塾講師のアルバイトを始めた大学生が最初にぶつかるのは、「自分は解けるのに、生徒には伝わらない」という壁です。英語が得意な人ほど、なぜ分からないのかが分かりません。教え方は才能ではなく型で、型は5つあれば最初の1か月は回ります。この記事は中学生の個別指導(1対1〜1対3)を想定して、その5つを順番に書いたものです。授業の準備に使うページは、すべて無料の公開ページです。
型1 最初の5分で「教科書・学年・いまの単元」を確かめる
中学の英語の教科書は検定6社あり、同じ中2の同じ月でも学校によって進んでいる文法が違います。生徒に「学校でいま何やってる?」と聞いても「Unit 5」としか返ってきません。そこで教科書別の単元マップで生徒の教科書と学年を開き、Unit 5 が何の文法かを講師が確かめます。これを飛ばして「不定詞やろうか」と始めると、学校でまだ習っていない文法を先取りしてしまい、生徒は学校の授業でも塾でも分からない状態になります。
もう1つ、学校の先生の言い方に寄せます。生徒は週に4時間、学校の先生の説明を聞いています。塾で別の呼び方をすると、生徒の頭の中で2つの説明がぶつかります。教科書の基本文の表現をそのまま使うのが、いちばん摩擦が少ない教え方です。
型2 解説は3分まで。先に手を動かさせる
新しい文法を教えるとき、講師は解説したくなります。話している間は生徒が静かで、教えている実感があるからです。でも中学生の集中は、聞くだけなら3分でほどけます。解説は3分で切って、次の順に手を動かさせてください。
- 例文を3つ、声に出して読ませる(講師が先に読み、生徒が続く)
- 同じ例文の主語や目的語だけを入れかえた穴埋めを、その場で書かせる
- 最後に、自分のことで1文だけ書かせる
3つ目で書けなければ、2つ目に戻ります。この「導入→定着→応用」の順は、文法ガイドに18文法ぶん載せてあります。ガイドには文法ごとの「よくある誤答」も書いてあるので、授業前に3分読むと、生徒がどこで間違えるかを先に知ったうえで教えられます。たとえば過去形なら「did と過去形の二重過去」、三単現なら「does と動詞の s の二重加算」です。
型3 語順は「誰が→どうする→何を」の矢印で
日本語の順に単語を置く生徒は、どの学年にもいます。「私は昨日図書館で本を読んだ」を I yesterday library book read と並べる生徒です。この生徒に「英語は語順が大事」と説明しても直りません。語順は知識ではなく手の動きだからです。
日本語の文の横に、「誰が→どうする→何を」の矢印を生徒に書かせます。矢印の順に英語を置く。これを毎回やると、3週目くらいから生徒が自分で矢印を書き始めます。並べかえの練習は、定着ドリルに文法ごとに入っています。
型4 間違いは3種類に分けて、言う言葉を決めておく
生徒の間違いを「惜しい」「もう一回」で返すと、生徒は何を直せばいいか分かりません。間違いは3種類に分けます。
| 間違いの種類 | 見え方 | 講師が言う言葉 |
|---|---|---|
| 形が入っていない | 三単現の s が付いたり付かなかったり、be動詞と一般動詞が同じ文に出る | 「主語を丸で囲んで」 |
| 語順が組めない | 単語は合っているのに日本語の順に並ぶ | 「誰が→どうする→何を」 |
| 書く量が足りない | 選択と並べかえは正解なのに、英作文が白紙 | 「まず写して」 |
言う言葉を決めておく理由は2つあります。講師が毎回違う言い方をすると生徒が混乱すること、そして講師が交代しても同じ指導が続くことです。この3つの型と、型ごとに渡す紙は個別指導で英語が伸びない中学生の3つの型に詳しく書いてあります。
「分かった?」と聞いて「はい」と返ってきても、信じないでください。分かったかどうかは、生徒が次の1問を自分で解けるかで決まります。聞く代わりに、同じ形の問題を1問渡します。
型5 最後の5分は小テストで閉じる
授業の最後に、その日の文法の10分小テストを5分で解かせます。基礎・標準・発展の3版があるので、生徒の前回の点で版を選びます。50点未満なら基礎版、50〜75点なら標準版、75点以上なら発展版が目安です。解答つきなので、その場で丸をつけて返せます。
合格ラインは7割。届かなかったら、落とした大問で型を見分けて(型4の表)、宿題を決めます。宿題は「同じ紙をもう一度」がいちばん効きます。新しい紙を渡すより、できなかった問題ができるようになった実感が残るからです。
授業前10分の準備の順番
| 分 | やること | 使うページ |
|---|---|---|
| 0〜2 | 生徒の教科書と学年で、いまの単元の文法を確かめる | 単元マップ |
| 2〜5 | その文法の導入→定着→応用と、よくある誤答を読む | 文法ガイド |
| 5〜8 | 小テストの版を選んで印刷する(解答も) | 10分小テスト |
| 8〜10 | 前回の紙で落とした大問を見て、最初の5分で何を戻すか決める | 前回の答案 |
塾・教室ライセンスのある教室なら、文法ごとの講師用メモ(教えること・よくある誤答・言う言葉を1枚にしたもの)と、要点まとめの穴あき版が使えます。塾長が講師に渡す形は大学生の塾講師に英語を任せるときの1枚に書きました。
高校生・長文はこちら
高校生の個別指導は、文法・長文・定期考査を分けて見るところから違います。塾講師の英語の教え方(高校生)へ。長文の教え方は中学生も高校生も同じ考え方なので、英語長文の教え方に1本にまとめてあります。