ねらい
本文を、自分より下の学年が読める英語に書きかえて、本当にその学年に読んでもらう活動です。中2なら中1に、中3なら中1や小学6年に向けて書きます。中身は変えず、英語だけをやさしくします。
書きかえるには、まず読み手が知らない所を見つけなければなりません。中1はまだ比べる文(faster than)を習っていない、動名詞の主語(Walking is ...)も知らない。では、同じ意味をどう言えばよいか。言いかえの答えは本文のどこにもないので、生徒は本文の意味をつかみ直し、知っている英語で組み立て直します。わかりやすく書くことは、わかっていないとできません。
この活動の芯は、読み手が実在することです。教室の中で「1年生向けのつもりで」書くのとくらべて、本当に1年生が読むと決まっていれば、語を選ぶ理由がはっきりします。日本には、外国から来た人に情報を届けるための「やさしい日本語」という考え方があります。相手が分かる言葉で言い直すのは、教室の外でも使われている、本物の書く仕事です。
手順
- 本文の内容をつかみ、音読を重ねたあと、単元の終わりのほうに置きます。読み手の学年を決めます(中2なら中1)。読み手の先生に、次の授業で5分もらえるかを先に相談しておきます。
- ペアで4分、本文の中で、読み手がまだ習っていない文法と語に印をつけます。読み手の学年の教科書を開いて、習った文法と語を確かめながら印をつけます。
- ペアで9分、印の所を1文ずつ書きかえます。決まりは3つです。中身は変えない。1文を短く分けてよい。どうしても要る語は残し、絵か短い説明を添える。
- となりのペアと交換して読みます(4分)。読む側は読み手の学年のつもりで読み、分からない所に印をつけて返します。
- 印の所を直し、読み手に答えてもらう問いを3つ、英語で付けます(3分)。
- 読み手の学年の授業で読んでもらいます。答えが戻ってきたら、答えられなかった問いにつながる文を、もう一度直します。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 始めるとき | First-year students will read your version. Same meaning, easier English. |
| 印をつけるとき | Which words and grammar don't they know yet? Check their textbook. |
| 書きかえるとき | Keep the meaning. You can cut a long sentence into two. |
| 仕上げで | Add three questions for your readers. |
見本
- We asked 32 students in our class, “How do you come to school?”
- Sixteen students walk. Walking is the most popular way.
- Ten students come by bike. Most of them live more than two kilometers away from school.
- Four students take a bus, and two students come by car.
- We also asked, “What do you like about your way?”
- Many walkers said, “I can talk with my friends.”
- Bike riders said, “It's faster than walking.”
- Bus riders said, “I can read a book on the bus.”
- But some students said, “I want to come by bike, but the hill near our school is too steep.”
- What can we do about the hill? Please tell us your ideas.
この説明文(中2程度)を、過去形を習ったあとの中1(3学期ごろ)の読み手に向けて書きかえた例です。中1がまだ習っていない最上級・比べる文・動名詞の主語・too +形容詞を、知っている形に言いかえています。
| 行 | 元の文 | 書きかえた文 | 言いかえた所 |
|---|---|---|---|
| 2 | Walking is the most popular way. | That is the No. 1 way! | 動名詞の主語と最上級 |
| 3 | Most of them live more than two kilometers away from school. | Most of them live far from school.(most=ほとんど)Their homes are 2 km or more away. | 長い1文を2文に分けた(most には短い説明) |
| 7 | Bike riders said, "It's faster than walking." | Bike riders said, "A bike is fast. I can come to school fast." | 比べる文 |
| 9 | I want to come by bike, but the hill near our school is too steep. | I want to come by bike, but I can't. The hill near our school is very steep.(坂の絵) | too +形容詞(can't と very の2文に分けた) |
1行目・4〜6行目・8行目・10行目は、中1でもそのまま読めるので変えていません。全部を書きかえる必要はなく、読み手がつまずく所だけを直します。
9行目は、too steep を「来られない」と「とても急」の2文に分けました。want to は小学校の I want to go to ~. から使っているので、そのまま残しています。steep は中1が知らない語ですが、坂の問題を言うのに欠かせないので、残して坂の絵を添えました。どこまでなら中身を変えずに言えるかをペアで話し合うこと自体が、本文の読み直しになります。
読み手への問いは、本文の中身がそのまま届いたかを確かめる問いにします。How many students walk?/Why do bike riders like their way?/What is the problem for some students? の3つが答えられれば、書きかえは届いています。答えられなかった問いがあれば、その答えにつながる文の書きかえを見直します。
変化をつける
- やさしくする: 書きかえる文を、先生が3〜4文選んで示します。言いかえの例を1つ全員で作ってから、残りをペアで書きます。
- むずかしくする: 読み手を小学6年にします。小学校で習う語と表現(I like ... / I can ... / There is ...)だけで書くので、言いかえの幅が大きくなります。
- 物語で: 時の流れが分かる語(Then・The next morning)は残し、気持ちを表す語を、読み手が知っている語(happy・sad・surprised)に言いかえます。せりふは短く切ると読みやすくなります。
- 高校では: 中学3年生に向けて、本文の要点を100語ほどにまとめ直して書きます。要約と言いかえを同時に行うので、本文の骨組みと語の選び方の両方が問われます。
つまずきと手当て
- 中身まで変えてしまう: 書きかえる前に、本文の中身を日本語で1行ずつ書き出しておき、書きかえたあとに1行ずつ照らし合わせます。消えた中身があれば、どこかに戻します。
- 何でも短く切って、つながりが消える: 文と文をつなぐ語(so・but・because)は、読み手が知っていれば残すことにします。9行目の but が消えると、「来たいのに来られない」の向きが分からなくなります。
- 読み手の学年が習った文法が分からない: 読み手の学年の教科書の、巻末の文法のまとめを見せます。小学生向けなら、小学校で使う表現の一覧を先生が用意します。
出どころ
学ぶ人の段階に合わせて英文を言いかえる考え方は、学習者向けに語と文法をしぼって書き直した段階別の読み物(graded readers)で長く使われてきました(多読)。日本の「やさしい日本語」も、相手に届く言葉で言い直すという同じ考え方です。この活動では、それを生徒が書く側に立って行い、下の学年という本物の読み手に届ける形にしました。3つの決まり、問いで届いたかを確かめる流れ、見本の書きかえは、このサイトで作ったものです。