ねらい
音読を何回もくり返していると、声は出ていても、頭が意味から離れていくことがあります。文字を音に変えるだけなら、意味を考えなくても読めてしまうからです。ジェスチャー音読は、文や意味のかたまりごとに動作を決めて、その動作をつけて読む活動です。
動作を決めるには、そのかたまりが何を言っているかが分かっていなければなりません。「ran into the rain は、その場で走る」と決めた時点で、意味の確かめが1回すんでいます。読むときは、動作が意味を思い出させる手がかりになります。最後に動作だけを手がかりに本文を言う段を置くと、文字を見ないで言う練習に変わります。声に出す工程から、覚える工程へ渡る橋です。手がかりを動作から絵に変えれば、絵を見て言うになります。
決まりは1つで、動作は意味に合っていることです。リズムをとるだけの動作や、笑いをとるための本文と関係のない動作は、意味の手がかりになりません。
手順
- 本文の意味をつかみ、音読の型のうち追い読みやバズ音読で読めるようになってから置きます。
- ペア(または3〜4人のグループ)で、動作をつける所を決めます(3分)。本文の中から5〜8か所を選び、意味のかたまりごとに1つの動作です。教科書のその語の上に、小さく印をつけておきます。
- 2〜3組に前で動作を見せてもらい、意味に合っているかをクラスで確かめます。合わない動作は、ここで直します。
- 動作をつけて、ペアで声をそろえて2回読みます。動作は、そのかたまりを言っている間にします。
- 動作だけで言います(3分)。Aは本文を見ながら動作だけをし、Bは本文を見ないで、その動作の文を言います。言えなかった文は、Bが教科書で確かめます。交代します。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 動作を決めるとき | Choose a gesture for each part. It must match the meaning. 意味に合う動作を |
| 動作を見せてもらうとき | Show us your gestures. Do they match the meaning? |
| 動作をつけて読むとき | Read together and do the gestures. |
| 動作だけで言うとき | A, do the gestures only. B, say the sentences. Don't look at the textbook. |
動作を決める話し合いは、日本語でかまいません。「ここは走る? 歩く?」と相談している間に、2人は本文をもう一度読んでいます。
見本
- It was raining hard after school. Mika didn't have an umbrella, so she waited at the school gate.
- Then Sota came out. He was in her class, but they didn't talk much.
- He had a big blue umbrella. He looked at the rain, and then he looked at Mika.
- “Here,” he said. He gave her the umbrella and ran into the rain.
- The next morning, Mika went to Sota's desk. “Thank you for yesterday. Here's your umbrella.”
- Sota smiled, but his voice sounded strange. He had a cold.
- “No problem,” he said. “I like rain.”
- Mika knew that wasn't true. She took a small bag out of her pocket. There were three lemon candies in it.
- “For your throat,” she said. This time, Sota didn't say anything, but his face turned a little red.
この物語で、動作をつける所の例です。
| 行 | 英語のかたまり | 動作 |
|---|---|---|
| 1 | raining hard | 両手の指を上から下へ速く動かす(強い雨) |
| 1 | waited at the school gate | 腕時計を見る |
| 3 | looked at the rain, and then he looked at Mika | 外へ顔を向け、それから横へ顔を向ける |
| 4 | gave her the umbrella | 両手で傘を手渡す |
| 4 | ran into the rain | その場で走る |
| 6 | his voice sounded strange | のどに手を当てて、小さくせきをする |
| 7 | I like rain | 親指を立てて、作り笑い |
| 8 | three lemon candies | 指で3を示す |
| 9 | his face turned a little red | ほおに両手を当てる |
ペアで動作が分かれやすいのは、7行目の I like rain です。親指を立てるだけのペアもあれば、作り笑いまでつけるペアもあります。ソウタが本当は雨を好きではないことは、8行目の Mika knew that wasn't true. から分かります。作り笑いを選んだペアは、そこまで読んでいます。親指だけのペアには「ソウタは本当に雨が好き?」と聞き返します。動作の違いが、そのまま読みの違いとして目に見えるのが、この活動のおもしろいところです。
3行目は、2つの動作の順番に意味があります。外を見てから横のミカを見るのは、and then の順番そのままです。順番を逆にしたペアは、and then を読み飛ばしています。
動作だけで言う段で詰まりやすいのは、8行目です。指で3を見せると、three lemon candies までは出てきますが、There were と in it が抜けて、文になりません。動作が思い出させるのは内容を運ぶ語で、文の形を作る語までは思い出させないからです。ここで詰まった文は、頭文字だけ本文で文の形を入れ直すと、覚える工程へつながります。
変化をつける
- やさしくする: 先生が動作を決めて、全員で同じ動作をつけて読みます。中1の前半や、初めてこの活動をするクラスは、ここから始めます。動作をつける所も4〜5か所に絞ります。
- むずかしくする: 文法の動作を足します。過去形の動詞では親指で肩の後ろを指す、didn't では手を小さく横にふる、のように決めておくと、動作をしながら時制や否定の形に目が向きます。
- 対話文で: 気持ちを表す動作を中心にします。日本が負けたと話す But Japan lost. で肩を落とす、のような動作です。話し手を分けて読む役割読みと組み合わせられます。
- 高校では: 発表のジェスチャーにつなげます。数を指で示す、2つを比べるときに両手を左右に分ける、大事な語で手のひらを前に出す、のように、聞き手に伝えるための動作を本文で練習してから、自分のスピーチや発表で使わせます。
つまずきと手当て
- はずかしがって動かない: 最初は全員で一斉に、先生と同じ動作をします。全員が動いていれば、1人だけ目立つことはありません。慣れてからペアにします。座ったまま、手と顔だけでできる動作にしておくのも手です。
- 動作がばらばらで、意味とつながっていない: ペアの相手に「その動作で、どの文か分かる?」と当てさせます。当てられない動作は、意味に合っていないしるしです。6行目の his voice sounded strange で耳をふさぐ動作が出たら、「声が大きかったの?」と聞き、次の He had a cold. に目を向けさせます。
- 時間がかかる: 動作をつけるのは、話の流れを運ぶ大事な行だけにします。全部の行につける必要はありません。決める時間を3分と区切り、決まらない所は先生の動作を使います。
出どころ
動作と言葉を結びつける考え方は、TPR(全身反応教授法)にもつながります。TPR は、アメリカの心理学者ジェームズ・アッシャーが1960年代に示した教授法で、先生の英語の指示を聞いて体で応じながら、英語を理解していきます。このレシピは、指示を聞いて動くのではなく、本文に自分たちで動作をつける活動なので、TPR そのものではありません。近いのは、体の動きと英語をいっしょに覚えるという考え方の部分です。体の動きで本文を表す活動は、田尻悟郎『英語教科書本文活用術!』(教育出版、2014)の第1章でも、理解と暗記の両方のまとまりで扱われています。このレシピの3つの段(動作を決める→つけて読む→動作だけで言う)と、見本の動作の表は、このサイトで作ったものです。