ねらい
物語の本文には、2つの声が入っています。出来事を語る語り手の声と、登場人物のせりふの声です。この2つを同じ調子で音読すると、聞き手には、どこからどこまでがせりふなのかが分かりません。語りとせりふの読み分けは、地の文とせりふを見分け、声の高さ・速さ・向きを変えて読む活動です。
読み分けるには、引用符の始まりと終わりを見つけ、そのせりふをだれが、だれに言っているのかを決めなければなりません。せりふの声は、その場にいる相手に向けた声です。語り手の声は、物語の外にいる聞き手に向けた声です。"No problem," he said. "I like rain." のように、せりふの途中に he said がはさまる文では、he said の2語だけ語り手の声に戻り、すぐにソウタの声に戻ります。声を切りかえる所を探すことが、そのまま本文の組み立てを読むことになります。
気持ちカード音読が1つのせりふを気持ちで読み分けるのに対して、こちらは語り手と人物という、声の役目で読み分けます。
手順
- 本文の内容をつかみ、ふつうの音読ができるようになってから置きます。
- 1人で2分、せりふに下線を引き、だれのせりふかを下線の上に書きます。he said や she said は丸で囲みます(語り手に戻る所)。
- 語り手と登場人物の数だけ役を分け、班で読みます(見本の物語なら、語り手・ミカ・ソウタの3人)。語り手は少しゆっくり、教室の聞き手に向けて。人物は相手の顔を見て、場面の声で読みます。
- 役を回して、全員がすべての役を読みます。
- 最後に1人で、全部の役を読み分けます。聞くペアは教科書を閉じて聞き、せりふが始まったと思った所で指を1本立てます。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 下線を引くとき | Underline the words people say. Who says it? |
| 役で読むとき | Narrator, read to the class. Mika and Sota, talk to each other. |
| he said の所で | "He said" is the narrator's part. Change your voice back. |
| 1人で読むとき | Read all the parts by yourself. Your partner listens with the textbook closed. |
見本
- “Here,” he said. He gave her the umbrella and ran into the rain.
- The next morning, Mika went to Sota's desk. “Thank you for yesterday. Here's your umbrella.”
- Sota smiled, but his voice sounded strange. He had a cold.
- “No problem,” he said. “I like rain.”
- Mika knew that wasn't true. She took a small bag out of her pocket. There were three lemon candies in it.
- “For your throat,” she said. This time, Sota didn't say anything, but his face turned a little red.
この6行で、語りとせりふを分けると次のようになります。
| 行 | せりふ(だれの) | 語り手に戻る所 | 読み分けの工夫 |
|---|---|---|---|
| 4 | "Here,"(ソウタ) | he said. He gave her ... | Here は1語。短く言い切る。語り手は ran into the rain を少し速く |
| 5 | "Thank you for yesterday. Here's your umbrella."(ミカ) | 行の始めの The next morning, ... | 語り手は The next morning の前で間をおき、場面が変わったことを示す |
| 6 | なし | 全部が語り手 | He had a cold. を少しゆっくり。聞き手がここで気づくように |
| 7 | "No problem," / "I like rain."(ソウタ) | he said. | he said の2語だけ語り手。すぐソウタの声に戻る |
| 8 | なし | 全部が語り手 | Mika knew that wasn't true. を、外から語るか、ミカの心に寄せて読むか |
| 9 | "For your throat,"(ミカ) | she said. This time, ... | This time の前で間をとる。ソウタが何も言わなかったことを、間で聞かせる |
読み分けで迷いやすいのは、7行目と8行目です。7行目は、ソウタのせりふが he said で2つに分かれています。"No problem," he said. まで読んで、"I like rain." を語り手の声のまま読んでしまう生徒がいます。下線を2本に分けて引き、2本とも上に「ソウタ」と書かせると、he said だけが語り手だと見えます。かぜ声で読むかどうかを班で決めさせると、6行目の He had a cold. に戻ることになります。
8行目は、せりふのない語り手の行ですが、ミカの心の中に近い文です。Mika knew that wasn't true. を外から淡々と語るか、ミカの気持ちに寄せて少し小さく読むかで、班の読み方が分かれます。どちらにしたかを聞き、「ミカは、どうしてそれが本当ではないと分かったの?」と聞くと、6行目のかぜと、4行目の雨の中へ走っていった場面に戻ります。読み方の違いが、そのまま場面の読みの違いになっています。
4行目の "Here," と5行目の "Here's your umbrella." は、同じ here で始まるせりふです。傘を渡すソウタと、傘を返すミカ。2つを続けて読ませて言い方を比べると、2人の様子の違いが声に出ます。
変化をつける
- やさしくする: 語り手を先生が読み、生徒はせりふだけを読みます。先生が語り手の文を読み終えた所からせりふが始まるので、入る所が分かりやすくなります。中1の前半は、せりふの話し手を先に教科書に書き込ませておきます。
- むずかしくする: 語り手がだれかを決めて読みます。ミカの友だちが語る、何年もたってからソウタが語る、のように語り手を決めると、同じ地の文でも読み方が変わります。語り手を物語の中の人物にして書き直すなら、視点を変えて語るへ。
- 対話文で: 対話文には語り手がいないので、場面を説明する1文を先生が作り、それを読む語り手の役を足します。Monday Morning なら「月曜の朝の廊下で、ねむそうなリクにグリーン先生が声をかける」場面を英語の1文にして、語り手が読んでから会話を始めます。
- 説明文で: How We Come to School の6〜9行目のような、said のあとの引用を、答えた生徒の声に変えて読みます。調べた人の報告の声と、答えた人の声を読み分けると、引用がだれの言葉かがはっきりします。
- 高校では: 長い物語で、語り手が人物の心の中を語る文(引用符のない思い)を探し、声をどう変えるかを話し合います。
つまずきと手当て
- he said のあとも、人物の声のまま読む: 丸で囲んだ he said と she said の所で、一度、教科書から顔を上げて聞き手を見る、と決めます。顔の向きが変わると、声も変わります。
- せりふの始まりと終わりが分からない: 引用符に色をつけさせます(始まりは青、終わりは赤)。引用符の中にピリオドがあっても、せりふが続くことがあります(5行目)。
- はずかしがって、人物の声を出さない: 声を大げさに変えなくてよいことにします。変えるのは声の高さでなくても、速さや、だれに向けて読むかだけでかまいません。最初は1つの役を2人でいっしょに読ませます。
評価につなげる
音読テストで「場面に合った読み方」を見るなら、この活動の読み分けをそのまま課題にできます。教科書音読テストのルーブリックを使うときも、語り手とせりふの声の切りかえを見るのか、意味のまとまりで区切って読むことを見るのかを、先に決めて生徒に示しておきます。
出どころ
語り手と登場人物の役を分けて、台本を手に持ったまま声だけで演じる形は、リーダーズ・シアター(readers theater)として、母語と外国語の両方の授業で広く使われてきました。このレシピの、he said で語り手の声に戻る決まりと、聞き手がせりふの始まりで指を立てる確かめ方、見本の読み分けの表は、このサイトで作ったものです。