ひとことで言うと
語彙アプローチ(レキシカル・アプローチ)は、言語は「文法の規則に単語を当てはめたもの」ではなく「定型表現やコロケーションのかたまり(チャンク)の集まり」だと考え、チャンクを大量に覚えて使わせることを中心にした教授法です。提唱者のルイスの言い方では「言語は文法つきの語彙ではなく、語彙化された文法」です。単語テストを「単語→日本語」から「チャンク→英語」に変えるだけで、この教授法の中心が授業に入ります。
出どころ
イギリスの英語教育者マイケル・ルイスが1993年の著書で提唱しました。コーパス(大量の実際の英語のデータ)の研究で、母語話者の英語の多くが決まった語の組み合わせでできていることが分かり、単語1語と文法規則を別々に教える指導への疑問から生まれました。チャンクは4種類に分けられます。単語と多語の単語(by the way)、コロケーション(take a picture, heavy rain)、定型表現(I'm sorry to hear that.)、文の型(That's not as ... as you think.)。文法を教えないのではなく、チャンクを蓄えた上で、その中の規則に気づかせる順序を取ります。
授業での実際の使い方
教科書の単元を語彙アプローチで扱う手順です。
| 手順 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 抽出 | 本文から、動詞+名詞・前置詞つきの句・文の頭の定型を10個抜き出す | 教材研究の5分 |
| 提示 | 単語ではなくチャンクの単位で、意味と一緒に音で示す | 導入の中で |
| 記録 | チャンク帳(ノートの見開き)にチャンクと例文を書かせる。単語帳は作らない | 毎単元 |
| テスト | 単語テストを「日本語→チャンク(英語)」にする | 毎週10問 |
| 気づき | 蓄えたチャンクの中から規則を見つけさせる(played, visited, watched → 過去形の ed) | 単元の後半 |
チャンクの選び方は、その単元の言語活動で「言わせたい文」から逆算します。自己紹介の単元なら I'm interested in ... / I'm good at ... / My favorite ... is ... の3つで、文法(動名詞・前置詞)は後から気づかせます。
よくある誤解
- 文法を教えない教授法、ではありません。順序が「規則→単語」ではなく「チャンク→規則」になるだけです。
- チャンク=熟語の暗記、でもありません。文の型(I think that ...)と会話の定型(Sorry?)も含み、使う場面とセットで覚えます。
- 万能ではありません。チャンクの数が増えるほど、規則で整理する時間が要ります。中学校では文法の単元と組み合わせるのが現実的です。
校種別の違い
| 校種 | 特徴 |
|---|---|
| 小学校 | 実はこの教授法に一番近い。I like ... / Can you ...? を定型として、規則を教えずに使っている |
| 中学校 | 単語テストをチャンクにする。本文から10チャンクを抜き出す教材研究を単元ごとに |
| 高校 | 論理・表現の定型(In my opinion, ... / One reason is that ...)をチャンクとして蓄える |
| 塾 | 単語帳の暗記が単語1語になりやすい。教科書のチャンクを確認テストにすると定期テストに直結する |
この用語が出てくる教材と記事
- 語彙指導の技術。読める単語を覚えられる単語にする流れで、チャンクで覚える段階を扱っています。
- 英単語テストメーカー。「日本語→チャンク」のテストも作れる無料の道具です。
- 中学英語のコミュニケーション活動18選。活動で言わせたい文から、チャンクを逆算するときの活動集です。
- 単位そのものはチャンク、テストの作り方は単語テスト、蓄えたチャンクの一覧は既習表現、同じ時期の教授法はタスク(TBLT)、系譜は英語教授法の一覧へ。