ねらい
教室の前にいすを1つ置きます。そこに座った人は、本文の登場人物です。クラスはその人物に質問し、座った人は役のまま答えます。演劇を使った教育で、ホットシート(hot seating)と呼ばれてきた方法です。
質問する側は、本文を読み返して質問を作ります。答える側は、本文の事実と食い違わないように、その人物の気持ちや、本文に書かれていない暮らしまで想像して答えます。ここで2種類の質問を区別させるのが、この活動の芯です。本文で答えが決まる質問(How long have you kept a diary?)と、本文の外を想像して答える質問(What did you cook last night?)。前者は発問でいう事実発問にあたり、後者は推論発問や評価発問に近い問いです。想像で答える質問にも「本文と食い違わない」という縛りがあるので、答える側は役のまま即興で話しながら(即興のやり取り)、本文に何度も戻ることになります。
手順
- 本文の内容をつかんだあとに置きます。だれをいすに座らせるかを決めます。
- ペアで質問を2つ準備します(3分)。1つは本文で答えられる質問、もう1つは本文の外を想像する質問です。どちらかに Why を使う、と決めておきます。
- 最初は先生が座ります(4分)。役のまま答えるところを見せると、生徒は何をすればよいかが分かります。
- 生徒が交代で座ります(6分)。1人で座るのがむずかしければ、1つの役を3人で受け持ち、相談してから答えてもよいことにします。
- 最後に、本文で答えが決まった質問と、想像で答えた質問を1つずつ板書して、ふり返ります(2分)。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 先生が座るとき | I am Haruto's grandmother. Please ask me questions. |
| 質問を準備するとき | Make two questions: one from the text, and one from your imagination. |
| 答えが本文と合わないとき | Is that in the text? Let's check. |
| 座った人が困ったとき | Take your time. You can talk with your team. |
見本
- Do you have something special? For me, it is this notebook.
- My grandmother gave it to me last summer.
- She lives alone in a small town by the sea.
- She has kept a diary for fifty years.
- She doesn't write about big things. She writes about the weather, the flowers in her garden, and the dinner she cooked.
- One night, she showed me her old diaries. I found my name on many pages.
- “Haruto called today.” “Haruto is ten today.”
- I was surprised. I didn't know she wrote about me.
- The next morning, she gave me this notebook. “Write three lines every night,” she said.
- I have written in it every night since then. Small things become special when we write them down.
ハルトのおばあさんを座らせたときの、質問と答えの例です(英文はこのサイトで作った例)。
| 質問 | 答えの例 | 答えの手がかり |
|---|---|---|
| How long have you kept a diary? | For fifty years. | 本文で決まる(4行目) |
| Why do you write about the weather? | Because every day is a little different. | 想像で答える(5行目。大きなことは書かない人) |
| Do you miss Haruto? | Yes, I do. I'm happy when he calls me. | 想像で答える(3行目のひとり暮らしと、7行目) |
| What did you cook last night? | Fish and rice. I wrote about it in my diary. | 想像で答える(5行目の the dinner she cooked) |
1つ目の質問は、答えが1つに決まります。座った人が答えにつまっても、聞き手が4行目を指せば済みます。2つ目から4つ目は、答えが人によって変わります。それでも、何を答えてもよいわけではありません。たとえば Do you live with your family? に Yes, I live with my son. と答えると、3行目の She lives alone と食い違います。聞き手が Is that in the text? と返し、座った人が3行目を読み直して答え直す。このやりとりが起きると、想像で答える質問も、本文を読む活動になります。
Why の質問は、答えるのに時間がかかります。Why did you give Haruto a notebook? と聞かれたら、9行目の Write three lines every night と、10行目のハルトの言葉から、おばあさんの気持ちを組み立てることになります。I want him to enjoy small things, too. は答えの1つですが、ここは答えが割れてよい所です。ホットシートで出た答えは、視点を変えて語るでその人物の目から書くときの材料にもなります。
変化をつける
- やさしくする: 先生が座る時間を長めにとり、質問は、はい・いいえで答えられるものから始めます(Do you live alone? / Do you like flowers?)。答える側は、Yes, I do. のあとに1文足せば十分です。
- むずかしくする: 2人の登場人物を同時に座らせます。ハルトとおばあさんに同じ質問(What do you write in your notebook?)をすると、2人の答えの違いから、それぞれの立場が見えてきます。
- 物語で: candy ならソウタを座らせ、Why did you say "I like rain"? と聞かせます。本文では言わなかった本心を、役のまま言うことになります。
- 高校では: 評論の筆者を座らせます。質問する側は筆者の主張に反対の立場から聞き、筆者の役は本文の根拠を使って答えます。
つまずきと手当て
- 事実の質問ばかりになる: 本文を見れば答えられる質問は作りやすいので、放っておくとそちらに偏ります。準備の段階で、ペアの2つの質問のどちらかに Why が入っているかを確かめます。質問づくりそのものに慣れていなければ、先に本文クイズ職人で、本文から問題を作る練習をしておきます。
- 本文と食い違う答えが出る: 聞き手が Is that in the text? と返してよいことにしておきます。座った人は本文に戻り、答え直します。食い違いに気づけた聞き手は、本文を読めています。
- はずかしがって座らない: 1つの役を3人で受け持ち、3人で前に座って、相談してから答える形にします(いすは3つ並べてかまいません)。1人で黙りこむ心配が減ります。答えるのは代表の1人でよいことにします。
出どころ
ホットシート(hot seating)は、演劇を使った教育の方法の1つです。登場人物を演じる人にまわりが質問し、役のまま答えてもらいます。人物の気持ちや行動の理由を考えさせる方法として、イギリスの国語(英語)の授業などで広く使われてきました。このレシピの、本文で答えが決まる質問と想像で答える質問を1つずつ準備させる手順と、見本の質問と答えは、このサイトで作ったものです。