ひとことで言うと
オーディオリンガル・メソッド(ALM)は、模倣と反復のドリルで文の型を口に定着させることを中心にした教授法です。文法を説明する前に、聞いて、まねて、置き換えて、何度も言う。パターンプラクティスはこの教授法の中心の技術で、今の授業の「練習」の段階に残っているのはその名残です。教授法としては1970年代に批判を受けましたが、練習の道具としては生きています。
出どころ
第二次世界大戦中のアメリカ軍の語学訓練(アーミー・メソッド)が原型で、1950年代にミシガン大学のフリーズらが構造言語学と行動主義心理学(習慣形成)を土台に体系化しました。「オーディオリンガル」の名は1960年代に定着し、日本には1960〜70年代に入って、教科書付属の口頭練習として広がりました。1960年代末にチョムスキーが習慣形成の言語観を批判し、1970年代以降はコミュニカティブ・アプローチが主流になります。
授業での実際の使い方
教授法を丸ごと使う場面はもうありませんが、ドリルの3段階は今の授業でそのまま使えます。1つのドリルは3〜5分で切ります。
| 段階 | ドリル | 例(中1・三人称単数) |
|---|---|---|
| 機械的 | 置き換え(先生が語を出し、生徒が文に入れる) | She plays tennis. → soccer → She plays soccer. |
| 意味のある | 変形・応答(本当のことで答える) | Does she play tennis? → No, she doesn't. She plays the piano. |
| コミュニケーション | 相手の情報を聞く | ペアで相手の家族について3文 |
機械的な段階で終わらせず、必ず3段目まで行くのがコツです。1段目だけを10分続けると、生徒は口が動いているだけで意味を考えていません。チャンツはリズムをつけた1段目、インフォメーションギャップは3段目にあたります。
よくある誤解
- 古い教授法だから使ってはいけない、ではありません。文の型を口に入れる場面(中1の be動詞や三単現)では、短いドリルは今でも最短の道です。
- 授業の全部をドリルにするのは、教授法としてのオーディオリンガルそのもので、これは批判されたとおり、使える英語につながりません。
- オーディオリンガルは「聞く・話す」だけの方法だと言われますが、読む・書くは後回しにしただけで、扱わないわけではありません。
校種別の違い
| 校種 | 特徴 |
|---|---|
| 小学校 | チャンツと歌が実質的なドリル。意味のある段階(本当のことで答える)へ早めに移す |
| 中学校 | 新出文法の練習の5分に。置き換え→応答→ペアの3段で、3段目を必ず残す |
| 高校 | ドリルは減るが、口頭で型を出す練習は論理・表現で残す。定型表現(I think that ... because ...)の反復に |
| 塾 | 個別指導では音読と置き換えを生徒1人で。声に出さない生徒には、先生が1段目を一緒にやる |
この用語が出てくる教材と記事
- 中学英語の文法定着ドリル28本。機械的な練習で終わらないように、場面つきにした定着ドリルです。
- 中学英語のコミュニケーション活動18選。3段目(相手の情報を聞く)の活動を全文法でそろえた活動集です。
- 歌・チャンツの活用術。リズムをつけたドリルを、お楽しみで終わらせない使い方です。
- 技術そのものはパターンプラクティス、批判のあとに主流になった考え方はコミュニカティブ・アプローチ、授業の型に組み込んだ形はPPPへ。