ねらい
本文を見て読める段階と、何も見ないで言える段階のあいだには、大きな段差があります。音読を何回くり返しても、文字が目の前にあるかぎり、頭は文字を音に変えるだけで済んでしまいます。頭文字だけ本文は、各語の最初の1文字だけを残し、あとは自分の記憶で埋めさせる手がかりです。
最初の1文字があると、語を思い出す引き金になります。それでいて、語の残りと文の並びは自分で組み立てるしかありません。Read and Look up が「1文を覚えて顔を上げて言う」練習なら、こちらは「手がかりを1文字まで減らして言う」練習です。暗唱やリテリングの前の段として置けます。思い出そうとすること自体が記憶を強くする、という考え方(想起練習)にも合っています。
手順
- 本文を音読で十分に練習したあとに置きます(目安は、音声に重ねて読めるくらい)。
- 頭文字だけにした本文を配ります。下線の数は、残りの文字の数です(Small なら S____)。
- 1人で2分、小さな声で頭文字の本文を読みます。詰まったら教科書を見てよいことにして、見たらその文の頭に印をつけます。
- ペアで3分。1人が頭文字の本文を見て言い、もう1人は教科書を持って聞きます。聞き手は、言えなかった語に丸をつけます。交代します。
- 最後に、印と丸がついた文だけをもう一度音読します。全部をくり返さず、つまずいた文に戻るのが、この活動の効き目です。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 配るとき | Only the first letters. Can you say the whole sentence? |
| 詰まった生徒に | Look at the textbook, then come back. 見たら印をつけておこう |
| ペアの聞き手に | Listen and circle the words your partner missed. |
| 最後に | Read only the sentences with marks. 印の文だけ、もう一度 |
見本
- D_ y__ h___ s________ s______? F__ m_, i_ i_ t___ n_______.
- M_ g__________ g___ i_ t_ m_ l___ s_____.
- S__ l____ a____ i_ a s____ t___ b_ t__ s__.
- S__ h__ k___ a d____ f__ f____ y____.
- S__ d_____ w____ a____ b__ t_____. S__ w_____ a____ t__ w______, t__ f______ i_ h__ g_____, a__ t__ d_____ s__ c_____.
元の文は次のとおりです。
- Do you have something special? For me, it is this notebook.
- My grandmother gave it to me last summer.
- She lives alone in a small town by the sea.
- She has kept a diary for fifty years.
- She doesn't write about big things. She writes about the weather, the flowers in her garden, and the dinner she cooked.
頭文字の本文で詰まりやすいのは、意味の軽い語です。4行目の has kept の has や、5行目の the dinner she cooked の she のように、内容を運ぶ語より、文の形を作る語(冠詞・代名詞・助動詞)で止まります。丸がつく語がそこに集まるのは、内容は追えていても、文の形がまだ入っていないしるしです。その文だけを選んで、Read and Look up で1文ずつ言い直すと、文の形が入ります。
プリントは手書きでも作れます。本文をノートに写しながら、各語の1文字目だけを書き、あとは下線にします。1分暗唱チャレンジの基本文5文で作れば、帯活動にも使えます。
変化をつける
- やさしくする: 内容を運ぶ語(名詞・動詞・形容詞)は全部残し、文の形を作る語だけを頭文字にします。中1の前半や、音読がまだ不安な生徒向けです。
- むずかしくする: 下線も消して、頭文字だけを並べます(D y h s s?)。語の長さの手がかりがなくなるので、文の並びを自分で持っていないと言えません。
- 3日に分ける: 1日目は頭文字と下線、2日目は頭文字だけ、3日目は文の最初の語だけ、と手がかりを減らします。同じ本文で3日かけて回すと、暗唱まで届く生徒が増えます。
- 高校では: 長い本文は、段落の最初の文だけを頭文字にし、残りはキーワードだけを渡します。要約して言う練習(リテリング)への橋になります。
つまずきと手当て
- 頭文字を見て、当てずっぽうで語を言う: 意味のつながらない文が出てきたら、聞き手に「その文、意味が通ってる?」と聞かせます。内容を頭に置いたまま言うことを、最初に確かめておきます。
- 早く終わった生徒が待っている: 下線も消した版(むずかしくする版)を渡します。同じ本文で負荷だけを上げられるのが、この活動の使いやすいところです。
- 作るのに時間がかかる: 本文が長いときは、覚えさせたい3〜5文だけにします。全文を頭文字にする必要はありません。
評価につなげる
音読テストや暗唱テストの前に、自分の位置を知る道具として使えます。頭文字の本文で言えた文の数を自分で数えて記録させると、テストの日までに何を練習すればよいかが本人に見えます。テストそのものを頭文字の本文で行う場合は、見る観点(正確さ・なめらかさ・内容が伝わる読み方)を先に示しておきます。
出どころ
語の最初の文字を手がかりに思い出させる方法は、暗記の手立てとして英語の授業で広く使われてきました。本文の一部をヒントとして残しながら暗唱に近づける活動は、田尻悟郎『英語教科書本文活用術!』(教育出版、2014)でも、暗記のまとまりの中で、頭文字などをヒントにする音読として扱われています。このレシピの下線の決まり(残りの文字の数)と、3日で手がかりを減らす回し方は、このサイトで作ったものです。