ねらい
本文を何度も音読して、内容も言えるようになったのに、ある語だけがいつも抜ける。そうした語の多くは、音がつながったり弱く読まれたりして、聞いたときにも聞こえていない語です。部分ディクテーションは、本文の音声を聞いて、空所になった語句を書き取る活動です。このレシピでは、空所を、聞き落としやすい所(音がつながる所や、弱く読まれる語を含む所)に置きます。
ディクテーションは、聞き取れなかった語が紙の上に残るのがよい所です。覚える工程の途中でこれを行うと、残った語が、そのまま暗唱で落とす語の一覧になります。She has kept a diary の has を聞き落とす生徒は、言うときにも She kept a diary と言いがちです。落とした語を書き取りで見つけ、声に出して入れ直すまでを、1つの活動にします。
手順
- 空所のある本文のプリントを作ります。4〜6行で、1行に1か所、2〜4語の語句を( )にします。
- 1回目は、書かずに聞きます。
- 2回目は、1行ごとに音声を止めて、空所に書きます。つづりに迷ったら、思いつくつづりで書いておき、確かめのときに直します。
- 3回目は通して聞き、抜けを埋めます。教科書で確かめ、落とした語に赤で丸をつけます。
- 赤丸の語句を、音声のつながり方をまねて3回言います。そのあと、プリントを裏返して、空所のあった文を本文を見ずに言います。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 1回目 | Just listen. Don't write yet. |
| 2回目 | Write the missing words. I'll stop after each line. |
| 確かめるとき | Circle the words you missed. 落とした語は何? |
| 声に出すとき | Say the missing part three times, just like the audio. |
見本
- My grandmother gave it to me last summer.
- She lives alone in a small town by the sea.
- She has kept a diary for fifty years.
- She doesn't write about big things. She writes about the weather, the flowers in her garden, and the dinner she cooked.
- One night, she showed me her old diaries. I found my name on many pages.
この5行で、空所を次のように置きます(プリントでは( )の中が空いています)。
| 行 | 空所のある文 | 聞き落としやすいわけ |
|---|---|---|
| 2 | My grandmother (gave it to) me last summer. | gave it to がつながって、1語のように聞こえる |
| 3 | She (lives alone in a) small town by the sea. | lives と alone がつながり、in a も1つの音になる |
| 4 | She (has kept a) diary for fifty years. | has が弱く短く読まれ、kept a もつながる |
| 5 | She (doesn't write about) big things. | doesn't の t がほとんど聞こえない |
| 6 | One night, she (showed me her) old diaries. | her の h が弱くなり、me her がつながる |
書き取りでよく出る答えと、そこから分かることです。
| よく出る書き取り | 本文 | 分かること |
|---|---|---|
| She (lives alone in) small town | lives alone in a | town の前の a を落とす。言うときにも落としやすい |
| She (kept a) diary | has kept a | has を落とす。現在完了が過去形になる |
| She (doesn't write) big things | doesn't write about | about を落とす。write about(〜について書く)のまとまりが入っていない |
いちばん大事なのは、4行目の has です。has を落とすと She kept a diary for fifty years. になり、「50年日記をつけていた(今はもう書いていない)」とも読める文になります。この文の has は、おばあさんが今も日記を書き続けていることを運んでいる語です。落とした語が文の意味を運ぶ語だったと分かると、生徒は has を入れて言い直すようになります。
5行目の about を落とす生徒は、write big things と write about big things の違いに、まだ気づいていません。赤丸の語句を3回言うときは、write about をひとまとまりで言わせます。
空所を選ぶときは、意味を運ぶ語(grandmother・diary・fifty)だけを空けないようにします。意味を運ぶ語は、内容を覚えていれば聞き取れなくても書けてしまい、聞き落とした語が紙に残りません。
変化をつける
- やさしくする: 空所の語の数だけ下線を引いておきます(__ __ __)。中1は1か所1語にして、デジタル教科書の音声の速さを落として使います。
- むずかしくする: 空所を意味のかたまり1つ分(by the sea・for fifty years まで)に広げ、最後は1文まるごとを空所にします。全文を書き取る形に近づいていきます。
- 対話文で: Monday Morning なら、Were you studying(Were you がつながる)、What a game(What a がつながる)、want to play(want to が弱くなる)の3か所が空所に向きます。
- 高校では: 文法の要になる語を含む所を空けます。助動詞と完了形(should have been)や関係詞(the book which I)は、弱く短く読まれるので、書き取ると、読めていたつもりの文法が聞こえていなかったことが分かります。
つまずきと手当て
- 書くのが追いつかない: 1行ごとに音声を止め、空所の最初の文字だけを書いておいて、3回目の通しで残りを書く、と決めます。
- つづりのまちがいで落ち込む: この活動では、語が聞き取れていれば合格です。つづりは確かめのときに直し、点にはしません。
- 答え合わせで終わってしまう: 赤丸の語句を言う段(手順5)を必ず入れます。書き取りで見つけた語は、言うときにも落ちる語なので、声に出して入れ直すまでが、この活動の本体です。
出どころ
聞いた英語を書き取るディクテーションは、語学の練習として古くからある形です。文章の一部だけを空所にして書き取らせる形は、スポット・ディクテーション(spot dictation)とも呼ばれ、聞く力をみるテストの形式としても使われてきました。このレシピの、空所を音がつながる所と弱く読まれる語に置く選び方と、書き取りのあとで声に出して入れ直す段、見本の空所の表は、このサイトで作ったものです。