ねらい
リテリングでは、手がかりを少しずつ外していく途中に、絵や図だけを見て内容を言う段があります。この段にいきなり進むと、多くの生徒は、自分の言葉で言う前に、本文の英語そのものが出てこなくて止まります。「絵を見て言う」は、その手前で、絵を手がかりに本文どおりの英語を言う活動です。本文を見て読める段と、絵だけで自分の言葉で語る段のあいだに、もう1段を置きます。
絵には文字がないので、英語を思い出す引き金は、絵が表している場面と意味だけです。ベッドと2時を指す時計を見て I went to bed at two last night. と言うには、場面を頭に浮かべてから英語を組み立てることになります。頭文字だけ本文のような文字の手がかりとは違い、意味から英語を引き出す練習です。動作を手がかりにするジェスチャー音読と、ねらいは近いところにあります。
手順
- 絵を用意します。教科書の挿絵が使えるならそれを使い、足りない所は黒板に簡単な絵をかきます(1枚20秒でかける程度)。1枚の絵に、本文の2〜3行をのせます。
- 本文を閉じさせ、先生が絵を1枚ずつ指して、全員でその絵の行を言います。最初の1回は、詰まったら本文を開いてよいことにします。
- ペアで、1人が絵を指し、もう1人がその絵の行を言います。対話文なら、2人の話し手のせりふを続けて言います。最初は本文の順に指し、交代します。
- 1人で、1枚の絵の行を全部言います。ペアの相手は教科書を開いて聞き、言えなかった所を伝えます。
- 言えなかった行だけを教科書で音読し、もう一度、絵を見て言います。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 全員で言うとき | Look at this picture. What does Riku say? |
| ペアにするとき | Point to a picture. Your partner says the lines. |
| 1人で言うとき | Say all the lines for this picture. |
| 詰まったとき | Look at the picture again. Where is he? What time is it? |
絵は上手でなくてかまいません。棒人間と、時計やボールのような記号で足ります。大事なのは「この絵で、この行」と、クラスで決まっていることです。
見本
- Ms. Green:Good morning, Riku. You look sleepy.
- Riku:Good morning, Ms. Green. I went to bed at two last night.
- Ms. Green:At two? Were you studying for the test?
- Riku:No. I was watching a soccer game on TV. Japan played Brazil.
- Ms. Green:Oh, I watched it, too! What a game!
- Riku:But Japan lost. I was so sad.
- Ms. Green:Me, too. But the last goal was beautiful.
- Riku:Yes! Number 10 was amazing. I want to play like him someday.
- Ms. Green:Then don't sleep in class today. You have practice after school, right?
- Riku:Right. I'll try!
この対話文なら、黒板に次の4つの絵をかきます。
| 絵 | 黒板にかくもの | 言う行 |
|---|---|---|
| 1 | ベッドと、2時を指す時計 | 1〜3行目 |
| 2 | テレビの中のサッカー(Japan vs Brazil) | 4〜5行目 |
| 3 | がっかりした顔と、ゴール | 6〜8行目 |
| 4 | サッカーボールと、after school の文字 | 9〜10行目 |
絵を指してすぐに出てくるのは、絵にかいてある物が出てくる行です。1枚目の I went to bed at two last night. や、2枚目の Japan played Brazil. は、絵を見ればすぐに言えます。
詰まりやすいのは、絵にかいていないことを言う行です。1枚目の Were you studying for the test? は、ベッドと時計からは出てきません。3枚目の Me, too. や、4枚目の Right. I'll try! のような短い受け答えも、絵からは思い出しにくい所です。こうした行には、絵のそばにキーワードを1つだけ書き添えます(1枚目なら test?)。
対話文では、話し手が入れかわる所でも止まります。1枚目は、グリーン先生、リク、グリーン先生と話し手が入れかわります。At two? は、前のリクの文を受けた聞き返しなので、会話の流れが頭に入っていないと出てきません。だれのせりふかを取り違えるペアが多いときは、役を決めて、絵を指したら2人でその絵の会話を言う形にします。
変化をつける
- やさしくする: 絵のそばに、各行の最初の語を書き添えます(1枚目なら Good・Good・At)。中1の前半は、ここから始めます。
- むずかしくする: 絵の順番をばらして指します(3→1→4→2)。前の行が引き金にならないので、その絵の意味だけで言うことになります。
- 自分の言葉で: 本文どおりでなく、自分の言葉で絵の場面を言わせます(Riku went to bed very late.)。ここからが、リテリングの段階表でいう「絵を見て」の段です。
- 物語で: 場面が変わる所で絵を分けます。雨の校門の場面と、次の朝の教室の場面のように、1枚の絵に1つの場面です。
- 高校では: 説明文の図や写真を使います。グラフや手順の図を指して、その部分を説明している文を言わせます。
つまずきと手当て
- 絵があいまいで、何の場面か分からない: キーワードを1つだけ書き添えます。絵をかき直すより早く、手がかりとしてもはっきりします。
- 順番だけ覚えていて、絵を見ていない: 絵をばらして指します。指す順番を変えても言えれば、絵の意味から言えています。
- 絵をかくのに時間がかかる: 挿絵が使える所は挿絵を使い、足りない所だけをかきます。絵を紙にかいて黒板に貼る形にすれば、次の時間もくり返し使えます。
評価につなげる
絵を見て本文を言う形は、そのまま音読テストや暗唱テストの課題にできます。パフォーマンステストで使うなら、本文どおりに言えたかを見るのか、自分の言葉で内容を言えたかを見るのかを、先に決めて生徒に示しておきます。同じ絵でも、見る観点が変わると別のテストになります。
出どころ
絵を手がかりに言わせる方法は、絵カードの使い方として、英語の授業で広く使われてきました。語を絵で示す絵カードを、本文の行を思い出す手がかりに広げたのが、この活動です。イラストや写真を手がかりにした暗唱は、田尻悟郎『英語教科書本文活用術!』(教育出版、2014)の第1章でも、暗記のまとまりの中で扱われています。この活動の3つの段(全員で→ペアで→1人で1枚の絵の行を全部)と、見本の黒板の4つの絵は、このサイトで作ったものです。