ねらい
リテリングは、本文の内容を初めから終わりまで、自分の言葉で語り直す活動です。1分で紹介するは、それとは目的が違います。本文をまだ読んでいない人に1分で紹介して、読んでみたいと思ってもらう活動です。全部を話す必要はありません。かわりに、何を話し、何を話さずにおくかを選ぶことになります。
決まりは2つです。結末は言わないこと。本文の文を2文続けて使わないこと。結末を言わずにおくには、どこが話の山場で、どこからが結末なのかが分かっていなければなりません。本文の文を続けて使えないので、内容を自分の英語で組み立て直すことになります。
紹介は、相手を替えて3回します。同じ紹介をくり返すうちに、言いよどみが減り、言い方がなめらかになっていきます。前の回で聞き手に聞かれた質問が、次の回の紹介を良くする材料にもなります。
手順
- 本文の内容をつかみ、音読や暗唱を重ねたあと、単元の終わりのほうに置きます。
- 1人で4分、メモを作ります。メモは5つの箱(題名と本文の種類/だれが・どんな場面/くわしく話す1つの場面/自分が好きな所とそのわけ/読んでいない人へのさそい)で、キーワードだけを書きます。文は書きません。
- ペアで、1人1分ずつ紹介します。聞き手は、紹介のあとに英語で1つ質問します(30秒)。
- 相手を替えて、2回目と3回目をします。前の回で聞かれた質問への答えを、紹介の中に入れてかまいません。
- 全体で2〜3人が紹介し、「いちばん読みたくなった紹介はどれ? 何が決め手だった?」と聞きます。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 始めるとき | Your partner hasn't read this story. Introduce it in one minute. |
| メモを作るとき | Write only key words. Don't write sentences. |
| 紹介のあとで | Listener, ask one question. |
| 決まりの確かめ | Don't tell the ending! 結末は言わない |
見本
- It was raining hard after school. Mika didn't have an umbrella, so she waited at the school gate.
- Then Sota came out. He was in her class, but they didn't talk much.
- He had a big blue umbrella. He looked at the rain, and then he looked at Mika.
- “Here,” he said. He gave her the umbrella and ran into the rain.
- The next morning, Mika went to Sota's desk. “Thank you for yesterday. Here's your umbrella.”
- Sota smiled, but his voice sounded strange. He had a cold.
- “No problem,” he said. “I like rain.”
- Mika knew that wasn't true. She took a small bag out of her pocket. There were three lemon candies in it.
- “For your throat,” she said. This time, Sota didn't say anything, but his face turned a little red.
5つの箱のメモと、1分の紹介の例です(このサイトで作った例・約80語)。
| 箱 | メモ | 紹介の文 |
|---|---|---|
| 題名と種類 | Three Lemon Candies・story | Do you know the story "Three Lemon Candies"? |
| だれが・どんな場面 | Mika・Sota・same class・not friends | It's about two students, Mika and Sota. They are in the same class, but they don't talk much. |
| くわしく話す場面 | rain・no umbrella・Sota・kind | One day, it was raining hard after school, and Mika didn't have an umbrella. Then Sota did something very kind. |
| 好きな所 | Sota・not many words | I like Sota. He doesn't talk much, but he is very kind. |
| さそい | next day・Mika・? | The next day, Mika noticed something. What did she do? Please read the story. You will smile at the end. |
この紹介には、ソウタが傘を渡したことも、かぜのことも、あめのことも入っていません。結末にあたる8〜9行目を言わずにおくために、Sota did something very kind. と Mika noticed something. の2文で、出来事を「何か」とぼかしています。どこをぼかすかを決めるには、4行目(傘)・6行目(かぜ)・8〜9行目(あめ)のどれが話の山場につながっているかを、読み直すことになります。
紹介で割れやすいのは、題名の扱いです。Three Lemon Candies と言えば、あめが出てくることは分かってしまいます。それでも、だれが、なぜ、3つのあめを渡すのかは分かりません。題名を答えではなく謎として使い、Why three lemon candies? Read and find out. で終える紹介も出てきます。結末を言わずに興味を引く言い方は生徒によって違うので、全体で2〜3人を聞き比べる段が生きます。
文の時の形にも違いが出ます。本文は過去形の物語ですが、紹介の文は本文の外から話す今の文なので、It's about ... や They are in the same class. のように現在形になります。話の中の出来事を言うときは、本文どおり過去形です(it was raining hard)。1つの紹介の中で現在形と過去形が混ざるのは、まちがいではありません。紹介する人の今と、話の中の時が違うからです。
変化をつける
- やさしくする: 紹介の型を渡します(This is a story about __. I like __ because __. Please read it.)。中1や、1分がまだ長いクラスは、30秒から始めます。
- むずかしくする: 聞き手を決めます。小学生に紹介する、日本に来たばかりの ALT の先生に紹介する、のように相手を決めると、使う語と、くわしく話す場面の選び方が変わります。時間を45秒に縮めても、言うことを選び直す練習になります。
- 説明文で: 結末のかわりに、いちばんの発見を言わずにおきます。How We Come to School なら、32人の通学の方法を調べた報告で、歩く人がいちばん多いことまでを話し、But some students have a problem. What is it? のように、9〜10行目の坂の話を謎にして終えます。
- スピーチで: My Grandmother's Notebook を、ハルトに会ったことのない人に紹介します。おばあさんの古い日記で何を見つけたかを言わずにおくと、聞き手はそれを質問で聞きたくなります。
- 高校では: 紹介を2分にし、評論なら筆者の主張と、それに対する自分の意見を入れます。紹介のあとで、いちばん読みたくなった本文に手を挙げる形にすると、本の紹介を競う書評ゲーム(ビブリオバトル)に近くなります。
つまずきと手当て
- 結末まで全部話してしまう: メモの5つの箱の横に「言わないこと」の欄を作り、言わずにおく場面を先に書かせます。書いておくと、話しながら止まれます。
- 本文の文を読み上げるようになる: メモはキーワードだけ、と決めます。メモに文を書くと、話す時間がメモを読む時間になります。本文の文を2文続けそうになったら、2文目を自分の言葉に言いかえる、と決まりを思い出させます。
- 1分がもたない、または長すぎる: 1回目は時間を気にせず話させ、2回目と3回目でタイマーを使います。くり返すうちに、1分に入る量が自分で分かってきます。
評価につなげる
紹介を、話すこと[発表]のパフォーマンステストの課題にできます。見る観点は、内容(結末を言わずに、興味を引く中身を選べているか)と、言い方(自分の言葉で1分話し続けられるか)の2つに絞ると、生徒にも伝わります。本文の内容を順に語り直す力を見るなら、教科書リテリングテストの形が合います。
出どころ
本を読んでいない人に紹介する活動は、図書館や学校のブックトークのように、本と読み手をつなぐ方法として広く使われてきました。同じ話を相手を替えてくり返す形は、話す流暢さの練習として知られる 4/3/2(Keith Maurice が1983年に紹介した、同じ話を4分・3分・2分と時間を縮めて3人に話す練習)の考え方を借りています。このレシピの、結末を言わない決まりと本文の文を2文続けて使わない決まり、5つの箱のメモ、見本の紹介は、このサイトで作ったものです。