ねらい
教科書の本文を、1語ずつ区切って読む生徒は少なくありません。an / umbrella、ran / into のように語と語のあいだで毎回止まると、文字としては正しくても、音声で聞く英語とは違う英語になります。ふつうの速さの英語では、子音で終わる語のあとに母音で始まる語が来ると、前の語の終わりの音が次の語の頭について、2語が1語のように聞こえます。an umbrella なら、an の n が umbrella にうつります。この音の変化をリンキングと呼びます。
音のつながりに印をつけるは、音声を聞く前に、つながって聞こえそうな所を予想して ‿ の印をつけ、音声で確かめてから読む活動です。予想するには、つづりではなく、語の終わりと始まりの音を頭の中で鳴らすことになります。強く読む語に印をつけるが、強く読む語と区切りに印をつける活動なのに対して、こちらは語と語のつながりに印をつけます。同じ本文で続けて行うと、強く読む語のあいだで弱い語がつながっていく、英語の流れが見えてきます。
手順
- 本文の意味をつかみ、ふつうに音読できるようになってから置きます。印をつけるあいだは、音声を流しません。
- 1人で3分、語と語がつながって聞こえそうな所を予想し、2つの語のあいだに ‿ を書き込みます。目安は「子音で終わる語+母音で始まる語」です(an umbrella・ran into・took a・out of)。
- ペアで1分、印を見比べます。違う所には?をつけておきます。
- 音声を聞いて確かめます(2分)。つながって聞こえた所は印をなぞり、聞こえなかった所は印に×をつけます。予想していなかったつながりが聞こえたら、色を変えて足します。
- 印のとおりに、つなげて読みます。全員で読んだあと(2分)、ペアで聞き合います(2分)。聞き手は、‿ の所が1語のようにつながって聞こえたかを伝えます。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 印をつけるとき | "An umbrella" sounds like one word. Find more pairs like this. |
| 迷っている生徒に | Say the word. What is the last sound? つづりではなく音で |
| 音声を聞くとき | Listen. Are the two words linked? 予想と同じ? |
| ペアで読むとき | Don't stop between the linked words. Can your partner hear the links? |
見本
- It was raining hard after school. Mika didn't have an umbrella, so she waited at the school gate.
- Then Sota came out. He was in her class, but they didn't talk much.
- He had a big blue umbrella. He looked at the rain, and then he looked at Mika.
- “Here,” he said. He gave her the umbrella and ran into the rain.
- The next morning, Mika went to Sota's desk. “Thank you for yesterday. Here's your umbrella.”
- Sota smiled, but his voice sounded strange. He had a cold.
- “No problem,” he said. “I like rain.”
- Mika knew that wasn't true. She took a small bag out of her pocket. There were three lemon candies in it.
- “For your throat,” she said. This time, Sota didn't say anything, but his face turned a little red.
1・4・8行目に ‿ をつけた例です。この本文には音声がないので、ふつうの速さで読んだときに起きやすいつながりを示しています。
| 行 | ‿ をつけた例 | つながる音 |
|---|---|---|
| 1 | It was raining hard‿after school. Mika didn't have‿an‿umbrella, so she waited‿at the school gate. | hard の d、have の v、an の n、waited の d が、次の語の母音につく |
| 4 | "Here," he said. He gave her the umbrella and ran‿into the rain. | ran の n が into につく |
| 8 | Mika knew that wasn't true. She took‿a small bag‿out‿of her pocket. There were three lemon candies‿in‿it. | took の k、bag の g、out の t、candies の s(z の音)、in の n が、次の語の母音につく |
印をつけ落としやすいのは、3語が続けてつながる所です。have‿an‿umbrella、bag‿out‿of、candies‿in‿it の3か所で、an‿umbrella にだけ印をつけ、have のあとで止まって読む生徒が出ます。have はつづりが e で終わるので、母音で終わる語に見えるからです。「have の最後の音は?」と聞いて声に出させると、v で終わることに気づきます。take や gave も同じです。3語が続く所は、ひと息で読ませます。
印が割れやすいのは、次のような所です。
| 割れやすい所 | わけ |
|---|---|
| 4行目 gave her | her の h は、弱く読まれるとほとんど聞こえなくなることがあり、そのときは gave と her がつながります。her を強く読めば h が出て、つながりません |
| 8行目 out of her | of her も同じです。h が弱くなれば、bag‿out‿of‿her と4語が続けてつながります |
| 1行目 hard after | raining hard / after school と区切って読めば、つながりません |
| 8行目 wasn't true | wasn't の t は、次の true の t と重なって、ほとんど聞こえないことがあります。つながるのではなく、消える音です |
h が弱くなるかどうかは、読む人や速さで変わります。どちらかを正解に決めず、音声で聞こえたとおりに印を残せば十分です。予想と音声を突き合わせるこの時間が、活動の中でいちばん耳を使う時間です。
変化をつける
- やさしくする: 最初の1行は、先生が黒板で印をつけて見せます。生徒は残りの行で、an umbrella のような「an+母音で始まる語」と、ran into・took a のような「動詞+次の語」だけを探します。
- むずかしくする: 消える音と弱くなる音にも印をつけます。消える音(didn't have の t、wasn't true の t)は文字に斜線、弱くなる音(gave her の h)は文字を ( ) でくくります。音声で聞き分けて書き込んでおくと、部分ディクテーションで空所にしたい所が、そのまま見つかります。
- 説明文で: 数や量を表す語のあとに、つながる所がよく出ます。How We Come to School の3行目なら、Most‿of them live more than two kilometers‿away from school. のようになります。
- 高校では: 弱く読まれる語(can・and・to など)にも印をつけます。How We Come to School の8行目 I can read‿a book‿on the bus. の can は、ふつう弱く短く読まれ、強く読むと「できる」ことを強調する読み方になります。つながる所と弱い語を合わせて練習しておくと、シャドーイングで音声についていきやすくなります。
つまずきと手当て
- 区切りをまたいでつなげる: 1行目の umbrella, so や4行目の said. He のように、コンマやピリオドをまたいで印をつける生徒がいます。印は意味のかたまりの中だけ、と決めます。区切りの所では、つなげずに短く間をとります。先に区切りの/を書き込んでから ‿ を探すと、またぎにくくなります。
- わざとらしい読みになる: つなげることを意識しすぎて、ゆっくり大げさに読む生徒が出ます。つながりは、自然な速さで読むと起きるものです。印を確かめたら、音声に重ねて読むオーバーラッピングで、ふつうの速さに戻します。速さを少しずつ上げるなら速さを上げる音読へ。
出どころ
学習指導要領(外国語)の「音声」の指導事項には、小学校・中学校とも、「語と語の連結による音の変化」が挙げられています。この活動は、その音の変化を、本文の音読の中で扱う方法の1つです。音の連結は、田尻悟郎『英語教科書本文活用術!』(教育出版、2014)の第1章でも、シャドーイングの項目の中で扱われています。この活動の、聞く前に ‿ の印をつけて予想する手順と、つづりではなく音で考える決まり、見本の印の例は、このサイトで作ったものです。