ねらい
事実を問う発問(Who? What? When?)は、本文の該当する文を探して写せば答えられます。読まなくても、探せば正解できてしまいます。行間の推理は、答えが本文のどこにも書いていない問いを出し、そのかわりに「どの文からそう言えるか」を証拠として言わせる活動です。
答えを支える文を探すには、本文を前後のつながりで読むしかありません。1文だけを見ても答えは出ず、2つ3つの文を組み合わせて、はじめて言えることがあります。ここで、文の意味を足し算する読み方が起きます。発問の3層でいえば2段目の推論発問にあたりますが、この活動の芯は「証拠の行番号を必ず添える」という1つの決まりです。決まりがあるので当てずっぽうの答えが出にくく、違う答えが出たときも、証拠どうしで比べられます。
手順
- 本文の内容をひととおりつかんだあと(事実の発問や音読のあと)に置きます。初めて読む段階では使いません。
- 先生が推理の問いを3つ出します。答えは本文に書いていないけれど、証拠の文が2つ以上ある問いを選びます。
- 1人で1分、答えと証拠の行番号をメモします。「答え+行番号」の形で書かせます。
- ペアで2分、答えと証拠を比べます。証拠が違えば、どちらの読みが強いかを話し合います。
- 全体では、答えより先に証拠を聞きます。「何行目で分かった?」と聞き、答えはそのあとで確かめます。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 問いを出すとき | The answer is not in the text. But you can find clues. |
| 証拠を求めるとき | Which line tells you that? 何行目からそう言える? |
| 答えが割れたとき | Two answers. Let's look at the clues. どっちの証拠が強い? |
| 証拠が1つだけのとき | Good guess. Can you find one more line? |
考えるのは日本語でかまいません。答えを英語で言えなくても、証拠の文を英語のまま指せれば、本文は読めています。答えを英語で言わせるのは、活動に慣れてからで十分です。
見本
- Ms. Green:Good morning, Riku. You look sleepy.
- Riku:Good morning, Ms. Green. I went to bed at two last night.
- Ms. Green:At two? Were you studying for the test?
- Riku:No. I was watching a soccer game on TV. Japan played Brazil.
- Ms. Green:Oh, I watched it, too! What a game!
- Riku:But Japan lost. I was so sad.
- Ms. Green:Me, too. But the last goal was beautiful.
- Riku:Yes! Number 10 was amazing. I want to play like him someday.
- Ms. Green:Then don't sleep in class today. You have practice after school, right?
- Riku:Right. I'll try!
この対話文で出せる推理の問いと、証拠の例です。
| 推理の問い | 答えの例 | 証拠の行 |
|---|---|---|
| いつの会話? | 月曜日の朝、授業の前 | 1行目 Good morning と、9行目 in class today |
| リクは何部? | サッカー部らしい | 8行目 I want to play like him と、9行目 You have practice after school |
| グリーン先生もねむいかもしれない。なぜ? | 先生も同じ試合を夜おそくまで見ていた | 5行目 I watched it, too と、2行目の at two |
| 最後のゴールを決めたのはどっちのチーム? | 日本の10番らしい | 7行目 the last goal was beautiful と、8行目 Number 10 was amazing |
最初に出すなら、3行目の test から「近いうちに何がある?」のような、1行で答えられる問いが向いています。全員が手をつけられる入口になり、そのあとで証拠が2つ要る問いに進めます。
最後の問いは、答えが割れやすい問いです。「日本は負けたのだから、ゴールはブラジルでは?」という読みも出ます。そのときは、リクが10番のようにプレーしたいと言っている8行目を指し、「リクがあこがれている選手がブラジルの選手だったら、この会話はどう読める?」と返します。証拠があるかぎり、どちらの読みも認めます。行間の推理は、正解を1つに絞る活動ではなく、証拠で読みを支える活動です。
変化をつける
- やさしくする: 問いに選択肢をつけます(いつの会話? ア 金曜の夜 イ 月曜の朝 ウ 土曜の昼)。証拠は1つでよいことにします。中1の前半は、日本語の問いと日本語の答えで十分です。
- むずかしくする: 推理の問いを生徒に作らせます。「答えが本文に書いていなくて、証拠が2つある問い」を1人1問作り、ペアで出し合います。作る側に回ると、本文を前後のつながりで読み直すことになります。
- 物語で: 登場人物がなぜそうしたか(行動の理由)を問います。理由が本文に書いていない場面ほど、推理の問いになります。
- 高校では: 物語や評論の段落で、筆者が書かなかったことまで問いを広げます(なぜここで話が終わるのか、なぜこの例を選んだのか)。答えは英語で1文、証拠は段落と行で示させます。
つまずきと手当て
- 本文に書いてあることを答えてしまう: 事実の発問との違いが伝わっていません。最初に「書いてあることを答えたら0点、書いていないことを証拠つきで当てたら1点」と、ゲームの決まりとして示します。
- 想像だけで答える(証拠がない): 「おもしろい。で、何行目?」と必ず行番号を聞き返します。証拠のない答えは板書しない、と決めておくと、すぐに行番号を添えるようになります。
- 先生の想定と違う答えが出て困る: 証拠があれば認めます。推理の問いの答えは1つとは限りません。定期テストに出すときは、答えを書かせるより、証拠になる行を選ばせる形にすると採点が割れません。
出どころ
本文に書かれていないことを推し量らせる問いは、推論発問(inferential question)として、読解の指導で長く使われてきた考え方です。本文の行間や文の裏にある意味を推測する活動は、田尻悟郎『英語教科書本文活用術!』(教育出版、2014)でも第1章の最初の項目として扱われています。このレシピの「証拠の行番号を必ず添える」決まりと、問いと答えの例は、このサイトで作ったものです。