ひとことで言うと
サイレント・ウェイは、教師ができるだけ話さず、色つきの棒(ロッド)と色分けした発音のチャートを使って、学習者に自分で規則と発音を発見させる教授法です。先生が黙ることで、生徒が自分で試し、間違え、直す時間が生まれる、という考え方が中心にあります。1960〜70年代の人間中心の教授法のひとつで、丸ごと使う教室は少ないのですが、「待つ」「言い直させる」「発音を色で見せる」の3つは今の授業でそのまま使えます。
出どころ
エジプト生まれの教育者カレブ・ガテーニョが1963年に提唱し、1972年の著書で広まりました。もともと算数教育でキュイズネール棒(ロッド)を使っていた経験から、語学でも「教えることは学ぶことに従う」(教師の説明ではなく学習者の発見が先)という原則を立てました。道具は3つで、長さと色の違うロッド(文の構造や場面を作る)、音を色で示すサウンド・カラー・チャート、つづりと音の対応を色で示すフィデル・チャートです。TPR・サジェストペディア・CLLと同じ時期に、機械的な反復(オーディオリンガル)と不安の多い教室への反省から生まれました。
授業での実際の使い方
丸ごとではなく、3つの部分を取り出して使います。
| 取り出す部分 | やること | 例 |
|---|---|---|
| 待つ | 生徒が言い終わる前に先生が答えを言わない。3秒黙る | 発問のあと3秒、誤りのあとも3秒。先生が黙ると隣の生徒が助ける |
| 言い直させる | 誤りを先生が直さず、身振りで「もう一度」と示す | 指で語の数を示して、抜けた語に気づかせる(He go → 指3本で He goes to) |
| 発音を色で見せる | 母音の違いを色で区別して黒板に貼る | ship の i と sheep の ee を別の色で。発音記号の入口に |
教室で使いやすいのはロッドです。ロッドを人や物に見立てて場面を作り(赤が Ken、青が Yuki、青を赤の前に置いて Yuki is in front of Ken.)、先生は置くだけで生徒に言わせます。前置詞・比較・受け身の導入に向いています。
よくある誤解
- 先生が黙っていれば生徒が学ぶ、わけではありません。黙るのは「生徒が試す時間を作るため」で、何をどう試すかの設計(ロッド・チャート・身振り)が先にあります。
- 説明を一切しない教授法ではありません。ガテーニョは、必要なときの最小限の説明までは否定していません。
- 授業を丸ごとサイレント・ウェイでやる必要はありません。今の授業には「待つ」「言い直させる」「色で見せる」を持ち込めば十分です。
校種別の違い
| 校種 | 特徴 |
|---|---|
| 小学校 | 「待つ」が一番効く校種。担任が答えを言わずに3秒待つと、子どもどうしで助け合う |
| 中学校 | ロッドで前置詞と語順の導入。発音の色分けは発音記号の前に |
| 高校 | 誤りを身振りで示して自己訂正させる。書いた文の語数を指で示すだけで直る誤りが多い |
| 塾 | 個別指導は先生が話しすぎる。生徒が解いている間は黙る、答えを言う前に3秒待つ |
この用語が出てくる教材と記事
- 発音指導の技術。個々の音より先に強勢とリズムを直す優先順位で、色で見せる発音指導の入口です。
- 文法の説明はわかるのに、話す・書くとなると使えない生徒が多いです。説明を減らして生徒に試させる方向の相談です。
- 板書とノート指導の技術。ロッドの代わりにマグネットで場面を作る板書の型です。
- 音を書き表す記号は発音記号、生徒に発見させる問いは発問、誤りの返し方はリキャスト、同じ時期の教授法はTPR・サジェストペディア・CLL、系譜は英語教授法の一覧へ。