ねらい
教科書の対話文や物語には、たいてい挿絵がついています。挿絵には、本文に書いていないことが描かれています。だれがどこにいるか、どんな顔をしているか、何をしているか。絵に声をあてるは、挿絵や、音を消した映像に合わせて、登場人物の声をあてる活動です。アニメや映画の吹きかえの録音(アフレコ)と同じことを、教科書の本文でします。
声をあてるには、絵の中で起きていることに、読み方を合わせなければなりません。絵の中の人物があくびをしているなら、次のせりふの前に間が要ります。肩を落としているなら、声は低くなります。読む速さと間を、文字ではなく場面の様子から決めることになり、そのために絵と本文を何度も見くらべます。
気持ちカード音読が、引いたカードの気持ちで同じせりふを読み分けるのに対して、こちらは絵の場面と、その中で流れる時間に合わせて読みます。
手順
- 本文の意味をつかみ、役ごとに読めるようになってから置きます。デジタル教科書に本文の場面の映像があるときは、音を消して使います。
- ペアで2分、絵ごとに、どの行がその絵の場面かを決め、本文に区切りの線を引きます。
- ペアで3分、絵ごとの読み方を本文に書き込みます。間をあける所(|と秒数)、声の調子(明るく・ねむそうに など)、速さです。絵の中の動きを、読み方のわけにします。
- 絵を見ながら、声をあてる練習をします(4分)。役を交代して2回です。映像のときは音を消して流し、口の動きや場面の変わり目に声を合わせます。
- 2〜3組が、絵を1枚選んで前で声をあてます(3分)。見ているペアは教科書を閉じて聞き、どの絵の場面かを当てて、決め手になった語か読み方を1つ言います。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 始めるとき | Look at the pictures. Which lines go with each picture? |
| 間を決めるとき | What is Riku doing here? Wait, then say the next line. |
| 練習のとき | Match your voice to the picture. 絵の顔と同じ声で |
| 発表のとき | Close your textbooks and listen. Which picture is it? |
挿絵が1枚しかない本文では、先生が場面を3つに分け、絵の様子を短い日本語で板書してもかまいません(「リクが大きなあくびをする」など)。声のわけになるのは、絵そのものより、場面の中の動きです。
見本
- Ms. Green:Good morning, Riku. You look sleepy.
- Riku:Good morning, Ms. Green. I went to bed at two last night.
- Ms. Green:At two? Were you studying for the test?
- Riku:No. I was watching a soccer game on TV. Japan played Brazil.
- Ms. Green:Oh, I watched it, too! What a game!
- Riku:But Japan lost. I was so sad.
- Ms. Green:Me, too. But the last goal was beautiful.
- Riku:Yes! Number 10 was amazing. I want to play like him someday.
- Ms. Green:Then don't sleep in class today. You have practice after school, right?
- Riku:Right. I'll try!
この対話文に3枚の挿絵があるとして、絵ごとの読み方を決めた例です(絵の様子は、このサイトで考えたものです)。
| 絵 | 絵の様子 | 行 | 間をあける所 | 声の調子 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 朝の廊下。リクが大きなあくびをし、グリーン先生が声をかける | 1〜3行目 | 1行目の Good morning, Riku. と You look sleepy. のあいだに2秒(あくび) | 先生は明るく。リクはねむそうに、ゆっくり |
| 2 | 2人が身をのり出して試合の話をし、途中でリクが下を向く | 4〜7行目 | 5行目の What a game! のあと、リクが下を向くまで1秒 | 4〜5行目は高く、速く。6行目から低く、ゆっくり |
| 3 | リクが顔を上げてボールをけるまねをし、先生が教室を指さす | 8〜10行目 | 7行目と8行目のあいだに1秒(リクが顔を上げる) | リクは明るく。先生は笑いながら、少しからかうように |
絵1の2秒の間は、せりふのわけになります。先生は、リクのあくびを見てから You look sleepy. と言います。間をあけずに Good morning, Riku. You look sleepy. と続けて読むと、先生がなぜ sleepy と言ったのかが、声からは伝わりません。間を書き込むことが、そのまま本文を読むことになっています。
絵2では、5行目と6行目のあいだで声の高さが大きく変わります。同じ試合の話なのに、5行目は「すごい試合だった」、6行目は「でも負けた」です。リクが下を向く1秒の間をあけると、聞き手は But の前で話の向きが変わることに気づきます。7行目の後半 But the last goal was beautiful. で、声はまた少し明るくなります。
絵3の先生の声は、絵の描き方で変わります。先生が笑っている絵なら、9行目の Then don't sleep in class today. は冗談まじりに、まじめな顔の絵なら注意する声になります。どちらの絵でも、10行目のリクは Right. I'll try! と明るく返しています。絵と10行目の返事の両方に合う声を、ペアで決めさせます。
発表で場面を当てる決め手は、sleepy や lost のような内容の語であることがほとんどです。それでかまいません。声だけで場面を当てるには、聞いて意味が分かっていなければならないからです。「声が急に低くなったから絵2」のように、読み方で当てられた場面があれば、全体に紹介します。
変化をつける
- やさしくする: 絵だけを見て読み、時間は気にしません。映像には合わせず、間の書き込みも1か所だけにします。中1の前半は、先生が絵と行の区切りを先に示しておきます。
- むずかしくする: 絵に合うせりふを、1行だけ自分たちで足します。絵3の最後に先生が Good luck, Riku! と言う、リクが教室へ向かいながら See you later! と言う、のように、絵の動きに合う短いせりふにします。絵の途中に足すなら、そのせりふで次の行の意味がおかしくならないかも確かめます。
- 物語で: 語り手の役を足します。Three Lemon Candies の4行目なら、"Here," のあとに、ソウタが傘を手渡して雨の中へ走り出す絵が来ます。語り手は、その動きに合わせて He gave her the umbrella and ran into the rain. を読みます。語り手とせりふの声の変え方は、語りとせりふの読み分けへ。
- 高校では: 映像の吹きかえにします。教科書の題材に関わる30秒ほどの短い映像の音を消し、場面に合う英語のせりふを自分たちで書いて声をあてます。台本を書いて演じる所は、ロールプレイとスキットのスキットに近くなります。
つまずきと手当て
- 速く読みすぎて、絵とずれる: 間をあける所に、秒数を書いた印をつけさせます。間のあいだは、心の中で one, two と数えます。映像のときは、場面が変わるまで次の行を読まない、と決めます。
- はずかしがって声が出ない: いきなりペアで前に出さず、4人のグループで、2人が声をあて、2人が絵を見て聞く形にします。1つの役を2人でいっしょに読んでもかまいません。前での発表は、希望するグループだけで十分です。
- 絵と合わない読み方になる: 悲しい場面を明るく読んでいるようなときは、絵の中の人物の顔を指して「この顔で、その声?」と聞きます。読み方は、絵を証拠にして決めさせます。
出どころ
アニメや映画では、できあがった映像に合わせて声を録音することを、アフレコ(アフター・レコーディングの略)と呼びます。映像や絵に合わせて声をあてる音読は、田尻悟郎『英語教科書本文活用術!』(教育出版、2014)の第1章でも、体の動きで本文を表す暗唱のまとまりの中に見られます。この活動の、絵ごとに行を区切って間と声の調子を書き込む手順と、見ているペアが場面を当てる回し方、見本の3枚の絵の表は、このサイトで作ったものです。