ひとことで言うと
多読は、辞書を引かずにすらすら読めるやさしい英語の本を、たくさん・楽しく読むことで、英語の力を伸ばす読み方と、その指導です。1文ずつ構造を確かめて読む精読の対語で、量を読むことで語彙・語順・読む速さが自然に身につくことをねらいます。学校では、学級文庫と帯の10分で始めるのが現実的な形です。
出どころ
英語圏の読みの研究で extensive reading(精読 intensive reading の対語)として整理された考え方です。日本では、辞書を引かない・分からないところは飛ばす・合わないと思ったらやめる、という「3原則」で知られる実践(酒井邦秀氏ら)が2000年代に広まり、中学・高校の学校図書館や英語科で取り入れられました。学習指導要領の「読むこと」の目標を支える方法の1つで、本文にある語ではありません。
授業での実際の使い方
| 順 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1 | 本をそろえる。段階別読み物(Graded Readers)と絵本を、いちばんやさしい段から。1クラス40冊で回る | 学級文庫・図書館 |
| 2 | 帯の10分を「読む時間」にする。全員が黙って読む。先生も読む | 週2回 |
| 3 | 読んだ本の題名と語数を記録用紙に書く。感想は1行でよい | 毎回 |
| 4 | 月に1回、好きだった本を1冊、隣の人に1分で紹介する | 月1 |
本の選び方は「1ページに分からない語が2〜3語まで」です。それより多い本は、その生徒にはまだ早いので段を下げます。先生が言う言葉は「分からないところは飛ばしていい」「つまらなかったらやめていい」の2つで、この2つを言わないと生徒は辞書を引き始めて止まります。
本の選び方(YL と語数)
本をそろえるときと、生徒が次の本を選ぶときの物差しは、YL と語数の2つです。
| 物差し | 何か | 使い方 |
|---|---|---|
| YL(読みやすさレベル) | 日本人の読み手にとっての読みやすさを、0.0〜9.9の数で示した目安。SSS英語多読研究会が作ったもので、数が小さいほどやさしい | 最初は YL 0台の絵本や、段階別読み物のいちばん下の段から。同じ YL の本を何冊か止まらずに読めたら少し上げ、止まる本が続いたら下げる |
| 語数 | 1冊に使われている英語の語の数 | 読んだ量の記録に使う。冊数より正確な量の物差しで、累計が見えると続く |
本ごとの YL と語数は、多読のブックガイドや、日本多読学会の「多読図書YL・語数リスト」で引けます。段階別読み物は出版社ごとに段の呼び方(Starter・Level 1 など)が違うので、出版社をまたいで棚を並べるときに YL が役に立ちます。
ただし YL は目安で、同じ YL でも話題や絵の多さで読みやすさは変わります。最後は、上の「1ページに分からない語が2〜3語まで」の手ざわりで決めます。記録用紙は、題名・YL・語数・累計・ひとこと(1行)の5つの欄で足ります。
よくある誤解
- 難しい本を根気で読ませることではありません。やさしい本を大量に、が本体です。教科書より易しい本から始めます。
- 感想文や内容の問題を課すと、多読は続きません。記録は題名と語数だけにします。
- 精読の代わりではありません。授業の読解(精読)と、帯の多読は別の時間で、両方あって伸びます。
校種別の違い
| 校種 | 形 |
|---|---|
| 小学校 | 絵本の読み聞かせと、絵を見て言う活動が多読の入口。文字の読みは求めない |
| 中学校 | 中2から学級文庫と帯の10分で。段階別読み物のいちばんやさしい段から |
| 高校 | 図書館の多読コーナーと語数の記録。年間10万語を目安にする学校もある |
| 塾 | 家庭学習の指示として。本の段と語数を保護者に伝える |
この用語が出てくる教材と記事
- 多読指導の始め方。学級文庫ゼロから「英語を読む習慣」を作る手順を書いた本編です。
- 速読ラダー(中1)。タイムを測って読む5分読解で、多読に入る前の「読む速さ」を段で上げます。
- 初見読解・速読ラダー(高校)。高校の段階別の読み物です。
- 量の考え方はインプットとアウトプット、まとまりで読む技術はスラッシュリーディングへ。