ひとことで言うと
リキャストは、生徒の誤りを含む発話を、会話の流れを止めずに、正しい形で言い直して返す訂正の方法です。生徒が I go to Kyoto yesterday. と言ったら、Oh, you went to Kyoto yesterday. Nice. と返します。「違う」とは言わず、内容には反応しながら、形だけ正しく言い直します。
出どころ
カナダの研究者ライスターとランタが1997年に、教室での誤りの訂正フィードバックを6つに分類しました。明示的な訂正、リキャスト、明確化の要求、メタ言語的フィードバック、引き出し、繰り返しです。リキャストは教室でいちばん多く使われる一方、生徒が訂正だと気づきにくい、というのがこの研究の指摘でした。
授業での実際の使い方
| 訂正の方法 | 先生の返し方(生徒: I go to Kyoto yesterday.) | 向いている場面 |
|---|---|---|
| リキャスト | Oh, you went to Kyoto yesterday. | 言語活動の途中(流れを止めない) |
| 繰り返し | I go to Kyoto yesterday? (誤りの箇所を上げ調子で) | 気づける生徒に |
| 引き出し | Yesterday, I ...? | 練習の場面で自分で直させたいとき |
| 明示的な訂正 | Not go. Went. | 形の練習・答え合わせ |
使い分けの線は「いま何をしている時間か」です。言語活動(伝え合うことが目的)の最中はリキャストにして、会話を止めません。形の練習の最中は、引き出しや明示的な訂正で、その場で直させます。リキャストで生徒が気づかないときは、言い直したあとに一拍置いて、生徒がもう一度言うのを待ちます。
よくある誤解
- 訂正しないことではありません。正しい形を必ず返しています。ただ「違う」とは言わないだけです。
- 生徒が必ず気づく方法ではありません。研究が指摘したとおり、内容の返事として聞き流されることがあります。同じ誤りが続くなら、帯や次の時間で形の練習に回します。
- すべての誤りを直す必要はありません。その時間のねらいの文法の誤りだけを直し、他は流します。全部直すと、生徒は話さなくなります。
校種別の違い
| 校種 | 形 |
|---|---|
| 小学校 | 担任が既習の表現で言い直して返す。「直す」より「正しい音をもう一度聞かせる」 |
| 中学校 | 言語活動の中はリキャスト、練習の中は引き出し。ねらいの文法だけ |
| 高校 | 意見を述べる活動では内容に反応しつつリキャスト。英作文は書いた形で返す |
| 塾 | 個別指導では明示的な訂正が中心でよいが、話す練習の間だけはリキャストに |
この用語が出てくる教材と記事
- 誤り訂正の技術|いつ直す・どう直す・直さない勇気。訂正の方法と場面の使い分けを書いた本編です。
- ライティング指導の技術。書いた英文の誤りの返し方(赤ペン全部入れをやめる)です。
- 即興で話す力の育て方。話している最中に訂正で止めない帯の考え方です。
- 活動を止めて全体に返す形は中間指導へ。