ねらい
ペアで音読を聞き合わせると、聞き手の言葉は「よかった」「上手だった」で終わりがちです。読み手はそれを聞いても、次に何を直せばよいかが分かりません。聞き合って1つ直すは、聞き手が聞く観点を1つだけ選び、よかった所を1つと直す所を1つ、どの語・どの行かを指して伝える活動です。読み手は、言われた行だけをその場で読み直します。
観点は4つで、カードにしておきます。
| 観点カード | 聞く所 |
|---|---|
| 発音 | 語の音。1つの音が別の音に聞こえないか |
| 強さ | 意味を運ぶ語が強く、ほかの語が弱く読めているか |
| 区切り | 意味のまとまりで間をあけているか |
| 速さ | 聞き手が分かる速さか。速すぎる所、遅すぎる所はないか |
強さと区切りは、英語らしい音のリズムの土台です(強勢・リズム・イントネーション)。観点を1つにしぼると、聞き手は何を聞けばよいかが決まり、伝える言葉が具体的になります。直す所を1つにするのは、読み手が1回の読み直しで直せる量にするためです。
強く読む語に印をつけるの最後の段でも、聞き手は●の語が強く聞こえたかを伝えます。こちらは、強さを含む4つの観点から聞き手が1つを選び、よい所と直す所を1つずつ伝えて、その場の読み直しまで進めます。
手順
- 本文をひととおり音読できるようになってから置きます。音読テストの前の練習にも向いています。
- 先生が観点カードを1枚ずつ示し、同じ行を、よい読み方と直したい読み方で読んで見せます(2分)。
- ペアでAとBを決めます。Bは観点カードを1枚選んで、Aに伝えます。Aは決めた範囲(4〜5行)を読み、Bは教科書を指で追いながら聞いて、気づいた語に鉛筆で小さく印をつけます(1分30秒)。
- Bが、よかった所1つと直す所1つを、行と語を指して伝えます。Aは直す所の行だけを読み直し、Bは直ったかどうかを伝えます(1分30秒)。
- 交代して、同じようにします(3分)。観点は、相手と違うカードを選びます。
- 先生は、ペアを回って聞いた言葉のうち、語や行を指して伝えられていた例を、2〜3つ全体で紹介します(2分)。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 観点を選ぶとき | Choose one card. Listen only for that point. |
| 伝えるとき | One good point and one point to fix. Which word? Which line? |
| 読み直すとき | Read only that line again. Did it get better? |
| 「よかった」だけのとき | Good. But which word was good? どの語がよかった? |
伝える言葉は日本語でかまいません。言い方の型を板書しておくと、語や行を指す言い方になります(「_行目の__が、__でした」「_行目の__のあとに、間を」)。
見本
- Do you have something special? For me, it is this notebook.
- My grandmother gave it to me last summer.
- She lives alone in a small town by the sea.
- She has kept a diary for fifty years.
この4行で、観点ごとに伝える言葉の例です。
| 観点 | よかった所の例 | 直す所の例 |
|---|---|---|
| 発音 | 1行目の special がはっきり聞こえた。s のあとに「ウ」が入っていない | 3行目の lives が「ライブズ」に聞こえた。「リヴズ」と短く |
| 強さ | 4行目の fifty が強くて、50年の長さが伝わった | 1行目の this notebook の this が弱い。ノートを見せるつもりで、this を強く |
| 区切り | 3行目の alone のあとの短い間で、ひとりで住んでいることが伝わった | 1行目の For me のあとに間を。そこで問いかけから自分の話に変わる |
| 速さ | 2行目の last summer を、少しゆっくり言えていた | 3行目が速くて、in a small town by the sea が1語に聞こえた |
直す所の例は、どれも本文の語を指しています。「もっとはっきり」「なんとなく速い」では、読み手はどこを直せばよいか分かりません。「1行目の For me のあとに間を」なら、読み手はその行だけを読み直して、すぐに試せます。
1行目の For me のあとの間は、意味から決まる間です。Do you have something special? と聞き手に問いかけたあと、For me, でハルトは自分の話に入ります。ここで間をあけると、聞き手は問いの答えを一度自分で考えてから、ハルトの答えを聞くことになります。区切りの観点では、なぜそこで間をあけるかまで言えると、読み手はほかの文でも同じ読み方を使えます。
3行目の lives は、命の意味の lives(ライヴズ)と同じつづりの動詞です。ここは「住んでいる」なので「リヴズ」です。発音を直す所は、意味を確かめる所にもなります。
聞き手が1回の読みで気づける直す所は、1つか2つです。全部を伝えようとすると、聞き手は読みを聞くより、まちがいを探すことに気をとられます。1つにしぼる決まりは、聞き手のためでもあります。
変化をつける
- やさしくする: 観点を1つにします。たとえば、全員が速さのカードだけで聞きます。中1の前半は、よかった所だけを伝え、直す所は先生が全体で1つ示します。
- むずかしくする: 聞き手が、直す所の行をお手本として読んでみせます。言葉で説明するより早く伝わることがあります。聞き手がその行をうまく読めないと見せられないので、聞き手の練習にもなります。
- 対話文で: 役を決めて読み合い、相手の役の読みについて伝えます。観点カードに「上げ下げ」を1枚足し、Monday Morning の3行目 At two? が上がり調子になっていたか、のように聞きます。
- 高校では: スピーチの伝え方の観点を足します。聞き手を見ているか、大事な所の前で間をとっているか、問いかけを聞き手に向けているか、です。発表の練習でも、同じカードを使えます。
つまずきと手当て
- 「よかった」だけで終わる: 語か行を指さなければ伝えたことにならない、と決めます。先生は「どの語?」「何行目?」と聞き返します。言い方の型を板書しておきます。
- 言い方がきつくなる: 「下手」「変」のような言葉が出たら、必ず、よかった所を先に1つ言う順番にします。直す所は「〜すると伝わる」「〜のあとに間を」のように、どうすればよいかの形で言わせます。
- 直す所が見つからない: 「直す所なし」は使わない決まりにします。見つからないときは「もっとよくなる所」を1つ探す、と言いかえると、聞き手は最後まで耳を傾けます。
評価につなげる
聞き合いは、生徒どうしの相互評価で、生徒の学習の活動です。先生の評価そのものではないので、伝え合った言葉は点数にしません(自己評価と相互評価)。音読テストを行うなら、テストで見る観点を、観点カードと同じ言葉にしておきます。練習で使った言葉のまま、テストで何を見られるかが生徒に分かります。観点を段階に分けて示すなら、ルーブリックへ。
出どころ
仲間の発表や音読を、観点を決めて聞き、よい所と直す所を伝え合う方法は、相互評価や、仲間からのフィードバック(peer feedback)として、英語の授業で広く使われています。この活動の、4枚の観点カードと、よい所1つと直す所1つを語や行を指して伝える決まり、言われた行だけを読み直す回し方、見本の伝える言葉の例は、このサイトで作ったものです。