パフォーマンステストの対策は、生徒が家でがんばるものと思われがちです。けれど「来週テストだから練習しておいてね」と言ったとき、実際に練習できるのは、練習のしかたを知っている一部の生徒だけです。残りの生徒は原稿を何度も黙読するか、何もしないまま当日を迎えます。
点に差がつくのは英語の力の差より、練習の手順を知っているかどうかの差であることが多いです。だから対策は、先生が授業の中で渡すものだと考えます。この記事は、その渡し方を時期と型に分けてまとめたものです。課題カード・ルーブリック・採点表のそろった実物はパフォーマンステストの教材一覧にあります。
対策の出発点は、ルーブリックを先に配ること
いちばん効く対策は、評価の基準(ルーブリック)を練習の前に生徒へ渡すことです。何をしたら何点かが分かれば、生徒は自分で練習の的をしぼれます。
渡すときは、表を配るだけで終わらせず、次の2つをします。
- 先生が「3点の例」と「1点の例」を実演して見せる。同じ内容を、目を原稿に落としたまま小さな声で言う版と、相手を見て1文足す版でやると、観点の言葉が具体的な姿になります。
- 生徒の言葉に直した「自分用チェック」を3つだけ作らせる(例: 相手の目を見る/理由を1つ言う/聞かれたら1文足して返す)。観点の文言をそのまま覚えさせるより、練習中に思い出せます。
基準を見せると「テストのための練習になる」と心配されることがあります。けれど、話すことの評価で基準を隠すと、点が動くのは英語の力ではなく、何を求められているかを察する力になります。基準を見せて、その基準で練習させるのが公平です。
3週間前・1週間前・前日に、授業の中でやること
練習を家に任せず、授業の帯の時間(5〜10分)に組み込みます。毎回やることは小さく、回数を多くします。
| 時期 | 授業の中でやること | 生徒が持ち帰るもの |
|---|---|---|
| 3週間前 | 課題カードとルーブリックを配り、先生の実演を見せる。言いたいことを日本語のメモで書き出す | 自分用チェック3つ・メモ |
| 2週間前 | メモを英語のキーワードにする(文は書かない)。ペアで1回ずつ言ってみる | キーワードのメモ |
| 1週間前 | ペアを替えて3回言う。聞き手は自分用チェックで○をつけ、1つだけ伝える | ペアからの一言 |
| 3日前 | タブレットで自分の発表を録音・録画して、1回だけ見返す | 直すところ1つ |
| 前日 | 本番と同じ時間で通す。予想される質問に答える練習を1往復だけ | なし(休む) |
ポイントは、言う回数をペアで稼ぐことです。家で1人で練習しても、声に出して相手に言う回数は増えません。授業の中なら、5分で3人に言えます。
型ごとの練習のしかた
パフォーマンステストは、型によって練習のしかたが違います。同じ「練習しよう」でも、何を繰り返すかを型ごとに分けて伝えます。
スピーチ・発表(自己紹介・将来の夢・おすすめ)
- 原稿を丸ごと覚えさせない。キーワードのメモ(1文につき2〜3語)から文を作って言う練習にします。暗記した原稿は、1語つまると最後まで止まります。
- 最初の1文と最後の1文だけは、覚えてよいことにします。始まりと終わりが決まっていると、途中で迷っても戻れます。
- 聞き手を見る練習は、メモを机に置き、文の終わりで顔を上げる、と動作で決めます。
キット: はじめての自己紹介スピーチ(中1)・将来の夢スピーチ(中2)・おすすめプレゼンテスト(中2)・3年間スピーチ(中3)
やり取り(インタビュー・ロールプレイ・チャット)
- 答えを覚えるのではなく、聞かれたら1文足す練習をします。Do you like sports? に Yes, I do. で終わらず、I like tennis. I play it every Sunday. まで言う。この「1文足す」がやり取りの観点の中心です。
- 聞き返しと、考える時間のつなぎを先に教えます。Pardon?/Could you say that again?/Well, let me see. の3つを言えるだけで、沈黙で点を落とす生徒が減ります。
- 相手に聞き返す1問(How about you?)を必ず入れる、と決めておきます。
キット: 英語インタビューテスト(中1)・きのうトーク1分チャット(中1)・道案内ロールプレイテスト(中2)・週末アポとり対話テスト(中2)・ペア・ミニディスカッション(中3)
音読・リテリング
- 音読は、ペアで1文ずつ交代に読むところから始め、句の区切り(スラッシュ)を自分で入れさせます。区切りが入ると、意味のまとまりで読めるようになります。
- リテリングは、本文を見ずに絵とキーワードだけで話す練習です。本文の文を思い出そうとするより、自分の言える文で言い直してよい、と伝えます。
キット: 教科書音読テスト(中1)・教科書リテリングテスト(中2)
即興・写真描写・面接
- 即興は、話す順番の型を1つだけ持たせます。「結論→理由→例→もう一度結論」の4文です。お題が何でも、この順に言えば30秒はもちます。
- 写真描写は、場所→人→していること→自分の考え、の順に目を動かす練習をします。There is/are と現在進行形が中心です。
- 面接は、聞かれる質問がある程度決まっています。予想される質問の一覧を先に渡し、答えを書かせるのではなく、ペアで言い合う回数を稼ぎます。
キット: 即興1分トーク(お題ガチャ)・写真描写テスト・英語面接テスト(いずれも中3)
よくあるつまずきと手当て
| つまずき | 起きていること | 手当て |
|---|---|---|
| 原稿を読み上げるだけになる | 原稿を文で書いて覚えようとしている | 文の原稿を回収し、キーワードのメモだけで練習させる |
| 1語つまると止まる | 暗記の順番に頼っている | 最初と最後の1文だけ覚え、途中はメモから作る |
| 質問されると黙る | 答えを1つしか用意していない | 「1文足す」と聞き返しの3つの表現を練習する |
| 声が小さい | 聞き手との距離が近すぎる練習しかしていない | ペアの距離を教室の端と端にして1回言わせる |
| 緊張で頭が真っ白になる | 本番と同じ条件で通したことがない | 前日に本番と同じ時間で1回通す。順番を事前に知らせる |
緊張の強い生徒には、順番を先に伝える、先生と1対1の形にする、メモを見てよい時間を決める、などの調整ができます。調整した場合も、ルーブリックの観点は変えずに、どこを調整したかを記録しておくと、評価の説明がしやすくなります。
よくある質問
対策の時間を授業で取る余裕がありません。
3週間で5〜10分を6回ほどです。新しい活動を足すのではなく、帯活動やスモールトークの時間をテストの型に寄せるだけで足ります。家で練習してこない生徒の分を本番で待つ時間を考えると、授業の中で回したほうが全体の時間は短くなります。
原稿を書かせないと、何も言えない生徒がいます。
書かせてかまいません。ただし、書いた原稿を練習の途中で回収し、キーワードのメモに書き写させます。原稿は「言いたいことを決める」ためのもの、メモは「言う」ためのもの、と役割を分けると、読み上げにならずにすみます。
評価の基準を先に見せると、みんな同じ発表になりませんか。
なりやすいのは、基準ではなくモデル文を見せたときです。基準は「理由を1つ言う」のように行動で書き、内容は生徒に任せます。モデル文を見せるなら、先生自身の話題で1つだけにして、生徒の話題とは重ねないようにします。
明日からの一歩
- 次のパフォーマンステストのルーブリックを、課題と同じ日に配る
- 先生が「3点の例」と「1点の例」を続けて実演してみせる
- 帯の5分で、ペアを替えて3回言う時間を1回だけ取る
課題カード・ルーブリック・採点表のそろったキットはパフォーマンステストの教材一覧に、採点の目盛りの作り方はルーブリック例20種に、テストの位置づけはパフォーマンステストとは(用語)にあります。採点のぶれに悩んだときはスピーキングテストの採点の相談へ。