パフォーマンステストの点に自信が持てないとき、原因はたいてい観点の数ではありません。観点は4つ立ててあるのに、その4つが「よくできている/おおむねできている/もう少し」としか書かれていないことです。この3語はどうとでも読めるので、2クラス目に入るころには自分の目盛りが動きます。学年に担当が3人いれば、3通りの目盛りができます。
ルーブリックの仕事は、点数の欄を作ることではありません。B——おおむね満足できる姿——を、他人が読んでも同じ絵が浮かぶ文章にすることです。Bさえ固定できれば、AはBへの上乗せ、CはBに届かなかった点として自動的に決まります。
この記事は、その書き方を先に説明し、そのあとに実物のルーブリック20種を学年別に並べます。どれも生徒用の課題カードと採点記録シートまで含んだ3点セットで、印刷すればその時間から使えます。
段階は3つにする
4段階や5段階のルーブリックを見かけますが、中学校の実技評価では3段階を勧めます。理由は2つあります。
ひとつは、段階が増えるほど隣どうしの差を文章で書き分けられなくなることです。5段階のルーブリックは、たいてい真ん中の3つが同じことを程度の副詞だけ変えて書いてあります。書き分けられない段階は、採点の場面では存在しないのと同じです。
もうひとつは、1人60秒から90秒のテストを20人ぶん見ながら、5つの箱から1つを選ぶ判断が現実的でないことです。3段階なら「Bだな」「Bには届いていない」の2択に落ちるので、その場で○がつけられます。採点を持ち帰らないことは、返却を早くするための最大の条件です。
観点は4つ——達成・正確さ・流暢さ・態度
当サイトのパフォーマンステストは、20種すべてを次の4観点×3段階=12点満点でそろえてあります。テストごとに観点が変わらないので、年間を通して同じ目盛りで見られます。
| 観点 | 見るもの | 見ないもの |
|---|---|---|
| 達成 | 課題の条件を満たして、伝えたいことが相手に届いたか | 内容のおもしろさ、話題の珍しさ |
| 正確さ | 意味が通じる範囲に誤りが収まっているか | 誤りの総数、細かい冠詞や三単現の一つひとつ |
| 流暢さ | 自力で最後まで進めたか。間の長さ | 速さ、ネイティブらしさ |
| 態度 | 相手に届ける工夫(顔を上げる、声を届ける、聞き返す) | 挙手の回数、提出物、ふだんの授業態度 |
観点別評価の3観点との対応は次のように割り当てています。正確さが知識・技能、達成と流暢さが思考・判断・表現、態度が主体的に学習に取り組む態度です。この割り当ては絶対のものではないので、学年で別の対応にしているなら、そちらに合わせて読み替えてください。大事なのは、割り当てを年度の最初に決めて動かさないことです。
Bの姿を文章にする——3つのルール
ここが本体です。次の3つを守るだけで、ルーブリックは読み合わせに耐えるものになります。
1. 数を入れる
「十分な量を話している」ではなく「4文程度で名前・好き・していることが伝わった」と書きます。数が入ると、採点者が変わっても線が同じ場所に引けます。生徒に事前に見せたときも、練習の目標がはっきりします。
2. まちがいの許容範囲を書く
Bは「誤りがない」ではありません。「誤りはあるが意味が通じる(I am like 〜 が1回程度)」のように、通してよいまちがいの例を1つ書いておきます。これを書かないと、正確さの観点だけが減点方式になり、話す量の多い生徒ほど不利になります。
3. 態度を挙手や声の大きさで測らない
態度の観点でいちばん壊れやすいのがここです。声の大きさは性格の記述になりがちですし、挙手の回数は英語の力と関係がありません。当サイトのルーブリックでは、態度を「相手に届けるための行動」として書いています。ときどき顔が上がる、聞き取れなかったときに Pardon? と聞き返す、といった行動です。聞き返しは減点ではなく加点として生徒用カードにも明記してあります。会話を続けるための技術だからです。
AとCの扱い
AはBへの上乗せとして書きます。Bの条件を満たしたうえで、さらに何があればAなのかを1つだけ足します。条件を2つも3つも足すと、Aが「英語が得意な生徒の指定席」になります。
Cは点数ではなく次の一歩として書きます。当サイトのルーブリックには、C評価の生徒に対して「条件を1つ減らして再挑戦の機会を作る」という手立てをセットにしてあります。評価が値踏みで終わるか、次の練習の指定になるかは、この1行があるかどうかで決まります。
実物のルーブリック20種
すべて生徒用課題カード/教師用ルーブリック+運用手順/採点記録シートの3点セット(A4・3ページ)です。文法単元に紐づかない全単元対応なので、教科書6種のどれを使っていても、進度に関係なく実施できます。
中1(7種)
まだ人前で英語を話すことがこわくなっていない時期です。長さより、全員が最後まで話しきれる設計を選んでください。
| テスト | 形態 | 1人あたり |
|---|---|---|
| はじめての自己紹介スピーチ | 発表 | 30秒〜1分 |
| 教科書音読テスト | 発表(音読) | 60秒 |
| 宝物ショー・アンド・テル | 発表 | 45秒 |
| 絵カードQ&Aテスト | やり取り(教師と1対1) | 90秒 |
| 英語インタビューテスト | やり取り(教師と1対1) | 90秒 |
| きのうトーク1分チャット | やり取り(ペア) | 1分 |
| ジェスチャー実況テスト | やり取り(ペア) | 2分 |
中2(7種)
話題に条件がつき始める学年です。やり取りの側に重心を移すと、思考・判断・表現の観点で見るものが増えます。
| テスト | 形態 | 1人あたり |
|---|---|---|
| 将来の夢スピーチ | 発表 | 1分 |
| おすすめプレゼンテスト | 発表+質問1つ | 1分 |
| 教科書リテリングテスト | 発表 | 90秒 |
| 意見と理由の30秒トーク | 発表 | 考え10秒+30秒 |
| 道案内ロールプレイテスト | やり取り(ペア) | 1組90秒 |
| 電話ロールプレイテスト | やり取り(ペア) | 1組90秒 |
| 週末アポとり対話テスト | やり取り(ペア) | 2分 |
中3(6種)
入試や英検の面接と地続きになります。即興性のあるものを1回は入れておくと、3年間の伸びが本人にも見えます。
| テスト | 形態 | 1人あたり |
|---|---|---|
| 3年間スピーチ「私はこう変わった」 | 発表 | 90秒 |
| 写真描写テスト | 発表 | 90秒 |
| 即興1分トーク(お題ガチャ) | 発表 | 1分 |
| 修学旅行プレゼンテスト | 発表(グループ) | 1組2分+質疑30秒 |
| 英語面接テスト(入試・英検直前形式) | やり取り(教師と1対1) | 3分 |
| ペア・ミニディスカッション | やり取り(ペア) | 3分 |
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記録は名簿順の1枚に集める
3点セットの3ページ目が採点記録シートです。名簿順に並んでいて、観点ごとに○をつける欄と、一言メモの欄があります。
メモ欄は評価のためではなく返却のために使います。生徒に返すとき、点数だけを渡すと「12点満点の8点」以上の情報が残りません。「最後まで顔が上がっていた」の一言があるだけで、次のテストに向けた練習の的が決まります。書くのは1人につき5語程度で十分です。
観点別評価全体の設計——記録をどこまで残すか、ABCから評定へどう落とすか——は観点別評価の付け方にまとめてあります。学年の担当者間で基準がそろわないという話は観点別評価のつけ方が、学年の教員間でバラバラです、採点そのものへの自信の話はスピーキングテストの採点が主観的で、つけた点に自信が持てませんにあります。
学年でそろえるときの手順
学年に複数の担当がいる場合、ルーブリックを配って終わりにすると、必ずずれます。実施の前に15分だけ使って、次の順にやってください。
- Bの記述を声に出して読み合わせる。読んで違和感が出た語をその場で直す
- 昨年度の生徒の音源か、担当のひとりの実演で、同じ生徒をそれぞれ採点する
- 割れた観点だけ、Bの文章に条件を1つ足す
割れるのはたいてい態度と流暢さです。この2つに数か行動を1つ足すだけで、以降のずれはほとんど消えます。
よくある質問
ルーブリックは生徒に事前に見せるべきですか
見せてください。当サイトの3点セットで生徒用課題カードを1ページ目に置いているのは、評価規準が練習の設計図になるからです。何を見られるか分からないまま練習させるのは、ゴールを隠して走らせるのと同じです。抜き打ちにしたくなるのは、たいてい態度の観点をふだんの授業態度で測ろうとしているときなので、そこはルーブリックのほうを直します。
12点満点を評定にどう反映させますか
パフォーマンステストの点をそのまま評定の材料に足すのではなく、観点ごとに分けて記録してください。正確さの3点は知識・技能へ、達成と流暢さの6点は思考・判断・表現へ、態度の3点は主体的に学習に取り組む態度へ入れます。1回のテストで評定を決めるのではなく、定期テストや単元末の記録と合わせて学期分をならすのが前提です。ABCから評定への落とし方は観点別のABCから評定への付け方に、毎回迷いますにまとめました。
自校用に文言を変えたいのですが
PDFはそのまま印刷して使えますが、話題や評価規準の文言を学校の実態に合わせたい場合はWord版(Premium)で編集できます。よくあるのは、話題を自校の行事に差し替える、Bの語数を1文減らす、態度の記述に自校の言葉づかいを入れる、の3つです。編集したものは学年で共有して、翌年もそのまま使ってください。毎年ゼロから作らないことが、いちばん効く時短です。
パフォーマンステストは、実施そのものより「何を測ると言ってあるか」で成否が決まります。研究授業や教育実習で評価規準を指導案に書く必要があるなら中学英語の学習指導案の書き方もあわせてどうぞ。テストにつながる日常の指導は音読指導の技術と即興で話す力の育て方に、単元のどこで実施するかは教科書別 単元マップにあります。