「論理・表現」でいちばん多い困りごとは、教材が無いことではありません。バラバラの活動が、1年でつながらないことです。1学期にスピーチをやり、2学期にディベートをやり、3学期に自由英作文を書かせる。どれも悪くないのに、生徒から見ると毎回ちがう課題が降ってきているだけで、前の学期にできたことが次に効いてきません。
つながらない原因は、活動の種類がちがうからではなく、骨がそろっていないからです。当サイトの論理・表現の教材は、6つの形式が全部、同じ骨で作ってあります。
主張 → 理由2つ(それぞれに具体を1つ)→ 譲歩 → まとめ
書くのか話すのか、資料があるのかないのか、自分の意見なのか与えられた立場なのか。ちがうのはそこだけです。骨が同じなら、2学期のディベートで生徒が使うのは、1学期に書いた設計図と同じ順序になります。
6つの型と、負荷の順
並べる順序は、教科書の単元順ではなく生徒の負荷の順で決めます。負荷を決めるのは、次の2つがどちらも要るかどうかです。
- 内容を自分で用意するか(自分の意見/与えられた資料)
- その場で返すか(書く/話す)
この2つで並べると、順序はほぼ自動的に決まります。
| 順 | 型 | 内容 | その場の負荷 | だいたいの時期 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 要約ラダー | 与えられる(本文) | 低(書く) | 4〜5月 |
| 2 | パラグラフの型 | 与えられる(資料) | 低(書く) | 5〜7月 |
| 3 | 意見文の設計図 | 自分で用意 | 低(書く) | 9〜10月 |
| 4 | リテリング | 与えられる(本文) | 高(話す) | 通年の帯 |
| 5 | ミニディベート | 与えられる(立場) | 高(話す) | 11〜12月 |
| 6 | 発表(運営キット) | 自分で用意 | 高(話す) | 1〜2月 |
いちばん重いのは6番です。内容も自分で用意し、その場で話す。ここを1学期に置くと、原稿の暗唱大会になります(暗唱は暗唱で価値がありますが、それは論理・表現の目標ではありません)。
最初が要約なのはなぜか
順序で唯一「意外だ」と言われるのが、1番目に要約が来ることです。要約は難しい、というのが一般的な感覚だからだと思います。
ただ、要約が難しいのは削る基準がないときです。逆に言えば、削る順序さえ決まっていれば、要約は「自分で言うことを考えなくていい」ぶん、いちばん軽い書く活動になります。当サイトの要約ラダーは、段落1語 → 段落1文 → 20語 → 10語と、落とす順序を決めて削る枠です。ここで「主張と理由だけが残る」という体験をしておくと、3番目の意見文で「自分の主張と理由を先に決める」が自然に入ります。
2学期は、意見文からディベートへ
3番目の意見文の設計図は、理由2つとそれぞれの具体、そして譲歩を1文。ここまでを紙で書けるようにしてから、5番目のミニディベートに移ります。
ディベートを重い活動にしてしまう要因は、たいてい立場を自分で選ばせることです。自分の信条を述べる活動にすると、点が「何を信じているか」に近づき、評価が難しくなります。運営キットが立場をくじで決める形にしてあるのはこのためで、与えられた側で理由を立てる訓練にすれば、見るのは「言えたこと」だけになります。勝敗もつけません(勝ち負けを決めた瞬間、勝つのは英語ではなく声の大きい生徒です)。
意見文の紙で書いた「譲歩の1文」が、そのままディベートの反論(You said ..., but ...)になります。ここが、1年でいちばん気持ちよくつながる場所です。
添削は、型ではなく仕組み
6つの型とは別に、通年で回すものが1つあります。添削とピアフィードバックです。
週1回、40人分の英作文を全部直すのは物理的に無理があります。かといって直さなければ、書く回数を増やすほど誤りが固まります。解決は、直す仕事を生徒に戻すことです。教師は記号10個で「どこが」だけを示し、何がどう違うかは生徒が考える。この形にすると、1枚あたりの時間が数分の一になり、週1回が現実的な回数になります。
添削の記号は、上の6つの型のどれで書いた文にも同じものを使ってください。記号が型ごとに変わると、生徒は記号を覚え直すことに労力を使います。
評価は、書く回数を減らさない形で
定期考査に移すときは、授業で使った型をそのまま設問にします。パラグラフの型で書かせているなら「同じ表を配って60語以内」、意見文なら「賛成か反対かを選び、理由2つで80語」。授業と考査で型が変わると、生徒は考査用の別の書き方を覚えることになります。
配点は加点式にしてください。減点式にすると、書く量を減らすほど点が上がってしまい、指導と逆向きの力がかかります。各設計図に刷ってあるルーブリックは、すべて加点式(内容・構成・言語)です。
考査全体の組み方は、中間考査の作り方にまとめてあります。
まとめ
- 型は6つあるが、骨は1つ。主張 → 理由2つ+具体 → 譲歩 → まとめ。
- 並べる順序は教科書順ではなく、内容を自分で用意するか・その場で返すかの2軸。
- 1学期は資料が紙の上にあるもの(要約・パラグラフ)、2学期に自分の意見(意見文・ディベート)、3学期に発表。
- 添削は型ではなく仕組み。記号で「どこが」だけを示し、直す仕事は生徒に戻す。
紙はすべて論理・表現のページにあります。基礎・標準・発展の3難易度がある形式は、同じ論題で支援の量だけを変えてあるので、同じ教室で配り分けても答案を同じ観点で並べて読めます。