ひとことで言うと
オーラル・メソッドは、イギリスの言語学者パーマーが1922年に来日し、日本の学校の大人数の教室向けに整えた、口頭練習を先に置く教授法です。オーラル・アプローチは、アメリカの言語学者フリーズが1940〜50年代に構造言語学をもとに体系化した、文型の練習を中心にした教授法で、オーディオリンガル・メソッドの直接の元になりました。名前が似ていて混同されますが、提唱者も時代も考え方も別で、教員採用試験ではこの区別がよく問われます。
出どころ
パーマーは文部省の招きで来日し、1923年に英語教授研究所(現在の語学教育研究所)を設立して、日本の中等学校の英語教育を改革しようとしました。ダイレクト・メソッドの考え方を、訳読中心だった日本の教室で実行できる手順にしたのがオーラル・メソッドで、5つの言語習慣(聞いて観察する・口でまねる・つなげて言う・意味と結びつける・類推で文を作る)を順に身につけさせます。フリーズはミシガン大学で、構造言語学と行動主義心理学を土台に、文型(センテンス・パターン)の練習を中心にしたオーラル・アプローチを提唱し、1956年に来日して日本の英語教育界にも広まりました。日本ではこの2つが合流して、「導入は口頭で、練習は文型で」という中学校の授業の型になりました。
授業での実際の使い方
2つの教授法は、今の授業の中では別々の場面に残っています。
| オーラル・メソッド(パーマー) | オーラル・アプローチ(フリーズ) | |
|---|---|---|
| 時代・国 | 1920〜30年代・日本(イギリス人) | 1940〜50年代・アメリカ |
| 土台 | ダイレクト・メソッドの実用化 | 構造言語学・行動主義(習慣形成) |
| 中心 | 聞く→まねる→つなげる→意味→類推の5段 | 文型の置き換え・変形のドリル |
| 今の授業に残る形 | オーラルイントロダクション(先に聞かせて言わせる導入) | パターンプラクティス(練習の5分) |
| 教員採用試験での聞かれ方 | 「パーマー・1922年来日・英語教授研究所」 | 「フリーズ・オーディオリンガルの元・文型練習」 |
授業での使い方は、新出文法の導入をオーラル・メソッドの順(先生の英語を聞く→まねて言う→つなげて言う→意味を確かめる→自分の文を作る)で10分、練習をオーラル・アプローチのドリル(置き換え→変形→応答)で5分、と並べる形です。この2つのあとに、コミュニカティブ・アプローチの言語活動を置くと、今の標準的な1時間になります。
よくある誤解
- 同じものの言い換え、ではありません。パーマーとフリーズ、1920年代と1950年代、5つの習慣と文型練習、と別物です。
- 古いから使えない、でもありません。オーラルイントロダクションとパターンプラクティスとして、日本の中学校の授業に一番残っている教授法です。
- オーラル・メソッドは「話す練習だけ」ではありません。読む・書くは口頭の後に置くという順序の話で、扱わないわけではありません。
校種別の違い
| 校種 | 特徴 |
|---|---|
| 小学校 | 聞く→まねる→つなげるの順が、音声で慣れ親しむ活動そのもの。文型練習はチャンツの形で |
| 中学校 | 導入の10分がオーラル・メソッド、練習の5分がオーラル・アプローチ。一番使っている校種 |
| 高校 | 導入は本文の内容についての口頭のやり取りに。文型練習は論理・表現の定型で |
| 塾 | 個別指導では口頭の導入が省かれやすい。1文でも先に聞かせて言わせてから紙に入る |
この用語が出てくる教材と記事
- 中学英語の文法導入ネタ20選。先に聞かせて言わせる導入を、全文法でそろえた導入集です。
- 中学英語の文法定着ドリル28本。文型の練習を場面つきにしたドリルです。
- 中学英語の授業の進め方。導入10分・練習5分・活動20分の並びを50分にした本編です。
- 導入の技術はオーラルイントロダクション、練習の技術はパターンプラクティス、フリーズの後に体系化された教授法はオーディオリンガル・メソッド(ALM)、元になった考え方はダイレクト・メソッドへ。