ねらい
教科書を開いたまま本文の音声を聞かせると、生徒の目は文字を追い、耳はそのあとをついていくだけになります。音だけで意味をつかむ機会が、そこで1回なくなります。教科書を閉じて聞くは、本文を初めて扱う時間に、教科書を閉じたまま音声を聞かせ、聞き取れたことをメモしてから教科書を開く活動です。
この活動の決まりは、聞く前に問いを1つだけ渡すことです。問いがないと、生徒は全部の語を聞き取ろうとして、すぐにあきらめます。問いが1つあると聞く的が絞れ、分からない語があっても聞き続けられます。分かった所と分からなかった所がはっきりするので、教科書を開いたあとの読みにも目的ができます。
先生が本文の内容を自分の英語で語り直して聞かせるオーラル・イントロダクションと違い、こちらは本文の音声そのものを、文字より先に聞かせます。語り直しを準備する手間がないかわりに、本文の速さと語のつながりにそのまま出会うので、問いの助けが欠かせません。
手順
- 聞く前に、問いを1つだけ板書します。1回聞けば答えの見当がつく、話の中心にかかわる問いにします。
- 教科書を閉じさせ、机の中にしまわせます。本文の音声を1回聞かせます。
- 1人で1分、聞き取れた語や内容をメモします。語だけでも、日本語でもかまいません。問いの答えの見当も書きます。
- ペアで1分、メモを見せ合います。相手が書いていて自分が書いていない語に印をつけます。
- もう1回聞かせます。メモに1つだけ足させます(新しく聞き取れた語か、問いの答えの理由)。
- 教科書を開き、問いの答えを本文で確かめます。答えの手がかりになった行に線を引かせます。
先生が言う言葉の例です。
| 場面 | 先生の言葉 |
|---|---|
| 聞く前に | Close your textbook. Listen and answer one question. |
| 問いを出すとき | Why is Riku sleepy? Listen. |
| 2回目の前に | Listen again. Add one more thing to your notes. メモに1つ足そう |
| 教科書を開くとき | Open your textbook. Find the answer. 何行目にある? |
1回目のあとで答えを全体に言ってしまうと、2回目を聞く理由がなくなります。答えは、教科書を開いてから確かめます。
見本
- Ms. Green:Good morning, Riku. You look sleepy.
- Riku:Good morning, Ms. Green. I went to bed at two last night.
- Ms. Green:At two? Were you studying for the test?
- Riku:No. I was watching a soccer game on TV. Japan played Brazil.
- Ms. Green:Oh, I watched it, too! What a game!
- Riku:But Japan lost. I was so sad.
- Ms. Green:Me, too. But the last goal was beautiful.
- Riku:Yes! Number 10 was amazing. I want to play like him someday.
- Ms. Green:Then don't sleep in class today. You have practice after school, right?
- Riku:Right. I'll try!
聞く前に渡す問いは Why is Riku sleepy? の1つです。1行目の You look sleepy. を受けた問いで、答え(夜おそくまでテレビでサッカーの試合を見ていた)は、2行目と4行目を聞けば見当がつきます。
1回目のあとのメモと、2回目に足したことの例です。
| 生徒 | 1回目のメモ | 2回目に足したこと |
|---|---|---|
| A | two, soccer, Brazil | at two last night。夜の2時に寝た |
| B | soccer, TV, Japan, lost | 日本がブラジルに負けた。リクは悲しかった |
| C | sleepy, test, practice | テストの勉強ではない(No. と言っている) |
1回目のメモには、soccer・TV・Brazil のような、カタカナ語に近い語が並びがちです。それだけでは、問いの答えは決まりません。答えを決める材料は、2回目に足した情報のほうにあります。
答えが割れやすいのは、生徒Cのように test を聞き取った場合です。3行目の Were you studying for the test? だけが耳に残ると、「テスト勉強でねむい」と答えてしまいます。4行目の最初の No. が聞き取れたかどうかで、答えが変わります。2回目の前に「リクは勉強していたの?」と1つだけ聞いておくと、No. に耳が向きます。
もう1つ、メモの two は、2行目の at two のほかに、5行目の I watched it, too の too とも同じ音です。教科書を開いてから「two はどっち?」と聞くと、聞くだけでは決められないことがあると分かり、文字で確かめる意味が生まれます。
教科書を開いたあとは、同じ本文で行間の推理に進めます。ねむい理由が分かった生徒に「グリーン先生もねむいかもしれない。なぜ?」と聞くと、5行目に戻って読み直します。
変化をつける
- やさしくする: 3枚の絵から選ばせます。机で勉強している絵、テレビでサッカーを見ている絵、ゲームをしている絵を見せ、「リクが昨日の夜していたのはどれ?」と聞きます。語が聞き取れなくても、絵で答えられます。
- むずかしくする: 1回目は問いを渡さずに聞かせ、だれとだれが何の話をしているか(大意)だけを言わせます。2回目の前に、細部の問い(試合はどうなった? 放課後に何がある?)を渡します。メモを持ち寄って本文を組み立て直すところまで進めると、ディクトグロスになります。
- 説明文で: 数字を聞き取る問いが向いています。How We Come to School なら What is the most popular way? の1問にして、答えと人数を聞き取らせます。
- 高校では: メモを2列にします。左の列に聞き取れた語句、右の列にそこから分かったことや推測を書かせます。2回目は右の列に足すことにすると、聞きながら考える時間になります。
つまずきと手当て
- 何も聞き取れない: 問いを、はい・いいえで答えられる形にします(Did Riku watch TV last night?)。メモが白紙の生徒には、聞こえた音をカタカナで書いてよいことにします。
- 音声が速い: デジタル教科書の速さを落とすか、1回目は先生がゆっくり読みます。2回目は元の速さに戻します。
- 教科書をのぞき見る: 閉じるだけでなく、机の中にしまわせます。のぞきたくなるのは、聞き取れない不安があるからです。問いをやさしくして、のぞかなくても答えられる形にするほうが効きます。
- 1語だけで答えを決めてしまう: 見本の test のように、聞き取れた1語から答えを作る生徒がいます。ペアでメモを見せ合うときに「その語は、どんな文の中にあった?」と聞かせ、2回目で確かめさせます。
出どころ
文字より先に音声で出会わせる順番は、読む・書くを口頭の練習のあとに置くオーラル・メソッドのころから言われてきた考え方です。今の授業でも、新しい本文を、教科書を閉じて聞くところから始める進め方はよく見られます。このレシピの「問いを1つだけ渡す」決まりと、2回目にメモを1つ足す回し方、見本の問いとメモの例は、このサイトで作ったものです。