ねらい
同じ But Japan lost. でも、悲しそうに読むか、怒って読むか、ねむそうに読むかで、聞き手に伝わることが変わります。気持ちカード音読は、引いたカードの気持ちで同じせりふを読み、聞き手がどの気持ちかを当てる活動です。気持ちを声で伝えようとすると、生徒は声の高さ、速さ、強く読む語、間の取り方を自分で工夫しはじめます。
ただし、カードの気持ちで読むだけで終えると、場面に合わない読み方でも「楽しかった」で終わってしまいます。このレシピの要は最後の1段です。「この場面に合う気持ちはどれ?」を、本文の行を証拠にして決めさせます。声の工夫を、もう一度本文の読みに戻すための段です。
手順
- 本文の内容をつかみ、ふつうの音読が済んだあとに置きます。
- 先生がせりふを1つ選び、全員でふつうに1回読みます。
- ペアかグループで、1人がカードを引き、カードを見せずにその気持ちでせりふを読みます。聞き手は気持ちを当てます(Are you angry?)。読み手を交代して、何枚か回します。
- 先生が「この場面に合う気持ちはどれ?」と聞きます。グループで1つ選び、証拠の行を言います。
- 選んだ気持ちで、その場面をペアで役ごとに読みます。
カードは、名刺くらいの紙に気持ちの語を1つずつ書くだけで作れます。nervous や bored のような初めて見る語は、配る前に先生が顔と声でやって見せます。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| カードを引くとき | Don't show your card. Read the line with that feeling. |
| 聞き手に | Listen. How does your partner feel? |
| 当てるとき | Guess the feeling. Are you sad? Are you angry? |
| 最後に | Which feeling fits this scene? Which line tells you? どの行で分かる? |
見本
- Ms. Green:Good morning, Riku. You look sleepy.
- Riku:Good morning, Ms. Green. I went to bed at two last night.
- Ms. Green:At two? Were you studying for the test?
- Riku:No. I was watching a soccer game on TV. Japan played Brazil.
- Ms. Green:Oh, I watched it, too! What a game!
- Riku:But Japan lost. I was so sad.
- Ms. Green:Me, too. But the last goal was beautiful.
- Riku:Yes! Number 10 was amazing. I want to play like him someday.
- Ms. Green:Then don't sleep in class today. You have practice after school, right?
- Riku:Right. I'll try!
まず、6行目の But Japan lost. I was so sad. を、カードの気持ちで読み分けた例です。
| カード | 読み方の例 | 聞き手の手がかり |
|---|---|---|
| sad | 低い声で、ゆっくり。lost のあとに間をあける | 声の低さと間 |
| angry | 速く、強く。LOST を短く言い切る | 強さと速さ |
| sleepy | あくびをしながら、語をのばして読む | のばし方 |
| surprised | 高い声で、lost? と上げて読む | 上がり調子 |
この行で「場面に合う気持ちは?」と聞くと、sad はすぐに決まります。6行目に I was so sad. と書いてあるからです。おもしろいのは、そこに sleepy も重なる、と言う生徒が出ることです。1行目の You look sleepy. と、2行目の at two が証拠です。ねむくて悲しい、と2つの気持ちを重ねて読ませると、6行目の読み方がもう一段、場面に近づきます。
解釈が割れるのは、9行目のグリーン先生のせりふです。
| 読み | 証拠になる行 | 読み方の例 |
|---|---|---|
| やさしい(気づかっている) | 5行目と7行目。先生も同じ試合を見て、同じように悲しかった | やわらかく。right? を軽く上げる |
| きびしい(注意している) | 3行目の test と、9行目の命令文 | はっきりと。don't を強く |
| 冗談(からかっている) | 8行目のリクの夢を受けた Then と、10行目のリクの明るい返事 | 笑いながら。Then を少しのばす |
決める手がかりになるのは、すぐあとの行です。10行目でリクは Right. I'll try! と明るく返しています。先生が本気で叱っていたなら、この返事は少し軽すぎます。グループには、9行目を選んだ気持ちで読んだあと、10行目の返事と合うかを確かめさせます。それでも、やさしいと冗談のどちらかには決めきれないことがあります。証拠の行が言えていれば、どちらの読みも認めます。証拠の行で読みを支える決め方は、行間の推理と同じです。
変化をつける
- やさしくする: カードを4枚(happy, sad, angry, sleepy)に減らします。中1の前半は、顔の絵を添えたカードにすると、語の意味でつまずきません。
- むずかしくする: カードを使わず、各行の気持ちを自分で決めて本文に書き込み、わけ(証拠の行)を言ってから読みます。
- 物語で: せりふの少ない物語では、地の文を、その場にいた人の気持ちで読みます。並べかえて戻すの見本 Three Lemon Candies なら、8行目の Mika knew that wasn't true. を、あきれた気持ちで読むか、心配する気持ちで読むか。6行目の He had a cold. と9行目の For your throat が、心配のほうの証拠になります。場面ごとの気持ちの動きを気持ちの温度計で先に追っておくと、読み分けのわけが言いやすくなります。
- 高校では: スピーチの意図(説得する・おわびする・お礼を言う)で読み分けます。同じ一節を意図を変えて読みくらべ、話し手の目的にどれが合うかを考えさせます。
つまずきと手当て
- はずかしがって声が出ない: いきなりペアにせず、最初は全員で同じ気持ちで一斉に読みます(Everyone, read it in a sad voice.)。一斉で声が出るようになってから、ペアやグループに移します。
- ふざけて意味から離れる: 楽しむのはかまいません。ただし、最後は必ず「場面に合うのはどれ?」に戻ると、最初に予告しておきます。そうしておけば、ふざけた読みも、比べる材料の1つになります。
- 聞き手が顔の表情で当ててしまう: 聞き手は目を閉じて聞きます。声だけで伝える工夫が要るようになります。
- 声の工夫が小さく、当てられない: 強く読む語を変えてみるよう助言します。どの語を強く読むかは、強く読む語に印をつけるで練習できます。
出どころ
気持ちや役になりきって読む方法は、音読の型の1つである役割読み(音読のバリエーション)を広げたもので、英語の授業で広く使われています。音読の型の中での役割読みの位置は、音読指導の技術にまとめています。このレシピの気持ちのカード8枚の組み合わせ、最後に場面に合う気持ちを証拠の行で決める手順、見本の読み分けの例は、このサイトで作ったものです。