ひとことで言うと
ディクトグロスは、短い英文(3〜5文)を通常の速さで2回聞き、聞きながらキーワードだけをメモして、そのあと班で協力して元の文章を復元する活動です。一語一句を書き取るディクテーションとは違い、メモは断片で構いません。復元するときに「ここは過去形だったはず」「主語が複数だから動詞は…」という相談が起きて、文法の気づきが生まれます。
出どころ
オーストラリアの言語教育研究者ルース・ワインリブが1990年の著書で示した方法です。原題は Grammar Dictation(文法のためのディクテーション)で、聞く・メモする・復元する・比べるの4段で、文法を「説明される」のではなく「必要になって気づく」ことをねらいにしています。
授業での実際の使い方
| 段 | 分 | やること |
|---|---|---|
| 準備 | 2 | 話題と難しい語を2〜3つ黒板に書く。「聞きながら、単語だけメモ」と言う |
| 聞く | 3 | 通常の速さで2回読む。1回目はメモなしで全体を聞き、2回目でキーワードをメモ |
| 復元 | 10 | 3〜4人の班で、メモを持ち寄って文章を書く。「意味が同じなら本文と違ってもよい」 |
| 比べる | 5 | 原文を配って、班の文と比べる。違ったところに印をつけ、なぜ違うかを1つ言う |
英文は、その単元の文法が2〜3回出てくる3〜5文(40〜60語)にします。先生が言う言葉は「全部書かなくていい。聞こえた単語だけ」と「本文と同じでなくていい。意味が同じなら正解」の2つです。
よくある誤解
- ディクテーションではありません。ディクテーションは一語一句の書き取りで、正解は1つです。ディクトグロスは意味の復元で、本文と違う言い方でも意味が通れば正解にします。
- 聞き取りの活動だけではありません。効き目の中心は復元の段の相談にあります。班を作らずに1人で復元させると、文法の気づきが起きにくくなります。
- 速く読む必要はありませんが、遅くもしません。通常の速さで読むから断片しか取れず、断片から復元するから文法を考えます。
校種別の違い
| 校種 | 形 |
|---|---|
| 小学校 | 文字の書き取りは扱わないので、聞いた話の内容を絵カードで並べ直す形に置き換える |
| 中学校 | 単元の文法が入った3〜5文。中1は2〜3文から |
| 高校 | 5〜8文の段落。復元のあと、要約を1文足す形に発展させる |
| 塾 | 個別指導で、確認テストの前に文法の穴を見つける道具として |
この用語が出てくる教材と記事
- ディクトグロスの授業案。手順と英文の例がそのまま使える授業案です。
- リスニング指導の技術。「流して答え合わせ」をやめる3段の考え方は、ディクトグロスの聞く段と同じです。
- 中学英語の文法定着ドリル。復元で気づいた文法を、そのあと定着させる紙です。
- 聞いてすぐ言う活動はシャドーイングへ。