ねらい
音読をしているとき、自分の声は、まわりの人に聞こえている声とは少し違って聞こえています。話している声は、耳からだけでなく、頭の骨を通しても伝わってくるからです。録音して聞き比べるは、自分の音読を1人1台の端末で録音し、お手本の音声と聞き比べて、直す所を1つ決めて録り直す活動です。
外から自分の声を聞くと、読んでいるときには気づかなかったずれが聞こえます。コンマで切ったつもりが続いていた、強く読んだつもりの語が弱かった、最後の文を急いでいた、といったずれです。お手本と1文ずつ交互に聞けば、どこがどう違うかを、本文の語を指して言えます。直す所を1つにしぼるのは、録り直したときに、そこが本当に変わったかを自分の耳で確かめられるようにするためです。
GIGAスクール構想で配られた端末があれば、クラスの全員が同じ時間に、自分の音読を録って聞けます。先生が1人ずつ聞いて回るだけでは届かない数の音読を、一人ひとりが聞き直せます。
聞き合って1つ直すがペアの耳で直す所を見つける活動なら、こちらは録音を使って、自分の耳で見つける活動です。観点の名前(区切り・強さ・速さ)は、聞き合って1つ直すの観点カードと同じにしてあるので、2つを続けて使えます。お手本の音声と比べる点は強く読む語に印をつけると同じですが、比べるのは予想した印ではなく、自分の声そのものです。
手順
- 本文を音読で練習し、ふつうに読めるようになってから置きます。録る範囲は2〜3文(30秒以内)にしぼります。
- 1回目を録音します(1分)。慣れるまでは文字を見ながらの音読で、慣れたら何も見ない暗唱で録ります。
- 自分の録音とお手本の音声を、1文ずつ交互に聞き比べます(3分)。3つの観点(区切り・強さ・速さ)でお手本と違う所を探し、直す所を1つだけ決めて、本文に印をつけます。
- 印の所を練習してから、録り直します(3分)。録るのは1回ずつで、録ったら必ず聞いてから次を録ります。録り直しは2回までです。
- ペアで、録り直す前と後の2本を聞いてもらいます(2分)。聞き手は、印の所が変わって聞こえたかを伝えます。聞かせたくない生徒は、そのあいだに自分でもう一度聞き比べます。
- いちばんよい1本を選んで提出し、直した所を振り返りに1行で書きます(1分)。終わらなければ、録り直しと提出は宿題にしてかまいません(授業で一度やり方を経験させてから)。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 録る前に | Record two or three sentences. Hold the tablet close to your mouth. |
| 聞き比べるとき | Listen to the model, then to yourself. One sentence at a time. |
| 直す所を決めるとき | Choose only one thing to fix. 直すのは1つだけ |
| 提出するとき | Choose your best recording and send it to me. |
見本
- The next morning, she gave me this notebook. “Write three lines every night,” she said.
- I have written in it every night since then. Small things become special when we write them down.
見本の本文には音声がないので、先生が読んだものをお手本にした場合の例です。まず、自己チェックの3つの観点です。
| 観点 | 聞く所 | この2行での例 |
|---|---|---|
| 区切り | 意味のかたまりで切れているか。間をとる所でとれているか | The next morning, / she gave me this notebook.・10行目の Small things の前の間 |
| 強さ | 伝えたい語が強く聞こえるか | three lines・every night・special |
| 速さ | お手本と同じくらいの速さか。急いでいる所はないか | 10行目の最後の文 |
振り返りの例です(このサイトで作った例)。
| 振り返りの例 | 観点 | 録り直しで直すこと |
|---|---|---|
| The next morning のあとで切らずに、she gave まで続けて読んでいた | 区切り | コンマで短く切る |
| she said まで、おばあさんの声のまま読んでいた | 区切り | she said の前で切って、ハルトの声にもどす |
| three lines の three が弱かった。お手本は three が強い | 強さ | three を強く、少し長く |
| 最後の文を急いで読んでいた。お手本はもっとゆっくり読んでいる | 速さ | 最後の文だけ、少しゆっくり読む |
振り返りで最初に出やすいのは、「全体的にへた」「なんとなく違う」のような書き方です。これでは、録り直しで何を変えればよいかが決まりません。観点の名前と本文の語を入れて書く、と決めます(「区切り: The next morning のあと」)。語を指して書けば、録り直したときに、その所だけを聞いて確かめられます。
9行目の she said は、おばあさんの言葉からハルトの語りにもどる所で、声を切りかえたかどうかが録音ではっきり聞こえます。切りかえの練習は語りとせりふの読み分けへ。10行目の written‿in‿it のように3語がつながる所も、自分の録音では written / in / it と切れていることがあり、録音で聞くと見つけやすい所です。つながりを先に練習しておくなら音のつながりに印をつけるへ。
変化をつける
- やさしくする: 文字を見ながらの音読で録ります。観点は区切りだけにし、コンマとピリオドで切れているかだけを聞きます。中1の最初は、1文だけで十分です。
- むずかしくする: 何も見ない暗唱で録ります。頭文字だけ本文で練習したあとに録ると、暗唱の仕上がりを自分で確かめる段になります。録った暗唱を教科書と照らし合わせ、抜けた語にも印をつけます。
- 高校では: 時間を計ったスピーチを録ります。本文の内容を自分の言葉で1分にまとめて話し、録音の長さと3つの観点の両方を聞きます。急いで1分に収めると間がなくなるので、時間と間のどちらを優先したかも振り返りに書かせます。
つまずきと手当て
- 教室がうるさく、ほかの人の声が入る: 全員が同時に録ると、聞き比べにならないほど声が混ざります。廊下や窓ぎわに分かれて録るか、列ごとに順番に録って、同時に録る人数を減らします。端末を口に近づけるだけでも、まわりの声は入りにくくなります。
- 録音をほかの人に聞かれたくない: 録音は、本人と先生だけが聞くものだと最初に約束します。本人の同意なしに、ほかの生徒に聞かせたり、全体で流したり、共有したりしません。ペアで聞き合う段も、本人がよいと言ったときだけです。提出先も、ほかの生徒から見えない所にします。
- 時間がかかる: 何度も録り直して、聞き比べないまま時間が過ぎることがあります。録るのは1回ずつ、録ったら必ず聞いてから次を録る、録り直しは2回まで、と決めます。
評価につなげる
提出された1本と振り返りの1行は、生徒が自分の音読を自分で評価した記録になります。単元の最初と最後に同じ形で録らせると、本人が自分の変化を聞いて確かめられます。録音を成績に使うなら、3つの観点のどれを見るかを先に示しておきます。考え方は自己評価と相互評価へ。
出どころ
自分の声を録音してお手本と聞き比べる練習は、テープレコーダーを使った LL 教室(ランゲージ・ラボラトリー)のころから、発音と音読の練習で使われてきました。1人1台の端末が配られてからは、教室の中で全員が同時に録って聞けるようになりました。ICT を使った暗唱は、田尻悟郎『英語教科書本文活用術!』(教育出版、2014)の第1章でも、暗記のまとまりの1つとして扱われています。この活動の、直す所を1つにしぼって録り直す回し方と、自己チェックの3つの観点、見本の振り返りの例は、このサイトで作ったものです。