ねらい
「このとき、ミカはどんな気持ち?」と聞くと、答えは happy か sad になりがちで、なぜそう思うかまでは出てきません。気持ちの温度計は、登場人物の気持ちを場面ごとに区切り、気持ちの語(形容詞1語)・数字(−5〜+5)・証拠の行の3つで記録して、折れ線にする活動です。
1つの場面の気持ちを当てるより、場面と場面のあいだで気持ちがどう動いたかを見るほうが、物語は深く読めます。折れ線にすると、いちばん大きく動いた所が目に見えます。多くの場合そこが話の山場で、なぜ動いたのかを説明しようとすると、前後の文を読み直すことになります。
数字は人によって違ってかまいません。同じ場面を−3とする生徒と−1とする生徒がいても、どちらにも証拠の行があれば、違いは読みの違いとして話し合えます。数字は話し合いのきっかけで、正解を1つに決めるためのものではありません。行間の推理が「何があったか」を証拠で推すのに対して、こちらは「どう感じたか」を証拠で推します。
手順
- 本文の内容をひととおりつかんだあとに置きます。
- 先生が場面を4〜5つに区切り、行番号で示します。温度計の表(場面・気持ちの語・数字・証拠の行)を配るか、ノートに書かせます。
- 1人で5分、登場人物1人について、場面ごとに気持ちの語を一覧から1つ選び、−5〜+5の数字をつけ、証拠の行を書きます。
- 数字を表の下の枠に点で打ち、線でつないで折れ線にします。
- ペアで3分、折れ線を比べ、いちばん大きく動いた所と、なぜ動いたかを話します。
- 全体で2〜3人に、いちばん大きく動いた所を聞きます。比べるのは数字ではなく、証拠の行です。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 始めるとき | How does Mika feel here? Choose one word from the list. |
| 数字をつけるとき | Very happy is plus five. Very sad is minus five. |
| 証拠を求めるとき | Why do you think so? Which line? 何行目からそう思った? |
| ペアで比べるとき | Where is the biggest change? Why? |
中学で使いやすい気持ちの語の一覧です。表を配るなら、横に刷っておきます。
| 温度計の向き | 気持ちの語 |
|---|---|
| +の側 | happy(うれしい)・glad(よかった)・excited(わくわくする)・thankful(ありがたい)・proud(ほこらしい) |
| −の側 | sad(悲しい)・worried(心配だ)・nervous(緊張する・不安だ)・sorry(すまない・気の毒だ)・lonely(さびしい)・angry(腹が立つ)・scared(こわい) |
| 場面による | surprised(おどろく)・embarrassed(はずかしい・照れくさい)・shy(照れる・はずかしがる) |
見本
- It was raining hard after school. Mika didn't have an umbrella, so she waited at the school gate.
- Then Sota came out. He was in her class, but they didn't talk much.
- He had a big blue umbrella. He looked at the rain, and then he looked at Mika.
- “Here,” he said. He gave her the umbrella and ran into the rain.
- The next morning, Mika went to Sota's desk. “Thank you for yesterday. Here's your umbrella.”
- Sota smiled, but his voice sounded strange. He had a cold.
- “No problem,” he said. “I like rain.”
- Mika knew that wasn't true. She took a small bag out of her pocket. There were three lemon candies in it.
- “For your throat,” she said. This time, Sota didn't say anything, but his face turned a little red.
場面を5つに区切って、ミカとソウタの温度計を作った例です。
| 場面 | ミカ | ソウタ |
|---|---|---|
| ① 1〜3行目 校門で | worried −2(1行目 didn't have an umbrella) | nervous −1(2行目 didn't talk much、3行目 looked at Mika) |
| ② 4行目 傘 | surprised +1(4行目 gave her the umbrella) | shy +1(4行目 Here の1語だけで走っていく) |
| ③ 5〜6行目 次の朝 | thankful +3(5行目 Thank you for yesterday) | happy +2(6行目 Sota smiled) |
| ④ 7〜8行目「雨が好き」 | sorry −3(6行目 He had a cold、8行目 knew that wasn't true) | glad +1(7行目 No problem) |
| ⑤ 9行目 レモンのあめ | glad +2(9行目 For your throat と、ソウタの赤い顔) | embarrassed +4(9行目 didn't say anything、face turned a little red) |
折れ線にすると、ミカの線は③から④で6目もり下がります。ソウタが風邪をひいたのは自分に傘をくれたからだと、6行目と8行目でミカが気づく場面で、この物語でいちばん大きく動く所です。ソウタの線は④まで小さく上下し、⑤で大きく上がります。2人の線がいちばん離れるのも④です。ソウタは No problem と平気なふりをし、ミカはそれが本当ではないと知っています。
答えが割れやすいのは、ミカの③と⑤です。③は、5行目の Thank you だけを見れば thankful ですが、6行目の his voice sounded strange まで読んだ生徒は worried をつけます。どちらも証拠があるので認めます。⑤は、ミカの気持ちが本文にほとんど書いていない場面で、glad とする生徒も、自分も照れて embarrassed とする生徒もいます。数字が+1でも+4でも、証拠の行が言えれば十分です。なお、ソウタの⑤の embarrassed を+の側に置いたのは、この照れがうれしさまじりだからです。「場面による」の語は、こうして向きを自分で決めます。
つまずきやすいのは、ソウタの③です。6行目の He had a cold. を見て、sad や−3をつける生徒がいます。「それは体のこと? 気持ちのこと?」と聞き返し、気持ちは同じ行の Sota smiled から読ませます。体の具合と気持ちを分けて読むことを、ここで一度確かめておきます。
変化をつける
- やさしくする: 数字のかわりに、顔のマーク6つ(とてもうれしい〜とても悲しい)から選ばせます。中1の前半は、気持ちの語を日本語で書いてもかまいません。証拠の行だけは必ず書かせます。
- むずかしくする: 2人の折れ線を同じグラフに描き、線がいちばん離れる場面とその理由を説明させます。理由を英語の1文(Mika felt sorry because Sota had a cold.)で言わせると、表現の活動にもつながります。
- 対話文で: 話し手1人に絞り、発言ごとに温度をつけます。Monday Morning のリクなら、6行目の I was so sad. から8行目の Number 10 was amazing. で、気持ちが大きく上がります。
- 高校では: 評論の筆者の態度の変化を、段落ごとに追います。気持ちの語のかわりに態度の語(positive・negative・doubtful・hopeful など)を使い、+5を強く賛成、−5を強く反対にします。
- 性格まで読むとき: 同じ人物の人物カードを作ると、温度計で集めた証拠の行を、性格の欄の証拠にそのまま使えます。
つまずきと手当て
- happy と sad ばかりになる: 一覧を渡します。一覧は、気持ちを表す語をまだ持っていない生徒のための足場です。2回目からは「happy と sad は使わない」と決めると、一覧の中から近い語を探すようになります。
- 数字がばらばらで、話し合いがまとまらない: 数字ではなく証拠で比べます。「同じ行を証拠にした人は?」と聞き、同じ行から違う数字が出た理由を話させます。
- グラフを描くのに時間がかかる: 目もり(−5〜+5)と場面の線を入れた枠を配ります。点を打ってつなぐだけなら、2分で描けます。
出どころ
登場人物の気持ちの変化を図で追う方法は、読む指導で広く使われてきました。国語の授業でいう心情曲線に近いものです。登場人物の心境や性格を読み取る活動は、田尻悟郎『英語教科書本文活用術!』(教育出版、2014)の第1章でも1つのまとまりとして扱われています。このレシピの温度計の形(気持ちの語・数字・証拠の行の3つをそろえる)と見本は、このサイトで作ったものです。