ひとことで言うと
フォーカス・オン・フォームは、意味のやり取りを中心にした活動の中で、必要なときに生徒の注意を文法の形に向けさせる指導の考え方です。文法項目を1つずつ順に教えていく指導(フォーカス・オン・フォームズ、複数形の s がつく)と、意味だけを扱って形を気にしない指導(フォーカス・オン・ミーニング)の中間にあります。中学校の授業で言えば、ペア活動の途中で止めて「今の文、動詞の形は?」と聞く中間指導が、いちばん身近なフォーカス・オン・フォームです。
出どころ
第二言語習得研究者のマイケル・ロングが1991年に提案した用語です。意味中心の授業(イマージョンなど)では文法の正確さが育たないという実測と、文法項目を順に教える授業では使えるようにならないという実測の両方を受けて、「意味のある活動の中で、形に注意を向ける瞬間を作る」という第3の道として示されました。日本では2000年代以降、タスク中心の言語教育(TBLT)とセットで紹介されています。
授業での実際の使い方
技術は5つあります。どれも「活動の最中か直後」に使うのが条件で、活動の前に文法を説明することはフォーカス・オン・フォームズです。
| 技術 | やること | 例 |
|---|---|---|
| リキャスト | 生徒の誤りを、正しい形で言い直して返す | 生徒 He go to school. → 先生 Oh, he goes to school. |
| 下線・太字 | 本文の目標の形だけに印をつけて読ませる(インプット強化) | 過去形の -ed に全部下線 |
| ディクトグロス | 聞いた文章をメモから復元させ、原文と比べて形の差に気づかせる | 三単現の s が落ちた自分の文と原文 |
| 中間指導 | 活動を止めて、拾った誤りを黒板で1つだけ直し、活動を再開 | 「今の言い方、3人が同じところで止まった」 |
| 気づきの発問 | 形の違いを生徒に見つけさせる | 「この2文、何が違う?」(played と plays) |
活動20分の中で、形に向ける時間は合計3分まで。それを超えると、活動が文法の授業に戻ります。気づかせたあとに「もう一度やってみて」で活動に戻すところまでが1セットです。
よくある誤解
- 文法を説明しない指導、ではありません。説明はしてよく、タイミングが「活動の前」ではなく「活動の中か後」になるだけです。
- 文法を軽く見る考え方、でもありません。むしろ意味中心の授業で形が育たないことへの反省から出た用語です。
- フォーカス・オン・フォームズ(文法項目を順に)が悪いわけでもありません。検定教科書の単元は項目順に並んでいて、その中で活動の時間を作るのがフォーカス・オン・フォームです。
校種別の違い
| 校種 | 特徴 |
|---|---|
| 小学校 | 文法の説明はしないので、リキャストと「もう一度言ってみて」だけがフォーカス・オン・フォーム |
| 中学校 | 中間指導とディクトグロスが中心。教科書の単元(項目順)の中で活動を作り、活動中に形へ戻す |
| 高校 | 論理・表現の活動(意見を書く・話す)の後に、生徒の文から形の誤りを拾って全体に戻す |
| 塾 | 個別指導は項目順の説明に寄りやすい。生徒が書いた文を直す時間をフォーカス・オン・フォームにする |
この用語が出てくる教材と記事
- 中学英語の文法導入ネタ20選。説明の前に「使いたくなる場面」を作る導入で、活動の中で形に気づかせる入口です。
- 文法の説明はわかるのに、話す・書くとなると使えない生徒が多いです。項目順の説明だけでは使えるようにならない理由と手当てです。
- 中学英語のコミュニケーション活動18選。活動の中で形に戻す中間指導を入れやすい、情報の差のあるペア活動です。
- 技術のそれぞれはリキャスト、中間指導、ディクトグロス、セットで語られる考え方はタスク(TBLT)へ。