夏休み明けの教室には、2つの現実が待っています。1学期に固めたはずの文法をきれいに忘れている生徒たちと、日本語に戻りきった教室の空気。ここで「忘れてるじゃないか」から入ると、2学期の空気はマイナスから始まります。
40日のブランクで忘れるのは自然現象です。設計すべきは「忘れさせない方法」ではなく、忘れている前提の最初の2週間。この記事では、初日の15分→1週目→2週目のリセットプランをまとめます。
初日——15分の圧縮版・授業開き
4月の授業開きでやったことの圧縮再演です。詳しい設計は授業開きガイドに譲り、初日の15分だけ抜き出します。
- 最初のひとことから英語で(2分)——Welcome back! ジェスチャーつきの指示で「この教室は英語だった」を思い出させる
- 先生の夏休みクイズ(8分)——夏の出来事を3択クイズに。I went to 〜. / I ate 〜. と過去形を浴びせる(2学期の学び直し第1号は過去形の音です)
- ペアで1往復(3分)——How was your summer? — Great! / Not bad. の型だけ与えて隣と30秒
- 帯活動の再開宣言(2分)——「明日から毎時間、最初の5分は○○を再開します」
この4つをそのまま紙にしたのが学期はじめのスタートシートです。表が生徒の書き込み面(指示英語→先生クイズ→ペアで1往復→英語で2文→この学期の目標)、裏が50分の進行台本。授業が1時間まるごと取れる日はそのまま、始業式で15分しか取れない日は先生クイズとペアの1往復だけを抜き出して使えます。
ポイントは、初日に文法の総復習テストをしないこと。忘れた状態で測っても「できない」証明にしかならず、空気が固まります。診断は2週目に回します。
1週目——帯活動の再開が最優先
リセットの主役は帯活動です。1学期に回していた型なら、生徒の体が覚えているので初回から機能します。まだ帯活動を入れていないクラスは、この時期が導入の第2チャンスです(選び方は帯活動ネタ20選)。
2学期の帯としておすすめは書く系への切り替えです。3分クイックライトを週3回転がすと、夏休みで落ちた「書く持久力」の回復が語数グラフで見えます。夏の思い出・行きたかった場所・2学期の目標と、お題も9月は困りません。
ALTの来校もこの週から再開します。夏をはさむと打ち合わせの型のほうも忘れられているので、最初の1回は口頭でなく紙で渡すのが早道です(ALT打ち合わせシート——今日のゴール・見せ場・ふたりでそろえることを選んで渡すA5のスリップ)。2学期の単元のどこにALTを入れるかも、同じ紙の2枚目でまとめて決めてしまうと9月が軽くなります。
授業本体では、新単元に入る前に1学期の文法を場面の中で軽く使い直します。説明の再演ではなく、コミュニケーション活動を1本はさむのが早道です。中1なら生活すれちがい調査(一般動詞)、中2なら週末アポとり大作戦(未来表現)——遊びながら1学期の形が口に戻ります。
2週目——学び直しの診断は「まちがい診療所」で
2週目に入ったら、1学期の主要文法を1枚ずつ確認します。ここで使えるのが、当サイトの定着ドリルの「まちがい診療所」です。正しい文と誤った文が混ざった問題を診断・修正させる形式なので、どの誤りが夏を越えて残ったかが1枚で見えます。
- 中1: be動詞と一般動詞の混在(I am play 〜.)が再発していないか
- 中2: 不定詞・動名詞の相棒の使い分けが残っているか
- 中3: 現在完了とyesterday系の語の併用ミスが戻っていないか
各文法の教え方ガイドからドリルPDF(裏面に解答と学び直しコースつき)へたどれます。返却時に「間違えた人はここを読み直す」まで紙で指定できるので、全体への再説明は不要です。
2週目の診断は、この1枚で(学年別・15分)
2週目の学び直しのために、1学期の柱を横断して「どこが薄いか」だけを見る診断シートを学年ぶん用意しました。点数の欄はありません。ブロックごとに「できた数」を書き、いちばん薄いブロックだけをその週に戻す——診断から処方までがA4表裏1枚で完結します。
- 夏休み明けリセット診断 中1(単語/be動詞/一般動詞/切りかえ/can とたずねる文)
- 夏休み明けリセット診断 中2(不規則動詞/過去の文/過去進行形/未来/接続詞)
- 夏休み明けリセット診断 中3(過去分詞/受け身/現在完了/完了と過去/不定詞の発展)
裏面の診断マップには「薄いまま2学期に入ると何が起きるか」と「この1週間の一手」が印刷してあるので、返却時に全体へ再説明をしなくても、生徒が自分の次の1枚を選べます。3学年とも同じ構成・同じ15分なので、英語科でまとめて印刷できます。
中3だけは、診断のあとに進む道のりが長くなります。関係代名詞と分詞の山、実力テスト、進路面談、そして12月からの直前期までが1続きなので、その3か月ぶんの組み立ては中3英語の2学期——戻す1ブロックを15分で決めるに分けてまとめました。
診断のあとに重ねる教材(学年別)
診断で薄いブロックが見えたら、その文法のドリルへ。すべて無料PDF(A4・裏面解答つき)で、点数化しない診断(まちがい診療所)→10分小テスト(20点満点)の順に使うと、空気を壊さずに数字も残せます。
- 中1: be動詞ドリルとbe動詞・一般動詞の使い分けドリルで混在の再発を診断→中1の小テスト一覧から1学期の単元を1枚
- 中2: 不定詞ドリルと動名詞ドリルで相棒の使い分けを診断→中2の小テスト一覧
- 中3: 現在完了ドリルでyesterday系との併用ミスを診断→中3の小テスト一覧
小テストは基礎・標準・発展の3枚が同じ場面・同じ配点なので、夏明けは基礎版で測り、10月に標準版で測り直すと回復の度合いが数字で見えます。クラスの実態に合わせて設問を差し替えるなら、各教材ページのWord版(Premium)が編集用です。
2学期に出る文法と教材の対応を学年別のA4・1枚にまとめた早見マップも用意してあります。英語科の同僚と分担して準備するときの回覧用にどうぞ。
2学期の山場を見ておく
リセットと並行して、2学期の新出文法の山を確認しておきます。教科書によって時期が違うので単元マップで自分の教科書を見るのが確実ですが、おおまかには——
- 中1: 三単現・過去形(つまずきの二大峠)
- 中2: 不定詞・動名詞・比較(高校入試の得点源ゾーン)
- 中3: 関係代名詞・分詞(長文読解の景色が変わる後置修飾)
どの文法も、導入→定着→活動→応用の教材一式を文法の教え方ガイドにまとめてあります。
10月の中間テストは、範囲をどこで切るかが最初の分かれ道です。中1は三単現を測って進行形を期末へ、中2は不定詞・動名詞を測って比較を期末へ——学年別の切り分けと、教科書6種それぞれで中間の範囲に入りやすいところを2学期中間テストの作り方にまとめました。実物(基礎・標準・発展の3版)もそこから開けます。
もうひとつ、9月中旬から体育祭・文化祭の練習で時間割が崩れます。この週に単元の続きを押し込むと欠席と忘却で接続が壊れるので、1時間で完結する紙を1枚だけ用意しておくと楽になります。行事の英語カードは45分・25分・10分の3通りに縮む表裏1枚で、取れた時間が朝に決まってから選べます。
もうひとつ、2学期の入口で締切を迎えるのがスピーチコンテスト(弁論大会)です。都道府県大会は申込のときに弁論原稿を添えて出す県が多く、締切が8月中というところも少なくありません。まず今年の要項で締切を確認してください。進め方は英語スピーチコンテストの指導、生徒に渡す1枚はスピーチ原稿づくりシートです。
それから、9月は教育実習生を受け入れる学校が多い時期でもあります。担当になったら、初日に渡す3点(教科書の現在地・クラスの型・指導案の書式)を決めてしまうのが先です。実習生の側が読む3週間の歩き方とあわせて、教育実習の英語授業ガイドにまとめました。
よくある質問
夏休みの宿題テストはやらない方がいいのですか?
宿題の確認テスト自体は否定しませんが、初日は避け、配点を軽くするのがおすすめです。夏明け最初の数字が悪いと、生徒の2学期のセルフイメージがそこで固定されます。診断が目的なら、点数化しないまちがい診療所型の方が正確で、空気も壊しません。
リセットに2週間もかけたら進度が心配です。
ここでいうリセットは「復習だけの2週間」ではありません。初日15分+帯活動5分×毎時間+新単元前のコミュ活動1本——通常の単元進行に薄く重ねる設計なので、失う時数は実質1時間分程度です。逆にリセットを飛ばすと、新単元の説明が全部「1学期の穴埋め」から始まり、そちらの方が高くつきます。
2学期から帯活動を始めても遅くないですか?
遅くありません。むしろ「2学期からの新しい型」は生徒にとってリスタートの合図になります。4週間続ければ効果が出るのは4月開始と同じです。