ひとことで言うと
CLL(コミュニティ・ランゲージ・ラーニング)は、カウンセリングの考え方を語学に持ち込んだ教授法です。学習者が輪になって座り、言いたいことを母語で言うと、教師(カウンセラー役)が目標言語に直して耳元で伝え、学習者がそれを声に出して録音する。録音を聞き直して、そこから文法や語彙を学びます。「教科書の文」ではなく「自分が言いたかった文」から学ぶのが中心で、読みは「しーえるえる」です。
出どころ
アメリカの心理学者で神父のチャールズ・カランが、1972年と1976年の著書で提唱しました。カウンセリング(相談を受ける側が、相談者の言葉を受け止めて言い換える技法)を教師と学習者の関係に当てはめ、学習者は「クライアント」、教師は「カウンセラー」として、不安を受け止めながら言語を渡します。学習者は5つの段階(全面的に頼る→少し自分で言える→自分で言えるが確認が要る→ほぼ自立→教師が細部を直すだけ)を経て自立していく、という設計です。TPR・サイレント・ウェイ・サジェストペディアと同じ、1970年代の人間中心の教授法のひとつです。
授業での実際の使い方
輪と録音の形は40人の教室では難しいので、「言いたいことから始める」部分を取り出して使います。
| 取り出す部分 | やること | 例 |
|---|---|---|
| 生徒の言葉を英語にして返す | 生徒が日本語で言ったことを、先生が英語にして返し、生徒に言わせる | 生徒「昨日サッカーした」→先生 You played soccer yesterday. Say it. →生徒が言う |
| 言いたいことのリスト | 単元の最初に「この単元で言えるようになりたいこと」を日本語で3つ書かせる | 単元の終わりに、その3つを英語で言えたかを振り返る |
| 録音して聞き直す | ペアのやり取りを端末で録音し、自分の英語を聞いて1か所直す | 1人1台端末で。直したい1文だけを先生に聞く |
| 段階を意識する | 全面的に頼る段階の生徒に、自立を急がせない | 中1の4月は、先生が英語にして返すだけで十分 |
授業の中では、ペア活動の前に「言いたいことがあれば日本語で言って。英語にして返すから」と伝えておく形が一番使いやすいです。生徒の本当の情報から出た文は、教科書の例文より定着します。
よくある誤解
- 母語で言わせるのは甘やかし、ではありません。言いたいことが先にあって、それを英語にする順序が、意味のある産出の条件です。
- 教師が全部訳してあげる教授法、でもありません。5つの段階で頼る量を減らしていく設計で、最後は教師が細部を直すだけになります。
- 丸ごと使う必要はありません。「生徒の言葉を英語にして返す」だけで、CLLの一番大きな部分は教室に入ります。
校種別の違い
| 校種 | 特徴 |
|---|---|
| 小学校 | 「言いたいことを日本語で言って、先生が英語にする」がそのまま使える。ALTが英語にして返す形も |
| 中学校 | ペア活動の前に言いたいことを聞く。1人1台端末で録音して聞き直す |
| 高校 | 論理・表現で「自分の意見」を先に日本語でメモさせ、英語にする。細部を直す段階 |
| 塾 | 1対1はCLLの輪に一番近い。生徒の言葉を英語にして返し、言わせて、書かせる |
この用語が出てくる教材と記事
- 中学英語のコミュニケーション活動18選。生徒の本当の情報でやり取りする活動集で、言いたいことから始める形です。
- 文法の説明はわかるのに、話す・書くとなると使えない生徒が多いです。自分の言いたいことから産出に入る方向の相談です。
- 即興で話す力の育て方。言いたいことを英語にする1分の即興の育て方です。
- 活動の組み方はペアワーク・グループワーク、先生が英語にして返す技術はリキャスト、不安の少ない教室は授業のユニバーサルデザイン、同じ時期の教授法はサイレント・ウェイ・サジェストペディア、系譜は英語教授法の一覧へ。