ねらい
対話文を覚えるとき、生徒はたいてい自分の役のせりふだけを、順番に覚えようとします。順番で覚えたせりふは、1つ忘れると、そこから先が出てきません。かくれたせりふは、片方の話し手のせりふを付せんで隠し、相手のせりふを聞いて、隠したせりふを言う活動です。手がかりは、相手が今言ったせりふです。
会話のせりふは、相手のせりふに答える形で出てきます。Were you studying for the test? と聞かれたら、答えは No. で始まり、I was watching ... と同じ過去進行形で続きます。You have practice after school, right? と念を押されたら、Right. で受けます。相手のせりふの形と語に耳を向けると、自分のせりふは「次の番号の文」ではなく「この問いへの答え」として出てきます。覚えたせりふを、会話の中で使える形にしていく練習です。
消える黒板が文字の手がかりを少しずつ減らすのに対して、こちらは文字の手がかりを、相手の声に置きかえます。
手順
- 対話文の意味をつかみ、役ごとに読めるようになってから置きます。
- ペアで役を決めます。Aは自分の役のせりふに付せんを貼って隠します。Bは何も隠さず、相手の役を読みながら、Aのせりふを教科書で確かめる係です。
- Bが相手の役のせりふを読み、Aは隠したせりふを言います。詰まったら、付せんを少しめくって最初の語だけを見てよいことにします。言えなかったせりふには、Bが鉛筆で小さく印をつけます。
- 役を入れかえて、もう一方の話し手のせりふを隠します。
- 最後は2人とも教科書を閉じて、会話を通して言います。その前に、印のついたせりふだけ、相手のせりふとセットで1回ずつ言い直しておきます。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 隠すとき | Cover your lines with sticky notes. |
| 始めるとき | Listen to your partner. Your partner's line is your hint. |
| 詰まったとき | What did your partner ask? Answer that question. |
| 最後に | Close your textbooks. Talk from the beginning to the end. |
見本
- Ms. Green:Good morning, Riku. You look sleepy.
- Riku:Good morning, Ms. Green. I went to bed at two last night.
- Ms. Green:At two? Were you studying for the test?
- Riku:No. I was watching a soccer game on TV. Japan played Brazil.
- Ms. Green:Oh, I watched it, too! What a game!
- Riku:But Japan lost. I was so sad.
- Ms. Green:Me, too. But the last goal was beautiful.
- Riku:Yes! Number 10 was amazing. I want to play like him someday.
- Ms. Green:Then don't sleep in class today. You have practice after school, right?
- Riku:Right. I'll try!
リクのせりふを隠したとき、グリーン先生のせりふの何が手がかりになるかの例です。
| 聞くせりふ(グリーン先生) | 言うせりふ(リク) | 手がかり |
|---|---|---|
| 1 Good morning, Riku. You look sleepy. | 2 Good morning, Ms. Green. I went to bed at two last night. | あいさつを返し、sleepy のわけを言う |
| 3 At two? Were you studying for the test? | 4 No. I was watching a soccer game on TV. Japan played Brazil. | Were you 〜ing? に、No. と I was 〜ing で答える |
| 5 Oh, I watched it, too! What a game! | 6 But Japan lost. I was so sad. | 先生は試合をほめている。But で向きを変える |
| 7 Me, too. But the last goal was beautiful. | 8 Yes! Number 10 was amazing. I want to play like him someday. | ゴールをほめたので、決めた選手の話へ |
| 9 Then don't sleep in class today. You have practice after school, right? | 10 Right. I'll try! | right? を Right. で受ける |
反対に、グリーン先生のせりふを隠すと、ずっとむずかしくなります。リクのせりふは答えなので、問いの形が手がかりになりますが、グリーン先生のせりふは、リクの言ったことへの反応だからです。
| 聞くせりふ(リク) | 言うせりふ(グリーン先生) | 手がかり |
|---|---|---|
| 2 ... I went to bed at two last night. | 3 At two? Were you studying for the test? | two をそのまま聞き返す |
| 4 ... Japan played Brazil. | 5 Oh, I watched it, too! What a game! | 自分も見た、と言う |
| 6 But Japan lost. I was so sad. | 7 Me, too. But the last goal was beautiful. | 悲しかったに Me, too. と返す |
| 8 ... I want to play like him someday. | 9 Then don't sleep in class today. ... | Then(それなら)で、リクの夢を今日の授業につなぐ |
いちばん出てこないのは、9行目の Then don't sleep in class today. です。8行目の夢の話から、急に授業の話になるように聞こえるからです。「どうしてグリーン先生は、ここで Then と言うの?」と聞くと、10番のようになりたいなら、授業中に寝ていてはだめ、放課後には練習もある、という先生の言いたいことが見えてきます。せりふのつながりのわけが分かると、そのせりふは出てくるようになります。
2つ以上の文でできたせりふでは、あとの文が落ちやすくなります。4行目の Japan played Brazil. や、6行目の I was so sad. です。前の文で相手の問いにはもう答えているので、あとの文には、相手のせりふの手がかりがありません。「前の文のあとに、何を足した?」と聞き、あとの文は、答えに足した説明や気持ちだと気づかせます。
変化をつける
- やさしくする: 付せんに、隠したせりふの最初の語だけを書いておきます(Good・No・But・Yes・Right)。中1の前半は、2往復(4行)だけで行います。
- むずかしくする: Bが本文の順番をばらして、相手の役のせりふを言います(7行目→3行目→9行目)。Aは、そのせりふへの返事だけを言います。前のせりふの流れに頼れないので、相手のせりふの中身だけを手がかりにすることになります。
- 物語で: せりふの多い場面で行います。Three Lemon Candies の5〜9行目なら、ソウタのせりふを隠し、ミカのせりふと地の文を相手が読みます。
- 高校では: 意見を言い合う対話文で、相手の主張を受ける部分(I see your point, but ... のような受けの表現)だけを隠します。相手の主張の何を受けているかが分からないと、受けの表現は言えません。
つまずきと手当て
- 相手のせりふを聞かずに、自分のせりふを順番で言う: 順番をばらす形(むずかしくする)に早めに進みます。順番で覚えている生徒ほど、ばらすと止まるので、相手のせりふを聞く必要があることに本人が気づきます。
- 確かめる係が、本文を見ていない: 確かめる係は、相手の役のせりふを読むだけでなく、隠したせりふを指で追いながら聞く、と決めます。言えなかった語に印をつけるのも、確かめる係の仕事です。
- 付せんをめくりすぎる: めくってよいのは最初の語まで、と決めます。最初の語を見て言えたせりふには△、見ずに言えたせりふには○をつけておくと、次に練習するせりふが分かります。
出どころ
対話の片方を手がかりに、もう片方のせりふを言わせる練習は、対話文を覚える手立てとして、英語の授業で古くから使われてきました。会話を丸ごと覚えて言えるようになるまで練習する形は、オーディオリンガル・メソッドの授業でよく使われた手立てでもあります。このレシピの、付せんで片方のせりふを隠す手順と、見本の手がかりの表は、このサイトで作ったものです。