としての並べ方はPPP、日本の教室での「英語で授業」はオールイングリッシュへ。