ねらい
人物の行動や本文の主張を「裁判」にかけ、クラスを検察・弁護・裁判官に分けて話し合う活動です。訴えは1文です(例: ソウタが傘を渡して、雨の中を走って帰ったのはよくなかった)。検察は訴えを支える理由を、弁護は反対の理由を、本文の行を証拠に英語で言います。裁判官は、どちらの証拠が強かったかで判決を出します。
証拠は本文の行番号だけ、と決めるのがこの活動の芯です。同じ行が、両方の側の証拠になることがあります。6行目の He had a cold. は、検察には「無理をした」証拠になり、弁護には「かぜをひいてでも傘を渡した」証拠になります。同じ本文が立場によって違って読めることを、生徒は弁論の中で経験します。
本文の中身を確かめる行間の推理のあとに置くと、推理した読みを、今度は相手を説得するために使う段になります。
手順
- 本文の内容をつかんだあとに置きます。先生が訴えの1文を板書し、クラスを検察・弁護・裁判官の3つに分けます(4人の班ごとに役を割り振ってもよい)。
- 5分、検察と弁護は、理由を2つと証拠の行を準備します。理由は I think ... because line ... says ... の形で書きます。裁判官は、両方に聞く質問を1つ準備します。
- 弁論(5分)。検察が理由を言い、弁護が理由を言います。最後に1回ずつ、相手の証拠への反論を言います。
- 裁判官が話し合って判決を出し、理由を言います(3分)。判決は、どちらが正しいかではなく、どちらの証拠が強かったかで決めます。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 始めるとき | The court is now open. Was Sota right? |
| 証拠を準備するとき | Use lines from the text as evidence. Give the line number. |
| 反論のとき | Do you agree with their evidence? Why or why not? |
| 判決のとき | Judges, which side had stronger evidence? |
見本
- It was raining hard after school. Mika didn't have an umbrella, so she waited at the school gate.
- Then Sota came out. He was in her class, but they didn't talk much.
- He had a big blue umbrella. He looked at the rain, and then he looked at Mika.
- “Here,” he said. He gave her the umbrella and ran into the rain.
- The next morning, Mika went to Sota's desk. “Thank you for yesterday. Here's your umbrella.”
- Sota smiled, but his voice sounded strange. He had a cold.
- “No problem,” he said. “I like rain.”
- Mika knew that wasn't true. She took a small bag out of her pocket. There were three lemon candies in it.
- “For your throat,” she said. This time, Sota didn't say anything, but his face turned a little red.
訴え「ソウタが傘を渡して、雨の中を走って帰ったのはよくなかった」での、弁論の例です。
| 側 | 理由 | 証拠の行 |
|---|---|---|
| 検察 | Sota got a cold. He didn't take care of himself. | 6行目 He had a cold. |
| 検察 | He said, "I like rain," but it wasn't true. | 7〜8行目 |
| 弁護 | Mika didn't get wet. She used his umbrella. | 4行目と5行目(翌朝、傘を返している) |
| 弁護 | Sota was not sorry. His face turned a little red. | 9行目 |
検察の2つ目と弁護の2つ目は、どちらもソウタの気持ちを証拠にしています。I like rain. がうそだったことは、検察にとっては「無理をした」証拠ですが、弁護から見れば「ミカに気をつかわせないためのうそ」とも読めます。反論の段で、同じ8行目をめぐって言い合いになると、行間の読みを英語で戦わせる時間になります。
判決の理由も、証拠で言わせます。「9行目で顔が少し赤くなったのは、ミカの気持ちがうれしかったから。ソウタは傘を渡したことを悔やんでいない。だから弁護の勝ち」のように言えれば、判決そのものが本文の読みのまとめになっています。
変化をつける
- やさしくする: 理由は日本語で準備し、英語で言うのは証拠の行の英文だけにします。行の英文を声に出して読む練習にもなります。
- むずかしくする: 証人の役を足します。証人は人物になって、検察と弁護の質問に答えます(ホットシートの形)。
- 説明文で: 本文の主張を訴えにします(「歩いて学校に来るのがいちばんよい」)。証拠は本文の数字と人の声で、筆者の主張と事実を分けることになります(事実と意見を分ける)。
- 高校では: 訴えを生徒に立てさせます。両方の側に証拠が見つかる訴えでないと裁判にならないので、本文の論点を見つける練習になります。
つまずきと手当て
- どちらかの側に意見が集まる: 役は自分の意見と関係なく、くじで決めます。自分と反対の側の理由を考えることが、この活動の練習です。
- 証拠なしの言い合いになる: 行番号のない理由は、裁判官が「却下」と言う決まりにします。
- 英語が出てこない: 理由の型(I think ... because line ... says ...)を板書しておき、行の英文をそのまま読んでよいことにします。
出どころ
模擬裁判は、法教育や社会科の授業で、立場を分けて根拠をもとに話し合う方法として行われてきました。英語の授業では、ディベートやロールプレイの形で、本文の論点を話し合う活動が使われています。この活動の、本文の行番号だけを証拠にする決まり、検察・弁護・裁判官の分け方、見本の弁論の表は、このサイトで作ったものです。