ひとことで言うと
学習指導案(指導案)は、授業の設計書です。単元の目標、評価規準、何時間で何をするかの指導計画、そして本時(見てもらう1時間)の展開(導入・展開・まとめの流れと、生徒の活動・先生の支援・評価の場面)を書きます。略案は本時の展開だけを1〜2枚にしたもの、細案は単元観・教材観・生徒観から本時までを書いた数枚のものです。研究授業、教育実習、校内研修で書く機会が多くなります。
出どころ
指導案は法令で定められた書類ではなく、様式は教育委員会・学校・教育実習の受け入れ校ごとに違います。ただし、国の「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」が示す、単元の目標→評価規準→指導と評価の計画→本時、という順は、多くの様式に共通しています。英語では、5領域の目標と3観点の評価規準を書くことが特徴です。
授業での実際の使い方
様式の主な欄と、英語で書くときの要点です。
| 欄 | 書くこと | 英語での要点 |
|---|---|---|
| 単元名・教材 | 教科書の単元名と扱う文法・題材 | 教科書名と単元、扱う領域 |
| 単元の目標 | 単元の終わりにできること | 5領域のどれで「〜できる」か。CAN-DO の1行 |
| 評価規準 | 3観点それぞれの生徒の姿 | 「〜している」の形。本時は1〜2観点に絞る |
| 指導と評価の計画 | 各時間の活動と、記録に残す評価の場面 | 帯・導入・練習・言語活動・小テストの配置 |
| 本時の目標 | この1時間でできること | 1文。単元の目標のどの部分か |
| 本時の展開 | 導入・展開・まとめの流れ、生徒の活動、先生の支援、評価 | 言語活動の場面と中間指導の位置を書く |
英語の本時案で書く3つは、①言語活動の場面(目的・場面・状況)、②先生の英語での指示と導入(オーラルイントロダクション)、③評価の場面と方法(観察か、ワークシートか)です。この3つがあると、見る人は「英語の授業として何をねらったか」を読めます。
略案と細案の違い
呼び方は自治体や学校で変わりますが、差は分量よりも、単元の指導計画をどこまで書くかです。
| 略案(本時案) | 細案(正式な指導案) | |
|---|---|---|
| 分量 | A4・1枚 | A4・3〜6枚 |
| 書くもの | 本時の目標/評価規準/展開表 | 左記+単元名・単元の目標・生徒観・教材観・指導観・単元の指導計画 |
| 使う場面 | 校内の研究授業、教育実習の日常の授業 | 研究発表会、教育実習の研究授業、初任者研修 |
略案の例(中2・最上級の導入)
当サイトの授業案『4つの札でいちばん』を、略案1枚に写すとこうなります。本時の目標と評価規準を先に決め、展開表は「生徒の活動」と「先生の支援・評価」を横に並べます。
- 本時の目標: 自分のクラスでいちばん人気のものについて、最上級(the -est/the most/the best と in・of)を使って、調べた結果を3文で伝えることができる。
- 評価規準(本時は1観点): 【思考・判断・表現】クラスでいちばん人気のものについて、調べた数を根拠に、最上級を使って結果を書いている。
| 時間 | 生徒の活動 | 先生の支援・評価 |
|---|---|---|
| 導入 15分 | 4つの札でいちばん(It's the tallest of the four. などのヒントを聞いて1つにしぼる)。6問目はクラスでいちばん人気の季節を予想して止める | ヒントを1文ずつ聞かせ、聞こえた文と答えを2列で板書する |
| 気づき 8分 | 板書の2文を比べ、the が付く理由と in・of の使い分けを見つける | 答えを言わずに「the が付くのはなぜ?」と問い、生徒の言葉で確かめる |
| 展開 17分 | 班で調べること(季節・教科など)を1つ選び、Which ~ do you like the best? で6人に聞いて数を合わせる | 誤りは止めずに、the の入った形で言い返す(リキャスト)。多い誤りは活動のあとに全体で1つだけ扱う |
| 出口 6分 | 調べた結果を1人3文で書き、2班が読み上げる | 【評価】書いた3文を集めて、評価規準で見る(記録に残す) |
| まとめ 4分 | 6問目の予想と結果を比べる。次の時間の as ~ as を知る | Winter is as popular as spring. が言えるかを予告する |
空欄の型(Word・PDF・登録不要)と、細案で足す欄の書き方は、中学英語の学習指導案の書き方にあります。
細案で足す欄(単元観・教材観・生徒観・指導観)
細案では、本時案の前に「単元について」の欄を書きます。呼び方は様式で違い、単元観と教材観を1つの欄にまとめる様式と、分けて書く様式があります。上の略案と同じ単元(中2・比較)で書くと、こうなります。
| 欄 | 書くこと | 例(中2・比較) |
|---|---|---|
| 単元観 | この単元で、どの領域のどんな力を育てるか。学習指導要領の目標とのつながり | 身近なものを比べて、調べた事実をもとに考えを伝える単元。話すこと[発表]と書くことで、比べた結果を根拠つきで伝える力を育てる |
| 教材観 | 題材と言語材料が、その目標になぜ合っているか。自分のクラスにとっての意味を1文 | 最上級は「クラスでいちばん」を調べる活動と相性がよく、調べた数がそのまま根拠になる。人気の季節や教科の題は、全員が自分の答えを持っている |
| 生徒観 | 目標に届かせるうえで気になる実態。本時の手立てにつながる事実だけ | 比較級は言えるが、最上級で the を落とす誤りが多い。書く量の差が大きく、3文が書けない生徒が数名いる |
| 指導観 | 生徒観と教材観を受けて、どんな手立てを打つか。展開表の「先生の支援」と一致させる | the が付く理由は、説明する前にヒントの2文を比べて生徒に見つけさせる。書く量の差には、In our class, ___ is the most popular ___. の型を黒板に残す |
書く順は、本時の目標→評価規準→展開表→単元の指導計画→観の欄、が楽です。目標と展開が決まっていれば、観の欄はそこから逆算して書けます。学級全体のほめ言葉や、教科書の単元の趣旨の写しで欄を埋めると、読む人には何も伝わりません。
よくある誤解
- 長く書くほどよい指導案、ではありません。本時の目標が1文で言えて、展開がその目標に向かっていれば、略案で十分な場面が多いです。
- 指導案どおりに進めることが目的ではありません。授業中に生徒の反応で変えてよく、指導案は「何をねらったか」を共有するための紙です。
- 様式は1つではありません。研究授業や教育実習では、受け入れ側の様式に合わせます。中身(目標→規準→展開)は同じです。
校種別の違い
| 校種 | 特徴 |
|---|---|
| 小学校 | 担任が全教科の様式を使う。外国語では ALT との役割分担の欄を足すことが多い |
| 中学校 | 教科の様式。3観点×5領域の評価計画。教育実習の本時案の定番 |
| 高校 | 科目ごと。観点別評価の記載が2022年度から加わり、評価規準の欄が必須に |
| 塾 | 書かないが、講習の進度表と1回90分の型が指導案の役目 |
この用語が出てくる教材と記事
- 中学英語の学習指導案の書き方。略案・本時案のテンプレートと記入例を書いた本編です(Word の型も配っています)。
- 教育実習の英語授業ガイド。指導案を目標1文から組む3週間の流れです。
- 授業案の教材一覧。単元ごとの授業案(展開の実物)です。
- 小学校の場合は、小学校外国語の指導案へ。略案と細案の違い、評価規準の文末(外国語科と外国語活動)など、書き方をまとめています。
- 見てもらう場は研究授業、規準の書き方は評価規準と評価基準へ。