長文が読めない生徒に、講師が全文を訳して聞かせる。生徒はうなずいて帰り、次の週に別の長文で同じところで止まる。個別指導の長文で、いちばん多い光景です。訳して聞かせることが悪いのではなく、それだけでは生徒が自分で読む回数が増えないのが問題です。この記事は、塾講師が個別指導で長文を教えるときの考え方を、中学生と高校生に分けずに1本にまとめたものです。使う紙はどちらも無料の公開教材です。
「訳して聞かせる」が効かない理由
長文が読めない生徒は、単語が足りないのではなく、止まった場所を自分で言えないだけです。訳して聞かせると、生徒は止まった場所を通り過ぎてしまいます。どこで止まったかが残らないので、次の長文でも同じ場所で止まります。
講師がやることは、訳すことではなく、止まった場所を紙に残させることです。残れば、戻し先が決まります。
1回の授業で「1本・時間つき・止まった場所」
- 1回の授業で読む長文は1本。語数を決めます(中1なら80語、中3なら150語、高校生なら200語が目安)
- 時間を計ります。講師がストップウォッチを持ち、生徒は読み終わった時間を紙に書きます
- 読み終わったら、止まった場所(分からなかった語・読み返した文)に線を引かせます
この3点をやるだけで、生徒の答案に「タイム」と「線」が残ります。次の週、同じ生徒の紙を並べると、タイムが縮んでいるか、線の場所が変わっているかが見えます。それが長文の伸びです。
中学生: 速読ラダーと精読ラダー
中学生には、目的の違う2本のラダーがあります。
- 速読ラダーは、タイムを測って読む5分読解です。Level 1から10まで語数が少しずつ増え、同じレベルにシートが3枚あるので、同じレベルを別の英文で3回読めます。「時間内に読み切る」を経験させる紙です
- 精読ラダーは、1文を骨まで読む15分ワークです。長い主語、関係代名詞、接続詞のような、文の構造で止まる生徒に渡します
使い分けは、止まった場所で決めます。単語で止まるなら速読ラダーを続けて語数に慣れさせ、文の途中で読み返しているなら精読ラダーで構造を1文ずつ確かめます。中2・中3も同じ2本があり(速読ラダー中3・精読ラダー中3)、入試前にはリーディング・ラダー(初見読解の10分小テスト・Level 1〜20)に進みます。
高校生: 初見読解の3版
高校生には初見読解があります。同じ英文が基礎・標準・発展の3版になっていて、語数と設問の作りが違います。基礎版は本文中の語で答えられる設問が多く、発展版は言いかえと推論が入ります。
最初は基礎版で時間内に読み切らせ、正答率が7割を超えたら標準版へ。発展版は、定期考査で8割を超えている生徒だけに渡します。同じ英文なので、基礎版で読んだ話を標準版で読み直す使い方もできます。2回目は内容を知っているぶん設問に集中できるので、「設問の解き方」を教えるのに向いています。
設問の解き方を紙で教える
長文の設問は、読む前に見せます。設問を先に読むと、本文のどこを探せばいいかが決まり、全文を同じ速さで読まなくてよくなります。解くときは、本文の根拠に線を引いてから答えを書かせます。線が引けない答えは、当てずっぽうです。
設問の英文と本文の英文は、同じことを別の語で言っています(言いかえ)。この言いかえに印をつけさせると、生徒は「本文と設問を往復する」動きを覚えます。
止まった場所の3種類と戻し先
| 止まった場所 | 答案の見え方 | 戻し先 |
|---|---|---|
| 単語 | 線が語の上に散らばる | 範囲を決めた単語テスト(無料・登録不要)で、その長文の語だけを覚えさせる |
| 文の構造 | 長い1文の途中で読み返す。関係代名詞・接続詞のあたり | 中学生は精読ラダー、高校生は文法18ユニットの該当ユニットの見取り図 |
| 指示語・つなぎ | it や this、however の前後で意味がずれる | 前の文に矢印を引かせて、何を指すか言わせる |
宿題の出し方
宿題は「同じ長文をもう一度」がいちばん効きます。2回目は内容を知っているので、タイムが縮みます。縮んだタイムを紙に書かせると、生徒は自分の伸びを数字で見ます。音読を1回足すと、さらに縮みます。
塾・教室ライセンスのある教室なら、読解ラダーの採点票と保護者報告票(講習テキストのページ)で、段の上がり方を家庭に返せます。「長文が読めるようになった」は保護者に伝わりにくい伸びですが、段とタイムなら伝わります。