ねらい
物語の地の文は、ふつう外から見た3人称で書かれています。視点を変えて語るは、その本文を登場人物の1人の目から、I を主語にして語り直す活動です。見本では、雨の日の話をソウタの日記として書きます。
語り手が替わると、本文の英語はそのままでは使えません。He gave her the umbrella. は I gave her my umbrella. になります。もう1つ変わるのが、書けることの範囲です。ソウタは、自分が見たことと自分の気持ちは書けますが、ミカが心の中で何を考えたかは知りません。だれが何を知っているかを決めるには、本文を1文ずつ読み直すことになります。そのうえで、本文に書いていない、その人の心の中の1文を足します。事実は本文のまま、言葉は自分で選ぶ。リテリングに「語り手を替える」という条件を1つ加えた活動です。
手順
- 本文の内容をつかみ、音読を重ねたあとに置きます。筋を口で言えるくらいになっていると、書く手が止まりにくくなります。
- だれの目で語るかを決めます。最初はクラス全員で同じ人物にします。慣れてきたら、生徒に選ばせます。
- その人が知っていることと、知らないことを分けます(3分)。ノートに2列の表を作り、本文の行番号で仕分けます。知らないことは書かない、が決まりです。
- 5〜6文で書きます(7分)。書き出しは本文から借りてかまいません。本文にない心の中の文を、少なくとも1文入れます。1文足しをしたことがあれば、そのとき足した文を使ってもかまいません。
- ペアで読み合います(3分)。聞き手は本文を開いて、本文の事実と食い違うところや、その人が知らないはずのことが書かれていないかを確かめます。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 人物を決めるとき | You are Sota today. Tell the story with "I." ソウタになって、I で語ろう |
| 仕分けるとき | Does Sota know this? Which line tells you? |
| 書くとき | Add one sentence. What was Sota thinking? 心の中の1文を足そう |
| 読み合うとき | Look at the text. Can Sota know this? |
見本
- It was raining hard after school. Mika didn't have an umbrella, so she waited at the school gate.
- Then Sota came out. He was in her class, but they didn't talk much.
- He had a big blue umbrella. He looked at the rain, and then he looked at Mika.
- “Here,” he said. He gave her the umbrella and ran into the rain.
- The next morning, Mika went to Sota's desk. “Thank you for yesterday. Here's your umbrella.”
- Sota smiled, but his voice sounded strange. He had a cold.
- “No problem,” he said. “I like rain.”
- Mika knew that wasn't true. She took a small bag out of her pocket. There were three lemon candies in it.
- “For your throat,” she said. This time, Sota didn't say anything, but his face turned a little red.
書く前の仕分けは、たとえば次のようになります。
| ソウタが知っていること | ソウタが知らないこと |
|---|---|
| ミカが傘を持たずに校門にいた(1行目) | ミカがうそに気づいたこと(8行目) |
| 本当は雨が好きではない(7・8行目) | ミカがいつあめを用意したか |
| ミカが「のどに」とあめをくれた(8・9行目) | 走っていく自分を、ミカがどう思ったか |
この仕分けをもとに、ソウタの目で日記のように書いた例です(このサイトで作った例)。左の列だけを上から読むと、ソウタの日記になります。
| ソウタの日記 | 本文では | 変わったところ |
|---|---|---|
| After school, I saw Mika at the gate. | 1行目 | I saw を足して、ソウタが見たことにした |
| It was raining hard, and she didn't have an umbrella. | 1行目 | 本文の文を借りて、Mika を she にした |
| I wanted to help her, but I was nervous. | なし | 心の中の1文。2行目の「あまり話さない仲」から考えた |
| I gave her my umbrella and ran into the rain. | 4行目 | he → I、the umbrella → my umbrella |
| The next morning, I had a cold, but I said, "I like rain." | 6・7行目 | He had a cold → I had a cold |
| Then Mika gave me three lemon candies for my throat. | 8・9行目 | For your throat の your が my に変わる |
| My face got hot. I was so happy. | 9行目 | 赤くなった顔を、本人が感じたことに言いかえた。最後は心の中の1文 |
つまずきやすいのは、8行目と9行目です。8行目の Mika knew that wasn't true. を、そのまま日記に入れる生徒がいます。ソウタは、ミカがうそに気づいたことを知りません。ペアが「ソウタはこれを知っている?」と聞きます。ソウタが知っているのは、自分の言葉がうそだったことのほうです。I said, "I like rain." But that wasn't true. のように、同じ事実をソウタの側から書けば、日記に入れられます。
9行目の his face turned a little red. は、外から見た書き方です。ソウタの側から書くなら、見えたことより、感じたことのほうが合います。見本では My face got hot. にしました。My face turned red. でもまちがいではありませんが、「ソウタに自分の顔は見えている?」と聞くと、視点を変えると書けることが変わる、ということに目が向きます。
変化をつける
- やさしくする: 書き出しと穴あきの枠を渡します(It was raining hard after school. I saw __ at the gate. I wanted to __, but I was __.)。枠を埋めたら、自分の文を1つ足させます。
- むずかしくする: 場面を見ていない人の目で語らせます。ミカの母の目なら、知っているのは、娘が見なれない青い傘を持って帰ってきたことと、娘から聞いた話だけです。物に語らせてもかまいません。傘の目で語ると、I am a big blue umbrella. から始まり、傘のいた場所から見えたことだけで話を組み立てることになります。
- 対話文で: 会話の片方の人物の日記にします。monday をリクの日記にすると、Ms. Green watched the game, too. のように、会話で聞いたことを地の文に直す所が要になります(会話を語りに、語りを会話にと組み合わせられます)。
- 高校では: 評論を、筆者と反対の立場の人の目で語り直します。本文の事実はそのまま使い、そこから引き出す結論だけを変えると、事実と意見の区別がはっきりします。
つまずきと手当て
- 代名詞を入れかえるだけで終わる: he を I に、his を my に替えただけの文章は、語り手が替わったことになりません。心の中の1文を必ず足す、と決めておきます。足した文に下線を引かせると、ペアの読み合いでもそこに目が向きます。心の中の1文が出てこないクラスでは、先にホットシートでソウタに質問しておくと、その答えが材料になります。
- 本文の事実と食い違う: We walked home together. のように、話を作り替えてしまう例です。聞き手が、合わない行(4行目の ran into the rain)を指して返します。見つけたら、その行を読み上げさせてから直させます。
- 知らないはずのことを書く: 手順3の2列の表に戻ります。書いた文の1つずつについて「これは表のどちらの列?」と聞くと、自分で気づくきっかけになります。
出どころ
語り手(視点)を変えて書き直す活動は、物語を読む指導と書く指導の両方で広く使われています。本文の一部を変えて新しい文を作る活動は、田尻悟郎『英語教科書本文活用術!』(教育出版、2014)の第1章で「応用」の段階として扱われています。このレシピの、知っていること・知らないことを仕分ける手順と、見本の日記と表は、このサイトで作ったものです。