ねらい
物語は、全部を書いてはいません。登場人物が何を考えたか、場面と場面のあいだに何をしたかの多くは、読み手にまかされています。1文足しは、本文の行と行のあいだに、書かれていない1文を書き足す活動です。足すのは、登場人物の心の声か、本文で省かれた行動のどちらかです。
足した1文は、前の行とも次の行ともつながっていなければなりません。どこに足すかを決めるには前後の行を読み比べ、何を足すかを決めるには、その場面の気持ちや様子を読み取る必要があります。行間の推理が、書いていないことを証拠の文から読む活動なら、1文足しは、読んだことを書く側に回る活動です。書くのは1文だけなので、10分の中で、書く・読む・当てる・理由を話す、まで回せます。
手順
- 本文の内容をつかんだあとに置きます。最初に決まりを3つ示します。本文と食い違わない。1文だけ。なぜそこに合うかを、前後の行を使って言える。
- 1人で4分。足す場所(何行目と何行目のあいだか)を決めて、1文を書きます。
- ペアで、足した文を入れて本文を音読します。どこに足したかは言いません(2分)。
- 聞き手は、どこに足したかを当てます。当たっても外れても、足した人がなぜそこに合うかを話します(2分)。
- 全体で2〜3人の文を紹介します。同じ場所に別の文を足した例を並べると、読みの違いが見えてきます。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 決まりを示すとき | Add only one sentence. Don't change the story. 1文だけ、話は変えない |
| 書くとき | What did Sota think here? What did he do? |
| 音読のあとで | Where is the new sentence? Can you find it? |
| 理由を聞くとき | Why does it fit here? Which lines tell you? |
見本
- It was raining hard after school. Mika didn't have an umbrella, so she waited at the school gate.
- Then Sota came out. He was in her class, but they didn't talk much.
- He had a big blue umbrella. He looked at the rain, and then he looked at Mika.
- “Here,” he said. He gave her the umbrella and ran into the rain.
- The next morning, Mika went to Sota's desk. “Thank you for yesterday. Here's your umbrella.”
- Sota smiled, but his voice sounded strange. He had a cold.
- “No problem,” he said. “I like rain.”
- Mika knew that wasn't true. She took a small bag out of her pocket. There were three lemon candies in it.
- “For your throat,” she said. This time, Sota didn't say anything, but his face turned a little red.
この物語に足す1文の例です(英文はこのサイトで作った例)。
| 足す場所 | 足す1文 | 合う理由 |
|---|---|---|
| 3行目と4行目のあいだ | Sota thought, "I can run home." | 雨とミカを見比べた(3行目)あと、傘をわたして走り出す(4行目)。そう決めた心の声が入る |
| 6行目と7行目のあいだ | He didn't want Mika to worry. | かぜで声が変なのに(6行目)、「雨が好き」と言う(7行目)。その理由になる |
| 8行目と9行目のあいだ | Mika remembered his back in the rain. | うそに気づいて、あめを出す(8行目)。前の日、雨の中を走っていった姿(4行目)とつながる |
| 9行目のあと | Sota put one candy in his mouth. | 何も言えなかったソウタ(9行目)が、言葉のかわりに動きで受け取る |
当てやすいのは、9行目のあとに足した文です。話の終わりに1文増えると、本文を覚えている人にはすぐに分かります。当てにくいのは、6行目と7行目のあいだの文です。He didn't want Mika to worry. は、7行目のあとに置いても話が通ります。7行目の前なら、うそをつく前の気持ち。あとなら、うそをついた理由の説明です。どちらも認めたうえで、「前と後ろで、読んだ感じはどう変わる?」と聞くと、1文の置き場所で読み方が変わることに目が向きます。
食い違いが出やすいのは、4行目と5行目のあいだです。Sota and Mika walked home together. のような文は、4行目の ran into the rain と合いません。聞き手が、合わない行を指して返します。
足した心の声は、視点を変えて語るでソウタの日記を書くときの材料になります。話の終わりに足した文は、続きを書くの書き出しにも使えます。
変化をつける
- やさしくする: 先生が候補の文を3つ用意し、どこに入るかを選ばせます。書かずに選ぶだけなので、中1でも取り組めます。上の表から3つの文を選び、場所を伏せて配ってもかまいません。
- むずかしくする: 場面の空気を変える1文を足させます。8行目と9行目のあいだに Mika's friends were watching them. を足すと、9行目でソウタの顔が赤くなった理由まで、読み方が変わります。ペアは、その1文で場面がどう変わったかを言います。
- 対話文で: せりふとせりふのあいだに、動作の1文を足します。monday なら、6行目のあとに Riku looked down. を足すと、7行目のグリーン先生の Me, too. が、なぐさめの言葉として読めてきます。
- 高校では: 評論の段落と段落のあいだに、つなぎの1文を足します。前の段落のまとめと次の段落の予告を1文で書けるかどうかで、論の流れが読めているかが見えます。
つまずきと手当て
- 本文と食い違う: 足した文を入れて音読したあと、聞き手に「この文と合わない行はない?」と本文を見て探させます。見つかったら、その行を読み上げてから、文を直させます。
- 長くなる: 1文だけ、と最初に決めておきます。and でいくつもつなぐと、1文でも中身は2つ3つになるので、and は1回まで、とします。
- どこに足せばよいか分からない: 先生が場所を指定します。「3行目と4行目のあいだで、ソウタは何を思った?」と聞き、日本語で答えさせてから、英語の1文にします。
出どころ
本文に書かれていない文を加える活動は、田尻悟郎『英語教科書本文活用術!』(教育出版、2014)の第1章で「発展」の段階の活動として扱われています。このレシピは、行間の推理で読んだことを書く側に回す活動として組み立てました。足した場所をペアが当てる手順と、見本の文は、このサイトで作ったものです。