ひとことで言うと
論理・表現と英語コミュニケーションは、高校の英語の2つの科目です。英語コミュニケーション(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)は聞く・読む・話す・書くの5領域を総合的に扱う科目で、教科書の本文を中心に進みます。論理・表現(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)は、話すこと(やり取り・発表)と書くことを、論理の順序を意識して行う科目で、意見を組み立てて伝える活動が中心です。旧課程の「英語表現」を文法の授業として使っていた学校では、論理・表現をどう変えるかが最初の課題になります。
出どころ
2018年告示の高校学習指導要領で定められ、2022年度入学生から年次進行で始まりました。旧課程のコミュニケーション英語Ⅰ〜Ⅲが英語コミュニケーションⅠ〜Ⅲに、英語表現Ⅰ・Ⅱと英語会話が論理・表現Ⅰ〜Ⅲに再編された形です。英語コミュニケーションⅠは必履修(3単位、2単位に減らせる)、Ⅱ・Ⅲは4単位、論理・表現はⅠ〜Ⅲとも2単位です。旧課程の英語表現が「文法・語法の科目」になりがちだった反省から、論理・表現は科目名に「論理」を入れ、5領域のうち発信の3つ(やり取り・発表・書く)を担うことが明確にされました。
授業での実際の使い方
2科目の役割を分けると、両方の授業が軽くなります。
| 英語コミュニケーション | 論理・表現 | |
|---|---|---|
| 中心 | 教科書の本文(読む・聞く)から、内容について話す・書く | 意見・主張を、理由と例で組み立てて話す・書く |
| 文法 | 本文の中で扱い、既習の確認が中心 | 活動に必要な形(理由の言い方・比較・仮定)を活動の直前に短く |
| 1時間の型 | 本文→内容理解→音読→リテリングや要約 | 型の提示→ペアで言う→書く→相互評価→書き直し |
| 定期考査 | 本文の内容理解と、初見の読解・リスニング | 条件つきの英作文(80〜120語)と、やり取りのスクリプト作成。パフォーマンステストで話すこと |
論理・表現の1年は、型を6つ(意見と理由・比較・賛否・提案・要約・ディベート)に分けて順に並べると組めます。1つの型に4〜5時間で、話す→書くの順に同じ内容を扱うと、生徒の負担が減ります。文法の授業にしないコツは、文法項目の順ではなく、型の順で年間を組むことです。
論理・表現の定期考査の作り方
考査は、問題を順に作るのではなく、大問の枠と配点を先に決めてから中身を入れます。順に作ると、前半の語彙・文法の問題に配点が寄るからです。50分の考査の枠の例です(配点は例で、学校の方針で動きます)。
| 大問 | 何を測るか | 観点 | 配点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 型で使う表現(理由・譲歩・つなぎの語)を文の中で使う | 知識・技能 | 20 |
| 2 | 活動で使った文法(比較・仮定など)を、条件に合う文にする | 知識・技能 | 15 |
| 3 | 短い資料を読んで、授業の要約の型でまとめる | 思考・判断・表現 | 20 |
| 4 | 授業と同じ表を配り、パラグラフを60語以内で書く | 思考・判断・表現 | 20 |
| 5 | 賛成か反対かを選び、理由2つで意見を80語で書く | 思考・判断・表現 | 25 |
作るときの線は4つです。
- 授業で使った型を、そのまま設問にします。授業と考査で型が変わると、生徒は考査用の別の書き方を覚えることになります。
- 題は初見にします。授業で書いた題をそのまま出すと、覚えてきた文を書くだけになり、思考・判断・表現が測れません。
- 英作文の採点は加点式で、内容・構成・言語に分けて点を割ります。減点式にすると、書く量を減らすほど点が上がってしまいます。
- 話すことは考査ではなく、パフォーマンステスト(やり取り・発表)で見ます。想定の解答時間は、試験時間の8割(50分なら40分)に収めます。
英語コミュニケーションの考査(既読の本文の理解と初見の読解)とは、測るものが違います。同じ学年の2科目で考査の形をそろえようとすると、論理・表現が本文の問題に引っぱられるので、科目ごとに枠を作ります。枠を先に決める手順と観点の分け方は、高校英語の中間考査、どう作るかに詳しく書きました。
よくある誤解
- 論理・表現=文法の授業、ではありません。旧課程の英語表現の癖で、文法問題集を進める科目になっている学校がありますが、科目の目標は発信の3領域です。
- 論理・表現=ディベートの科目、でもありません。ディベートは型のひとつで、意見と理由を言う基本の型のほうが時間の多くを占めます。
- 2科目で同じ本文を扱うと、生徒は2回同じ授業を受けることになります。英語コミュニケーションは本文、論理・表現は本文から離れた自分の意見、と分けます。
校種別の違い
| 校種 | 特徴 |
|---|---|
| 小学校 | 直接は関係ないが、自分のことを3文で言う活動が、論理・表現の「意見と理由」の一番下の段になる |
| 中学校 | 中3の「まとまりのある文章を書く」と即興のやり取りが、論理・表現Ⅰに直結する。3文の型(主張・理由・まとめ)を中学で持たせておく |
| 高校 | 本編。英語コミュニケーションと論理・表現の役割分担を教科で決め、定期考査の作り方も分ける |
| 塾 | 高校生の定期考査対策では、論理・表現の考査(条件英作文)と英語コミュニケーションの考査(本文)で対策が違うことを先に確かめる |
この用語が出てくる教材と記事
- 論理・表現の1年、何をどの順でやるか。6つの型を並べる順序の本編です。
- 英語コミュニケーションの50分をどう組むか。活動が消えない時間配分です。
- 高校版 論理・表現の教材。型ごとの授業プリントの棚です。
- 高校生の英語を塾でどう見るか。定期考査と入試を、文法18ユニットと読解ラダーの2本で見る塾向けの記事です。
- 5領域の中身は4技能5領域、書く型はパラグラフ・ライティング、型のひとつはディベートとディスカッションへ。