ねらい
対話文は、せりふだけで話が進みます。いつ、どこで、2人がどんな様子なのかは、せりふの中から読み取るしかありません。その対話文を3人称・過去形のお話に書き直すと、せりふに埋まっていた場面と様子を、自分の言葉で書き出すことになります。反対に、物語を台本(せりふとト書き)に書き直すと、地の文で説明されていた動きや気持ちを、せりふと動作に置きかえることになります。
どちらの向きでも、内容は変えず、伝える形だけを変えます。せりふを全部写すことはできないので、何を残して何を落とすかを選ぶことになり、サマリー・ピラミッドのような要約に近い読み方が起きます。中学では、時制の一致のような細かい決まりには立ち入らず、お話として通じればよいことにします。高校では、間接話法の練習として扱えます。語り手を替える視点を変えて語るが「だれが語るか」を変える活動なら、こちらは「どんな形で語るか」を変える活動です。
手順
- 本文の内容をつかんだあとに置きます。書きかえる向き(対話文をお話に、物語を台本に)は、先生が決めます。
- 話し手と大事な情報を表にします(3分)。対話文なら「だれが・何を言ったか」、物語なら「だれが・何をしたか」を、1行に1つずつ日本語で書き出します。この表が、あとでチェック表になります。
- 書きかえます(10分)。お話にするなら said / asked / told を使い、動詞は過去形でそろえます。台本にするなら、せりふの前に話し手の名前を書き、動作は( )のト書きにします。ト書きは日本語でかまいません。
- 決まりを確かめます。表の情報は全部入れる。お話にするときは、英語の引用符を使うのは1回まで。
- ペアで読み比べます(3分)。相手の作品を読みながら、表の情報に印をつけていきます。印のつかない情報があれば、どこに入れられるかを2人で考えます。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 始めるとき | Write this conversation as a story. Use "said" or "asked." |
| 表を作るとき | Who said it? What is important? |
| 書くとき | Use quotation marks only once. 引用符は1回まで |
| 読み比べるとき | Check the list. Is anything missing? 抜けている情報はない? |
見本
- Ms. Green:Good morning, Riku. You look sleepy.
- Riku:Good morning, Ms. Green. I went to bed at two last night.
- Ms. Green:At two? Were you studying for the test?
- Riku:No. I was watching a soccer game on TV. Japan played Brazil.
- Ms. Green:Oh, I watched it, too! What a game!
- Riku:But Japan lost. I was so sad.
- Ms. Green:Me, too. But the last goal was beautiful.
- Riku:Yes! Number 10 was amazing. I want to play like him someday.
- Ms. Green:Then don't sleep in class today. You have practice after school, right?
- Riku:Right. I'll try!
まず、話し手と大事な情報を表にします。
| 話し手 | 大事な情報 |
|---|---|
| グリーン先生 | リクがねむそう(1行目) |
| リク | 夜中の2時に寝た。テレビでサッカーの日本対ブラジル戦を見ていた(2・4行目) |
| リク | 日本が負けて悲しかった(6行目) |
| グリーン先生 | 先生も試合を見ていた(5行目) |
| グリーン先生 | 今日は授業中に寝ないように(9行目) |
この表をもとに、お話にした例です(このサイトで作った例)。
| お話にした文 | 対話文では | 変わったところ |
|---|---|---|
| On Monday morning, Ms. Green saw Riku. He looked sleepy. | 1行目 | あいさつが消え、いつ・だれが を地の文で言う。You look → He looked |
| He went to bed at two because he watched a soccer game on TV. | 2〜4行目 | 3行目の問いと4行目の答えを、because の1文にまとめた |
| Japan played Brazil and lost, so Riku was sad. | 4・6行目 | 離れた2行を so でつないだ。I was so sad → Riku was sad |
| Ms. Green watched the game, too. | 5行目 | I watched it → Ms. Green watched the game |
| She said, "Don't sleep in class today." | 9行目 | 引用符はここで1回だけ。前の行がないと通じない Then は落とした |
書きかえで消えるのは、あいさつ(Good morning)、あいづち(Me, too.)、感嘆(What a game!)です。会話を生き生きさせていた言葉ほど、お話では要らなくなります。反対に、On Monday morning のような場面の言葉と、Riku のような人物の名前が増えます。月曜の朝という場面は、行間の推理で読み取った答えがそのまま使えます。8行目のあこがれと放課後の練習は、この例では落としました。
迷いやすいのは最後の2行です。10行目の I'll try! も入れたい生徒には、「引用符の1回を、9行目と10行目のどちらに使う?」と聞きます。どちらを選んでもかまいません。選んだ理由が言えれば、その生徒は会話の終わりの山を読めています。
物語を台本にする向きでは、candy の1〜4行目が、たとえば次のようになります。
- It was raining hard after school. Mika didn't have an umbrella, so she waited at the school gate.
- Then Sota came out. He was in her class, but they didn't talk much.
- He had a big blue umbrella. He looked at the rain, and then he looked at Mika.
- “Here,” he said. He gave her the umbrella and ran into the rain.
- 登場人物: ミカ、ソウタ(同じクラス。あまり話したことはない)
- MIKA: (放課後の校門。傘がなく、雨を見上げている)……
- SOTA: (大きな青い傘を持って出てくる。雨を見て、ミカを見る)
- SOTA: Here.(傘をミカにわたし、雨の中へ走っていく)
台本にすると、地の文の多くがト書きに移ります。手が止まるのは2行目の He was in her class, but they didn't talk much. です。ソウタに We are in the same class. と言わせると、説明のための不自然なせりふになります。2人の関係は、登場人物の紹介に書くか、目を合わせないといった動作で見せます。地の文の説明を、せりふと動作のどちらに置くかを考える所が、台本にする向きの読みどころです。
変化をつける
- やさしくする: 書き出しの文を渡します(On Monday morning, Ms. Green saw Riku.)。表も先生が作っておき、生徒は表を英文にするだけにします。
- むずかしくする: 語数の上限を決めます。見本のお話は46語なので、40語以内なら、もう1つ何かを削ることになり、要約に近づきます。
- 台本にしたら: ペアで読み合わせます。せりふの少ない台本ほど、動作と間で見せる練習になります(ロールプレイとスキット)。
- 高校では: 間接話法で書かせます。She asked him if he had been studying. のように、時制と代名詞をそろえ、引用符を使わずに書きます。新聞の記事の形にして英語の見出しをつけさせると、いちばん大事な情報を1行で決めることになります。
つまずきと手当て
- せりふを引用符で全部写す: せりふの前に She said, をつけ足しただけでは、形は変わっていません。引用符は1回まで、と決めます。どのせりふを引用符に残すかを選ぶこと自体が、いちばん大事なせりふを選ぶ読みになります。
- 大事な情報が抜ける: 手順2の表を、チェック表として使います。書き終えたら、まず自分で表の行に印をつけ、それからペアに渡します。
- 現在形が残る(He looks sleepy. など): お話は過去形でそろえる、と最初に決めます。書き終えたら動詞に下線を引かせ、形を確かめます。
出どころ
文章の形(ジャンル)を変えて書き直す活動は、書く指導で広く使われています。物語の地の文を台本の形にする書き換えは、田尻悟郎『英語教科書本文活用術!』(教育出版、2014)の第1章でも、応用の活動の1つとして挙げられています。このレシピの、大事な情報の表をチェック表に使う手順と、引用符を1回までにする決まり、見本のお話と台本は、このサイトで作ったものです。