ねらい
向かい合って会話をすると、相手の顔や口の動き、うなずきが、言葉を助けてくれます。相手がせりふを言い終えたかどうかも、顔を見れば分かります。背中合わせ暗唱は、ペアで背中合わせに座り、対話文を見ないで言い合う活動です。顔が見えないので、手がかりは相手の声だけになります。
声だけで会話をつなぐには、2つのことが要ります。1つは、相手に届く声ではっきり言うこと。口の中でもごもご言ったせりふは、背中ごしには届きません。もう1つは、相手のせりふを最後まで聞くことです。相手が言い終えたかどうかは、文の終わりの上げ下げ(イントネーション)と、せりふの中身で聞き分けるしかありません。電話で話すときに近い状態を、教室の中で作ります。
かくれたせりふが、相手は本文を読み、自分だけが隠したせりふを言う活動なのに対して、こちらは2人とも何も見ずに、声だけで会話を最後までつなぐ活動です。
手順
- 対話文を、両方の役で、見ないで言えるくらいまで練習してから置きます(かくれたせりふや消える黒板のあと)。
- ペアで役を決め、背中合わせに座ります。隣どうしのペアなら、窓側の人は窓のほう、廊下側の人は廊下のほうへいすを向けると、すぐに背中合わせになります。教科書は閉じて、手元に置きます。
- 対話文を最初から最後まで、見ないで言い合います(2分)。詰まったときは、合図の決まりを使います。3秒止まったら、相手が、詰まったせりふの最初の語だけをささやきます。2人とも思い出せなければ、教科書を開いて確かめ、その行に印をつけます。
- 役を交代して、もう一度言い合います(2分)。
- 向かい合って、もう一度言います(2分)。そのあと1分、背中合わせのときと何が違ったかを、ペアで話します。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 座るとき | Sit back to back. Close your textbooks. |
| 始めるとき | Say the dialogue from the beginning. Use your normal voice. |
| 詰まったとき | Wait three seconds. Then whisper only the first word. |
| 向かい合うとき | Now face each other and say it again. What's different? |
見本
- Ms. Green:Good morning, Riku. You look sleepy.
- Riku:Good morning, Ms. Green. I went to bed at two last night.
- Ms. Green:At two? Were you studying for the test?
- Riku:No. I was watching a soccer game on TV. Japan played Brazil.
- Ms. Green:Oh, I watched it, too! What a game!
- Riku:But Japan lost. I was so sad.
- Ms. Green:Me, too. But the last goal was beautiful.
- Riku:Yes! Number 10 was amazing. I want to play like him someday.
- Ms. Green:Then don't sleep in class today. You have practice after school, right?
- Riku:Right. I'll try!
役は、Aがグリーン先生(1・3・5・7・9行目)、Bがリク(2・4・6・8・10行目)です。この対話文は、どの行も2つ以上の文でできています。背中合わせでは、相手が1文目を言い終えた所で、まだ続きがあるのに入ってしまうことがあります。詰まりやすい所の例です。
| 所 | 起きること | 手当て |
|---|---|---|
| 6行目のあとの Me, too.(7行目) | リクの But Japan lost. のあとで、グリーン先生役が入ってしまう | Me, too. は I was so sad. への返事。sad まで聞いてから入る |
| 9行目 Then don't sleep ... right? | グリーン先生のせりふでいちばん長い(12語)。today. で止まると、リク役が Right. で入ってしまう | 2文目の right? を上がり調子ではっきり言う。それがリクへの合図 |
いちばん起きやすいのは、7行目の Me, too. の入り方です。6行目は But Japan lost. と I was so sad. の2文で、1文目のあとに短い間があります。顔が見えれば、リクがまだ続けようとしているのが分かりますが、背中合わせでは分かりません。グリーン先生役が But Japan lost. のすぐあとに Me, too. と入ると、「わたしも負けた」と言っているように聞こえます。グリーン先生は5行目でも I watched it, too! と too を使っていますが、7行目の too は、I was so sad. を受けた「わたしも悲しかった」です。sad まで聞いてから入る、と決めると、相手のせりふを最後まで聞くようになります。
9行目は、グリーン先生役が today. のあとで息をついて止まりやすい所です。そこでリク役が Right. I'll try! と入ると、会話はいちおうつながりますが、You have practice after school, right? が消えます。リクの Right. は、この right? への返事です。グリーン先生役には right? を上がり調子ではっきり言わせ、リク役には、その上がる調子を合図に入らせます。背中合わせでは、イントネーションが、そのまま話し手の交代の合図になります。
向かい合ったあとの1分で「入る所が分からなかった」行が出たら、その行だけ、もう一度背中合わせで言わせます。
変化をつける
- やさしくする: キーワードのカードを持ってよいことにします。自分の役のせりふから1行に1語ずつ選んで、カードに書きます(グリーン先生役なら sleepy・test・watched・too・practice)。カードは自分だけが見ます。
- むずかしくする: 1か所だけ、本文の語を自分の言葉に変えて言います。リク役が2行目を I went to bed at three last night. に変えたら、グリーン先生役は At three? と聞き返さなければなりません。どこを変えるかは言わないので、相手のせりふを最後まで聞いていないと返せません。
- 相づちを足して: 背中合わせのまま相づちを足して読むと、Really? や Oh, no. の気持ちは、声の調子でしか伝わりません。
- スピーチで: 1人が言い、もう1人は本文を持って聞きます。聞き手は、言えなかった所に印をつけ、3秒止まったら最初の語だけをささやきます。顔の見えない相手に向けて言うので、教室の後ろの席まで届ける声の練習になります。
- 高校では: 本文を言い終えたら、背中合わせのまま、本文の話題について意見を2往復言い合います。Monday Morning なら Is it OK to stay up late for a big game? について、I think it's OK because ... と I don't think so. のように言い合います。
つまずきと手当て
- 教室がうるさくなる: 背中合わせだと声が相手に届きにくく、ペアごとに声が大きくなっていきます。いすの背をできるだけ近づけ、せりふはふつうの話し声で、と決めます。ささやき声も禁止です。背中ごしには届かず、聞き返しばかりになります。ささやいてよいのは、合図の最初の1語だけです。
- 止まってしまう: 合図の決まり(3秒待って、最初の1語だけ)を、始める前に全体で確かめます。詰まった人が自分から First word, please. と言ってもよいことにします。教科書で確かめた行には印をつけ、向かい合って言う前に、その行だけ相手と練習します。
評価につなげる
対話文の暗唱テストの前に、仕上がりを確かめる段として使えます。合図を使った回数と、印のついた行を記録させると、テストの日までにどの行を練習すればよいかが本人に見えます。記録の形は、1分暗唱チャレンジの記録シートが使えます。
出どころ
相手の顔を見ずに、声だけでやり取りする練習は、話すことと聞くことの指導で使われてきました。電話の会話を練習するときに、ペアを背中合わせに座らせて、相手の顔が見えないようにする方法もあります。この活動の、詰まったときの合図の決まりと、背中合わせのあとに向かい合って言い直す回し方、見本の詰まりやすい所の表は、このサイトで作ったものです。