ねらい
声だけ劇場は、本文を語り手と登場人物の役に分けた台本にして、班で声だけで演じる朗読劇です。衣装も動きもなく、台本は手に持ったまま。英語圏の読みの授業では、リーダーズシアター(Readers Theater)と呼ばれ、くり返し読むことに目的を持たせる方法として使われてきました。
この活動の芯は、本番の聞き手がいることです。音読を何度もくり返すと、生徒にとっては同じことの作業になりがちです。朗読劇では、何度も読む理由が「聞き手に場面を見せるため」に変わります。どこで間をあけるか、どの語を強く言うか、どの文で声をそろえるかを、班で決めて練習します。台本を持ったままでよいので、暗唱が苦手な生徒も本番に立てます。
語りとせりふの読み分けが役を読み分ける練習なら、朗読劇はその先の本番です。語り手を2〜3人に分けたり、大事な1文を全員で読んだりと、台本に手を入れるところから班の仕事になります。
手順
- 本文の内容をつかみ、ふつうに音読できるようになってから置きます。4〜5人の班を作ります。
- 班で4分、役を分けて教科書に印をつけます。登場人物の役のほかに、地の文を2〜3人の語り手に分けます。1つだけ、班の全員で声をそろえて読む文を決めます。
- 班で通して読みます(8分)。1回目はつなぐこと、2回目は声の大きさと速さ、3回目は聞き手を見ること、と回ごとにねらいを1つにします。
- 2〜3班が前に出て上演します(1班2分)。語り手は聞き手のほうを向き、人物どうしは顔を相手に向けて読みます。動きはつけません。
- 聞いた班は、いちばん場面が見えた所を1つ、行を挙げて伝えます(2分)。上演しなかった班は、次の時間か単元の終わりに上演します。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 始めるとき | No costumes, no moving around. Only your voices. |
| 役を分けるとき | Choose two narrators. Choose one sentence to read all together. |
| 3回目の練習で | This time, look at your audience, not only at the text. |
| 上演のあとに | Which line helped you see the story? |
見本
- It was raining hard after school. Mika didn't have an umbrella, so she waited at the school gate.
- Then Sota came out. He was in her class, but they didn't talk much.
- He had a big blue umbrella. He looked at the rain, and then he looked at Mika.
- “Here,” he said. He gave her the umbrella and ran into the rain.
- The next morning, Mika went to Sota's desk. “Thank you for yesterday. Here's your umbrella.”
- Sota smiled, but his voice sounded strange. He had a cold.
- “No problem,” he said. “I like rain.”
- Mika knew that wasn't true. She took a small bag out of her pocket. There were three lemon candies in it.
- “For your throat,” she said. This time, Sota didn't say anything, but his face turned a little red.
4人の班で台本を分けた例です。語り手を2人(N1・N2)にしています。
| 行 | だれが読むか | 班で決めること |
|---|---|---|
| 1 | N1 | It was raining hard のあとに、少し間をあける |
| 2〜3 | N2 | he looked at Mika で、少しゆっくりになる |
| 4 | ソウタ/N1 | "Here," は短く。ran into the rain は N1 が速く読む |
| 5 | N2/ミカ | ミカのせりふは、ソウタのほうを向いて |
| 6〜7 | N1/ソウタ | ソウタは、かぜをひいた声で |
| 8 | N2/全員 | There were three lemon candies in it. を全員でそろえる |
| 9 | ミカ/N1 | 最後の a little red は、N1 が小さな声で |
この例では、全員で読む文を8行目にしています。題名の Three Lemon Candies とつながる1文に声がそろうと、聞き手にはそこが話の中心だと伝わります。全員の文をどこにするかを決める話し合いは、本文のどこが大事かを読む話し合いでもあります。
4行目の ran into the rain を語り手が速く読めば、走っていく姿が聞き手に見えます。動きをつけない決まりにしているので、場面を見せる手段は声しかありません。聞いた班の「いちばん場面が見えた所」に、こうした声の工夫が挙がれば、台本の読みが聞き手に届いたということです。
変化をつける
- やさしくする: 役を先生が分けた台本を配り、班は全員で読む文を決めるだけにします。中1の最初は、語り手1人・人物2人の3人班でかまいません。
- むずかしくする: 本文にない語り手の1文を、班で1つだけ足させます(足した文は上演のあとに明かす)。1文足しとつなげられます。
- 対話文で: 対話文には語り手がいないので、場面を説明する語り手の文を、班で2〜3文作って足します。One Monday morning, Riku was in the hallway. のような短い文です。
- 高校では: 長い本文は、いちばん場面の動く段落だけを台本にします。発表の観点(区切り・強さ・聞き手への向き)を先に示すと、パフォーマンステストの練習にもなります。
つまずきと手当て
- 語り手が教科書に顔をうずめる: 3回目の練習のねらいを「聞き手を見る」にして、文の終わりで顔を上げる所に印をつけさせます。台本を胸の高さに持つと、顔が上がります。
- 声の小さい班がある: その班には、全員で読む文を2つにしてよいことにします。そろえて読む文があると、1人の声の小ささが目立ちません。
- 上演の時間が足りない: 全班を同じ日に上演しようとしないことです。1日に2〜3班ずつ、帯の時間に回します。
評価につなげる
上演を録画しておくと、班の音読の変化が残ります。単元の最初と終わりに同じ場面を上演すると、間のあけ方や声のそろえ方の伸びが、生徒にも見えます。観点は、区切り・強さ・聞き手への向きの3つほどにしぼります。
出どころ
本文を台本にして、動きをつけずに声だけで演じる形は、英語圏の読みの授業で Readers Theater と呼ばれ、くり返し読むことに目的を持たせて、なめらかに読む力を育てる方法として使われてきました。この活動の、語り手を分ける決まり、全員で読む1文、3回の練習のねらいの分け方、見本の台本は、このサイトで作ったものです。