ねらい
本文を何度も音読して、見ないで言えるようになっても、書かせてみると a が抜けたり、s がつかなかったりします。声に出しているときには流れてしまう小さな語が、書くと1語ずつ目に見えるからです。日本語から本文を書きもどすは、本文の自然な日本語訳を見て、英語の本文を書きもどし、元の本文と比べる活動です。
比べて見つかった違いは、意味も文法も正しい「別の正しい言い方」と、直すべき「まちがい」の2つに分けます。分けると、本文を正確に覚えているかと、本文の英語を自分の英語で言いかえられる幅の両方が見えます。
口で3秒以内に返す日本語→英語クイックレスポンスが、速さと文の組み立てを見る活動なら、こちらは書いて、a や s のような小さな語まで正確さを見る活動です。
手順
- 本文を音読で十分に練習し、口で言えるようになってから置きます(クイックレスポンスのあとや、次の時間の最初)。
- 3〜5文の日本語訳を配ります(板書でもよい)。訳は、英語を一語ずつ置きかえた直訳ではなく、自然な日本語にします。
- 1人で5分、教科書を閉じて、日本語を見ながら英語の本文を書きます。どうしても出てこない所は、1回だけ教科書を見てよいことにし、見た所には下線を引いておきます。
- 教科書を開いて元の本文と比べ(2分)、違う所に印をつけます。
- ペアで3分、印の所を「別の正しい言い方(○)」と「まちがい(×)」に分けます。迷う所には?をつけます。
- 全体で?の所を確かめ(2分)、×のついた文だけを、本文を見ずにもう一度書きます(1分)。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 始めるとき | Read the Japanese. Write the English sentences from the textbook. |
| 詰まったとき | You can look at the textbook only once. Underline the part you checked. |
| 比べるとき | Compare your sentences with the textbook. Mark the differences. |
| 分けるとき | Another correct way, or a mistake? 別の正しい言い方? まちがい? |
見本
- Sixteen students walk. Walking is the most popular way.
- Ten students come by bike. Most of them live more than two kilometers away from school.
- Four students take a bus, and two students come by car.
この3行に合わせて配る日本語の例です。
| 行 | 配る日本語 |
|---|---|
| 2 | 16人が歩いて通っています。歩きが、いちばん人気のある通い方です。 |
| 3 | 自転車通学は10人です。そのほとんどは、学校から2キロより遠くに住んでいます。 |
| 4 | バスが4人、車が2人です。 |
生徒が書きそうな英文と、判定の例です(このサイトで作った例)。
| 書いた英文 | 本文 | 判定 |
|---|---|---|
| Sixteen students go to school on foot. | Sixteen students walk. | ○ on foot(歩いて)を使った別の正しい言い方 |
| Walking is the most popular. | Walking is the most popular way. | ? 文としては正しい。way(通い方)まで求めるかで割れる |
| Walk is the most popular way. | Walking is the most popular way. | × 主語は「歩くこと」なので Walking |
| Ten students come by a bike. | Ten students come by bike. | × by bike には a をつけない |
| Many of them live ... | Most of them live ... | × 文法は正しいが、「ほとんど」が「たくさん」に変わっている |
| Four students come by bus, and two students come by car. | Four students take a bus, ... | ○ come by bus でも同じ意味 |
| Four students take bus. | Four students take a bus. | × take a bus の a が抜けている |
話し合いになるのは、2つ目の Walking is the most popular. です。文としては正しく、意味も通じますが、日本語の「通い方」にあたる way が落ちています。本文を覚える段として way まで求めるか、意味が同じなら○にするかを、始める前に決めておきます。
5つ目の Many of them は、文法のまちがいではありません。けれども「ほとんど」は most で、many にすると、自転車の10人のうち遠くに住む人の数が変わります。文法が正しくても、本文の意味と変わっていれば×、という線引きを、この行で示します。
3行目の by bike と4行目の take a bus は、a がつくかつかないかが逆になる組です。読んでいるときには気にならなかった違いが、書きもどすと答案に出ます。2つを並べて確かめます。○の答案は、本文の1文を別の英語で言いかえる1文パラフレーズ工房の材料にもなります。
変化をつける
- やさしくする: 各文の最初の語を渡します(Sixteen __ / Walking __ / Ten __ / Most __ / Four __)。主語が決まると、残りを組み立てやすくなります。中2の前半は、2〜3文から始めます。
- むずかしくする: 1段落まるごとを書きもどします。How We Come to School なら、引用の多い5〜10行目です。said のあとのコンマと引用符まで、元の本文と比べます。
- 物語で: 過去形と、小さな語の抜けが出やすくなります。Three Lemon Candies の4行目の後半を「ソウタは傘をミカにわたして、雨の中へ走っていきました。」と配ると、He gave her umbrella ... のように the が抜けて「彼女の傘」の意味に変わる答案や、ran を run と書く答案が出ます。
- 高校では: 評論の段落から、つなぎの語(however・therefore・in addition など)を含む長い文を選びます。つなぎの語が抜けたり入れかわったりすると、文と文の関係が変わることが、比べたときに見えます。
- 次の段へ: 本文どおりに書けるようになったら、本文の形そのものを変えて書く会話を語りに、語りを会話にへ進めます。
つまずきと手当て
- 直訳の日本語にしてしまう: 「16人の生徒が歩きます。」のような訳を配ると、日本語を1語ずつ英語に置きかえるだけで書けてしまいます。訳は、教科書の英語を知らない人が読んでも自然な日本語にします。「バスが4人、車が2人です。」のように英語と形が違う日本語ほど、主語と動詞を自分で組み立てることになります。
- あきらめて手が止まる: 1回だけ教科書を見てよい、見たら下線、と決めておきます。開く前に「どの語が出てこないか」を1つ決めさせると、全部を見に行かずに済みます。
- ○と×の線引きでもめる: 「文法が正しく、本文と同じ意味なら○」と始める前に示します。迷った所は?にして、先生が全体で判定します。
出どころ
訳した文をもとの言葉に訳しもどして、元の文と比べる練習は、外国語の学び方として古くからあります。イギリスのロジャー・アスカムが『The Scholemaster』(1570年)にラテン語の学び方として書いた二重翻訳(double translation)がよく知られています。この活動は、そのうちの訳から元の文へもどす所を、先生が作った自然な日本語訳で行う形です。日本語から英語に直す活動は、田尻悟郎『英語教科書本文活用術!』(教育出版、2014)の第1章でも、発展の段階の1つのまとまりとして扱われています。この活動の、自然な日本語訳を使う決まりと、違いを「別の正しい言い方」と「まちがい」に分ける手順、見本の判定の表は、このサイトで作ったものです。