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文法訳読法(GTM)

ぶんぽうやくどくほう・Grammar-Translation Method (GTM)

文法規則の説明と、英文を日本語に訳す作業を中心にした教授法。読解の正確さは育つが、音声と即興のやり取りが育たない。

文法訳読法(ぶんぽうやくどくほう・GTM=Grammar-Translation Method)とは、文法規則の説明と、英文を日本語に訳す作業を中心にした教授法のことです。出どころと歴史(19世紀ヨーロッパのラテン語教育から明治の英学へ)、メリットとデメリット、批判の中身、「英語で授業」との関係、今の授業で訳読を残す場所(精読15分・訳は確かめの道具・サイトトランスレーション)、小学校・中学校・高校・塾での違いまでまとめました。

公開 2026-09-12・更新 2026-10-19

ひとことで言うと

文法訳読法は、文法規則の説明と、英文を日本語に訳す作業を中心にした教授法です。読みは「ぶんぽうやくどくほう」、英語では Grammar-Translation Method、略して GTM と書きます。教師が文法を説明し、生徒が1文ずつ訳し、教師が訳を直す、という授業の形で、日本の英語教育を長く支えてきました。批判も多いのですが、精読(1文を骨まで読む)の道具としては今も有効で、問題は「授業のすべてが訳読になること」のほうです。

出どころ

18〜19世紀のヨーロッパで、ラテン語・ギリシャ語の教育法を近代語に当てはめたのが始まりとされ、プロイセンの教科書で体系化されました。日本では明治の英学が「訳読」を中心に発展し、大正のパーマー(オーラル・メソッド)以降、何度も批判を受けながら、大学入試の読解と結びついて高校・予備校に定着しました。2009年告示の高校学習指導要領が「授業は英語で行うことを基本とする」と定めたのは、この教授法一辺倒の授業への転換を求めたものです。

メリットとデメリット

メリットデメリット
読む力1文の構造を正確に取る力が育つ。関係詞や分詞が重なった長い文も、骨から読める訳してから意味を取る癖がつき、返り読みになって読む速さが上がらない
授業の運営教科書と黒板があれば、40人でも同じ手順で進められる。準備が少なく、先生の英語力にも左右されにくい授業の大半が先生の説明と生徒の訳になり、生徒が英語を聞く・言う時間がほとんど残らない
理解の確かめ生徒が分かったかどうかを、日本語の訳ですぐに確かめられる「訳せた」と「読めた」を取り違えやすい。訳文の日本語を整える時間が、読む時間を食う
身につく力文法の体系的な知識と、入試の和訳・下線部の説明問題に向く力聞く・話す力と、その場でやり取りする力は育たない

まとめると、精読の確かめとしては効率のよい道具で、授業の型としては生徒が英語を使う時間を奪う方法です。この2つを分けて考えるのが、今の授業での使い方(下の節)の前提です。

批判の中身

文法訳読法への批判は、19世紀の終わりから、ほぼ同じ3点に集まっています。

  1. 音声が育たない。1880年代のヨーロッパの「改革運動」は、話しことばと発音から教えるべきだと訳読を批判し、訳さずに教えるダイレクト・メソッドを生みました。日本では大正期にパーマーがオーラル・メソッドで同じ点を突いています。
  2. 英語に触れる量と使う量が少ない。説明も訳も日本語で進むので、1時間に生徒が聞く英語は本文の数文、言う英語は指名された1文だけ、ということが起きます。
  3. 理論の裏付けが無い。教授法の概説書として広く読まれているリチャーズとロジャーズの本は、言語学や心理学、教育の理論から根拠を示した文献がないまま、広く使われ続けてきた方法だと書いています。

一方で反論もあります。構造を正確に取る力は訳で確かめると育ちやすく、これが無いと長い英文を読む段階で止まる、日本語と比べることで文法の違いに気づける、という主張です。訳を学習の道具として見直す議論もあり、クックの『Translation in Language Teaching』(2010年)がよく引かれます。批判されているのは訳そのものより「授業のすべてが訳読になること」で、訳を精読の確かめに限って残す今の使い方は、批判と反論の両方を受けた形です。

授業での実際の使い方

訳読を「授業の型」ではなく「精読の道具」として使う形です。1回15分に限ります。

手順やること時間
骨を取る1文の主語と動詞に印。修飾(前置詞句・関係詞節)をかっこでくくる5分
訳で確かめるかっこの外から日本語に置き換える。訳は「読めたか」を確かめる手段で、訳文を作ることが目的ではない5分
英語に戻す訳を見て英文を言う(サイトトランスレーション)。ここで訳読が音声とつながる5分

順番は「読んでから、確かめの訳」で、「訳してから読む」ではありません。長文の全文を訳す時間は作らず、構造の難しい3文だけをこの型で扱い、残りはスラッシュリーディングと速読で読ませます。文法の説明は日本語でしてかまいません。「英語で授業」は、説明の言語より、生徒が英語を使う時間を増やすことを求めています。

よくある誤解

  • 訳読は悪、ではありません。構造を正確に取る力は訳読で育ち、これが無いと高校の読解で止まります。
  • 「英語で授業」=訳の禁止、でもありません。訳は確かめの道具として残してよく、禁止されているのは教師の説明が授業の大半を占めることです。
  • 直読直解と訳読は二者択一ではありません。精読は訳で確かめ、速読は訳さずに読む、と場面で分けます。

校種別の違い

校種特徴
小学校訳読はしない。意味は絵と場面で取る
中学校本文の難しい文だけ、骨を取って確かめの訳。全文和訳をノートに書かせない
高校訳読が一番残っている校種。精読15分の型に限り、残りの時間を音読・要約・速読に回す
塾入試の和訳問題があるので訳の練習は要る。ただし訳を「作文」として仕上げる練習と、読解の確かめは分ける

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執筆: 英語教材ラボ編集部

首都圏の公立中学校で英語を10年教えた元教員が、実際の教室で使っていた教材を原型に制作・検証しています。詳しくは教材のつくり方と運営者情報へ。

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