ねらい
何も見ないで本文を言えるようにするには、手がかりを一度に取り去るのではなく、少しずつ減らしていきます。消える黒板は、黒板に書いた本文を全員で読み、読むたびに2〜3語ずつ消していく活動です。消えた所は、記憶で補いながら読みます。最後は文の最初の語だけ、そして何もない黒板に向かって本文を言います。
一度に全部を隠すと、覚えきれていない生徒はそこで止まります。2〜3語ずつなら、残っている語が手がかりになり、思い出す負荷は少しずつしか上がりません。全員が同じ黒板を見て声をそろえるので、ひとりで覚えるのが苦手な生徒も、クラスの声に乗って言えます。手がかりを与え、できるにつれて外していくスキャフォールディング(足場かけ)の考え方を、黒板1枚で目に見える形にした活動です。
手順
- 本文から4〜6行を選んで板書します。対話文なら、話し手の名前も書きます。音読で十分に練習したあとに置きます。
- 全員で、板書を見ながら1回読みます。
- 先生が2〜3語を消し、消えた所を補いながら、全員でもう一度読みます。これを4〜6回くり返します。消す語は、最初は内容を運ぶ語(名詞・動詞・形容詞)を少し、次に文の形を作る語(冠詞・代名詞・be動詞・to など)です。
- 文の最初の語だけを残して、残りを一度に消します。最初の語を手がかりに全員で言い、最後は黒板を全部消して言います。
- ペアで、黒板も教科書も見ないで言います。対話文なら役を分け、スピーチや物語なら1文ずつ交代します。言えなかった所は、教科書で確かめます。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 始めるとき | Let's read together. After each reading, I'll erase some words. |
| 消したあと | Read it again. Say the missing words, too. 消えた所も声に出して |
| 最初の語だけにしたとき | Only the first words are left. Can you say everything? |
| ペアにするとき | Now in pairs. Don't look at the board or the textbook. |
語を消すときは、どの語を消すかを言わずに、読み終えた直後にさっと消します。「次はこれを消すよ」と予告すると、その語だけを覚えておけば読めてしまいます。
見本
- Ms. Green:Oh, I watched it, too! What a game!
- Riku:But Japan lost. I was so sad.
- Ms. Green:Me, too. But the last goal was beautiful.
- Riku:Yes! Number 10 was amazing. I want to play like him someday.
この4行(35語)を板書して、消していく順番の例です。
| 回 | 消す語 | 残る手がかり |
|---|---|---|
| 1回目 | lost・sad・beautiful | 話の流れ。すごい試合だった→でも負けた→悲しい→でもゴールは、という流れが頭にあれば戻せる |
| 2回目 | watched・game・amazing | 場面と前後の文。同じ試合を見た2人の会話だということと、あとに続く I want to play like him |
| 3回目 | it・a・the | 内容を運ぶ語の多くは残っている。文の形を作る語は、自分で足すしかない |
| 4回目 | 8行目の was・to・him | 10番はすごかった、10番のようにプレーしたい、という文の形を自分で組み立てる |
4回目のあとは、各文の最初の語(Oh・What・But・I・Me・But・Yes・Number・I)だけを残して、残りを一度に消します。最後は黒板を全部消して言います。
最初に内容を運ぶ語を少しだけ消すのは、本文の意味を頭に置いたまま読ませるためです。いきなり文の形を作る語から消すと、意味を考えずに、音の並びとして覚えようとします。1回目と2回目では、beautiful を great と言ったり、amazing を cool と言ったりする生徒が出ます。意味はつかめているしるしですが、この活動は本文を言えるようにするのがねらいなので、先生がもとの語を一度言って、もう一度読ませます。
声が小さくなりやすいのは、3回目からです。I watched it, too! の it が消えると、I watched, too! と言う生徒が出ます。What a game! の a が落ちると、What game? と、どの試合かを聞く文に近くなります。4回目に to が消えると、I want play like him. になりがちです。どれも、英作文でも落としやすい語です。ここで止まる文は、内容は覚えていても、文の形がまだ入っていない文です。その文だけを取り出して、頭文字だけ本文のように1文字の手がかりを残して言い直すと、形が入ります。
変化をつける
- やさしくする: 語を消すとき、頭文字だけを残します(lost なら l)。最初の文字が手がかりになるので、中1の前半でも最後までついてこられます。
- むずかしくする: 生徒に消す語を選ばせます。1人ずつ前に出て、黒板の語を1語ずつ消します。「どの語を消せば、みんなが困るか」を考えて選ぶので、消す側は文の形を作る語に目を向けます。
- スライドで: 2〜3語ずつ( )にしたスライドを5〜6枚作っておき、1回読むごとに次へ送ります。板書の時間がいらず、次の時間の復習にもそのまま使えます。
- 次の時間に: 同じ行を、日本語→英語クイックレスポンスで順番をばらして言います。黒板の順番に頼らずに1文ずつ言えるかが分かります。
- 高校では: 長い本文は、段落の中の大事な文(主張の文や、まとめの文)だけを板書して消します。全文を板書する必要はありません。
つまずきと手当て
- 消すのが速すぎて、声が止まる: 声がそろわなくなったら、同じ黒板でもう一度読みます。次の語を消すのは、全員の声がそろってからです。
- ついてこられない生徒がいる: その回だけ、消した語の頭文字を書き戻します。声を出し続けられることが先で、全部を言えるようになるのはそのあとでかまいません。
- 板書に時間がかかる: 6行を超える本文は、スライドにするか、覚えさせたい行だけにします。休み時間のうちに板書しておくのも手です。
評価につなげる
黒板を全部消したあとのペアの段は、暗唱テストの練習にそのまま使えます。言えなかった文に印をつけさせ、言えた文の数を記録させると、テストの日までにどの文を練習すればよいかが本人に見えます。帯活動として続けるなら、1分暗唱チャレンジの記録シートが使えます。
出どころ
本文を少しずつ消して言わせる方法は、英語の授業で広く使われてきた暗唱の手立てで、英語では disappearing text などと呼ばれます。黒板とチョークがあればできるので、準備の少ない手立てでもあります。この活動の消す語の順番(内容を運ぶ語を少し→文の形を作る語→文の最初の語だけ)と、見本の回ごとの表は、このサイトで作ったものです。