ねらい
同じ「おはよう」でも、図書館ならささやき声になり、電車のドアが閉まりかけた駅のホームなら早口になります。人は、場面に合わせて声の大きさや言葉を変えて話しています。場面チェンジ!は、教科書の対話文を、カードで引いた別の場面で演じ直す活動です。
せりふは本文のままが基本で、変えてよいのは2行まで(言いかえるか、足すか)と決めます。図書館なら Shh. を足す、電波の悪い電話なら聞き返しを足す、のように、場面に合う1行を考えるのが仕事です。見ている側は、どの場面カードを引いたかを当てます。声の大きさと足した1行だけで当てられたら、場面に合わせて英語を変えられたしるしです。
学習指導要領の外国語は、目的や場面、状況などに応じて英語を使うことを求めています(目的・場面・状況)。教科書の対話文は、場面が1つに決まっています。場面だけを入れかえると、同じ会話を言い分ける必要が生まれます。気持ちカード音読がせりふを変えずに気持ちだけを変える活動なら、こちらは場面に合わせて言葉も変えます。
手順
- 対話文を、役ごとに見ないで言えるくらいまで練習してから置きます。全員で1回、ふつうに読みます。
- ペアで場面カードを1枚引きます。カードはほかのペアに見せません。2人で3分、その場面でどう言い方が変わるかを相談します。
- ペアで4分、変える行(2行まで)と、声の大きさ・速さを決めて練習します。同じ行をもう一度言うのは、変えた数に入れません。変えた行には、教科書に下線を引いておきます。
- となりのペアと4人組になり、交代で演じます(4分)。見ているペアは、どの場面かを当て、決め手になった声か1行を言います。
- 全体で1〜2組が演じ、クラス全員で場面を当てます(3分)。足した1行を板書し、ほかの場面でも使えるかを話します。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 始めるとき | Same conversation, different place. Pick a card. Don't show it. |
| 決まりを示すとき | You can change or add up to two lines. Keep all the other lines. |
| 見ているペアに | Where are they? How do you know? |
| まとめで | Which new line can we use in other places? |
場面カードは、次のような物から6枚ほど作ります。図書館(小声で話す)/駅のホーム、電車があと30秒で出る/電波の悪い電話/相手が初めて会う校長先生/2人とも傘がなく、雨の中/教室のうしろで、授業中。場所だけでなく「急いでいる」「聞こえにくい」のような状況を1つ入れると、言い方の変え方がはっきりします。
見本
- Ms. Green:Good morning, Riku. You look sleepy.
- Riku:Good morning, Ms. Green. I went to bed at two last night.
- Ms. Green:At two? Were you studying for the test?
- Riku:No. I was watching a soccer game on TV. Japan played Brazil.
- Ms. Green:Oh, I watched it, too! What a game!
- Riku:But Japan lost. I was so sad.
- Ms. Green:Me, too. But the last goal was beautiful.
- Riku:Yes! Number 10 was amazing. I want to play like him someday.
- Ms. Green:Then don't sleep in class today. You have practice after school, right?
- Riku:Right. I'll try!
この対話文で、3つの場面カードに合わせて変えた行の例です。
| 場面カード | 変えた行(2行まで) | 声と速さ |
|---|---|---|
| 図書館 | 8行目の Yes! のあとに、グリーン先生の Shh. を足す/5行目を I watched it, too. だけにする | ささやき声で、ゆっくり |
| 駅のホーム(電車があと30秒) | 9行目を Don't sleep in class! Bye! に/10行目を I'll try! Bye! に | 早口で、最後は走りながら |
| 電波の悪い電話 | 1行目の You look sleepy. を You sound sleepy. に/2行目のあとに Sorry? Can you say that again? を足す(リクは2行目をもう一度言う) | 大きめの声で、聞き返しのあとはゆっくり |
図書館では、5行目の Oh, I watched it, too! What a game! のような大きな感動の言葉が言えません。I watched it, too. だけを小声で言うと、それだけで場所が伝わります。
電話の例は、1行目の変え方に注目です。電話では相手の顔が見えないので、You look sleepy. とは言えず、You sound sleepy. になります。場面を変えると、本文では当たり前だった1語が、その場面では使えなくなる。それに気づくことが、この活動のいちばんの読みです。足した Sorry? Can you say that again? は、聞こえなかったときの聞き返しで、ほかの場面でもそのまま使える1行です。まとめで板書しておくと、次の即興のやり取りで使えます。
駅のホームでは、9行目と10行目を短く切っています。急いでいる人は、長い文を言わない。この判断ができたことが、場面に合わせて英語を選んだということです。
変化をつける
- やさしくする: 変えるのは声の大きさと速さだけにして、せりふは本文のままで演じます。見ている側は、声だけで場面を当てます。
- むずかしくする: 場面カードを2枚引かせます(図書館で、しかも急いでいる)。足す行が2つの場面の両方に合わないといけないので、言い方を選ぶ幅が広がります。
- 本物の場面で: 最後の1枚に、生徒が本当に出会いそうな場面(ALT と廊下ですれちがう・ALT とビデオ通話で話す)を入れます。2人の関係は本文のままにします。足した1行が、そのまま教室の外で使える1行になります。
- 高校では: 相手との関係を変えるカード(友達・先生・初めて会う大人)を入れて、ていねいさの度合いを変えさせます。Can you ...? と Could you ...? のような言い分けが、場面の中で出てきます。
つまずきと手当て
- 声や動きだけで当てさせてしまう: 足した1行が場面に合っているかを、見ているペアに必ず言わせます。声の大きさだけで当てられたときは、英語の1行を足してもう一度演じさせます。
- 2行を超えて作り変えてしまう: 決まりを「本文の行は残す」にして、変えた行に下線を引かせます。変えすぎると、本文の会話の練習でなくなります。
- 場面を思いつかない: カードは先生が用意し、引くだけにします。慣れたら、生徒が作ったカードを足していきます。
出どころ
同じ会話を、場面や相手の条件を変えて演じさせる方法は、ロールプレイや演劇の手法を使った英語の授業で広く行われてきました(ロールプレイ・スキット)。この活動では、それを教科書の対話文に使い、目的や場面、状況などに応じて言い方を変える練習にしました。2行までの決まり、場面カードの例、見本の表は、このサイトで作ったものです。