アルファベットの単元は、3年に1つ、4年に1つ、どちらも4時間です。この8時間で文字が身につくわけではありません。3年で大文字の名前に出会い、4年で小文字を大文字と結びつけ、5年で四線に書き始める。3年がかりで1本の道になっています。
難しいのは、道が学年をまたぐことです。去年どこまでやったかが見えないまま今年の4時間だけを見ると、「大文字も怪しいのに小文字?」と焦ります。今年の担当範囲がはっきりしていれば、4時間で全部を仕上げなくてよいと分かります。この記事は、その見取り図です。
3年間を1本の道として見る
| 学年 | 単元 | この年にすること | 書くか |
|---|---|---|---|
| 3年 | Let's Try! 1 Unit 6「ALPHABET」(4時間) | 大文字の名前を聞いて、指させる・取れる。身の回りに文字があふれていることに気づく | 書かない |
| 4年 | Let's Try! 2 Unit 6「Alphabet」(4時間) | 小文字と大文字を結びつける。形で仲間分けをして、背の高さの違いに気づく | 書かない |
| 5年 | 外国語科のはじまり(NEW HORIZON Elementary は帯の Sounds and Letters、Here We Go! は Alphabet Time) | 文字を見て名称が言える。四線に大文字・小文字を書く。自分の名前から始める | 書く |
3・4年が「書かない」なのは、外国語活動に読むこと・書くことの領域がないからです。中学年の目標は聞くことのウ、つまり文字の読み方が発音されるのを聞いた際に、どの文字であるかが分かるようにする、というところまでです。解説も、中学年は文字の名称レベルに指導を留めることに留意する必要がある、としています。指させる・取れる・並べられる、で目標は達成されています。ついでに言うと、この学年では英文だけを板書して指示することも避けます。読めない前提の学年だからです。
5年から領域が5つになり、読むことのアに「活字体で書かれた文字を識別し、その読み方を発音することができるようにする」、書くことのアに「大文字、小文字を活字体で書くことができるようにする」が入ります。ここでの「読み方」は文字の名称のことで、文字が語の中で示す音のことではありません。この区別は指導の中身を大きく変えるので、文字と音をつなぐで別に扱いました。評価の側から見た整理は聞く・読む・書くの評価にあります。
3年——大文字の名前に「出会う」4時間
3年の4時間は、勉強ではなく発見遊びとして設計します。学習指導要領解説 外国語活動・外国語編は、文字の名称を指導することは身の回りの物を表す語句を指導することと同様だとしています。red という色の名前や apple という果物の名前を教えるのと同じ扱いで、k という文字の名前を扱う、ということです。明示的に文字の形を指導したり、アルファベット順に暗記させたりするのではなく、まず身の回りに英語の文字がたくさんあることに気づかせる。解説はそこを重視しています。
3年 アルファベット大文字のパック7点は、この順で組んであります。第1時にABCソングと出会い、第2時がポインティングゲーム(聞いた文字を指でタッチするだけ。読めなくても全員が参加できます)、第3時がABCかるたと仲間分け(まっすぐな字とまるい字の2つに分けるだけ)、第4時が身の回りABCさがしビンゴです。
第3時の仲間分けは、遊びのおまけに見えて目標に直結しています。解説は、この活動の前段階として、歌やチャンツの中で文字の読み方に親しませたり、文字の形を指で作ってみたり、形に着目して仲間分けをしたりする活動を挙げています。体で形をなぞる、分けてみる。これが後の「書く」につながる下地です。
つまずいた子への手立ても解説に書いてあります。読み方を聞いただけではすぐに文字を見つけられない子がいることを前提に、十分な間隔を空けてゆっくり一つ一つの文字を発音したり、発音した後に文字を示したりする、と。かるたの読み上げを「1文字2回・間3秒」にし、取れない子が続いたら「次はヒント付き」と宣言して読んだ後に視線でカードの方を見る——教材の先生用シートの手順は、この記述を形にしたものです。
4年——小文字を、必ず大文字とペアで
4年の難所は形そのものではなく、b と d、p と q のように裏返しで混乱する字が一気に来ることです。ここで小文字カードを1枚ずつ単独で見せると、子どもは覚えるものが26個増えたと感じます。
4年 アルファベット小文字のパックでは、必ず大文字とペアで出します。3年で出会った大文字が手がかりになるので、増えたのではなく「兄弟を紹介された」感覚になります。
- **神経衰弱(マッチング)**は、最初の1回を8ペア(Aa / Bb / Dd / Ee / Gg / Pp / Qq / Rr)に絞ります。Cc・Ss・Oo のような形がほぼ同じペアをあえて外すと、「形が変わる兄弟」に集中できます。全部入れると偶然合わせのゲームになります
- 小文字せいくらべは、この単元の心臓部です。1階建て・2階建て・地下室の3つに分けるだけの活動ですが、5年で四線に書くときの貯金がここで貯まります
- そらがきクイズは、書く前段階の運動記憶づくりです。先生が空中に大きく書き、何の文字かを当てます。子どもから正しい向きに見えるよう、鏡向きで書くか、背中を向けて書きます
4年でも書かせません。書くのは、名前の頭文字をなぞる程度です。書字に不安のある子が全部の活動に参加できるのは、この線を守っているからです。
取り違えやすい字は、教えるより「見る」回数で
解説は、大文字・小文字を活字体で書かせる際の工夫として、a・c・e、f・l、g・y など文字の高さの違いを意識させること、p と q、b と d など紛らわしい形を意識させることを挙げています。解説が挙げているのはいずれも「など」つきの例示ですが、実際のつまずきもこの2つに寄ります。下の表はそこを軸に組みました。
| つまずきの種類 | 具体例 | 見せ方 |
|---|---|---|
| 左右が逆になる | b と d、p と q | 棒が左なら b と p、右なら d と q。おなかは棒の反対側につく |
| 上下が逆になる | b と p、d と q | 上に出るか、下に下がるか。せいくらべの3分類がそのまま効く |
| 高さを取り違える | a・c・e と f・l、g・y | 1階建て/2階建て/地下室のどこに座るか |
| 大文字と小文字で形が変わる | Aa、Bb、Ee、Gg、Qq、Rr | ペアカードで何度も出会わせる。説明より遭遇回数 |
| 大文字と小文字で形が変わらない | Cc、Jj、Kk、Oo、Ss、Zz | 先に扱うと成功体験になる |
最後の2行は、指導順の話につながります。解説は、Aa からアルファベット順に指導すべきものと考えるのではなく、どの文字から書く指導をした方が児童にとって効果的かを考えることが大切だとしたうえで、A・H・I などの左右対称の文字、Cc・Jj・Kk などの大文字と小文字の形がほぼ同じ文字を例に挙げています。A から順に、は公式の要求ではありません。
b と d の混同は、発達段階として自然に起きます。「まちがえやすいのがふつう」と全体に伝えてから扱うと、混同した子が自分だけだと感じずに済みます。4年では見分け方を深追いせず、大文字・小文字ペアカードで目を慣らすほうが結局は速く進みます。
5年——四線に書き始める
5年で初めて「書く」が入ります。解説が示す到達点は、最終的には児童が何も見ることなく自分の力で活字体の大文字、小文字を書くことができるように指導する、というところです。1年かけて、です。単元1つでは終わりません。
書き始める前に、順序性の確認をしておきます。解説は、聞くことの活動で文字の読み方に十分慣れ親しませ、読むことの活動で文字を識別したり発音したりさせ、その後に書く活動に取り組ませる、という順を明示しています。3年・4年でやってきたことが、そのままこの前段階に当たります。逆に言えば、聞いて指させない文字を書かせても、写しているだけになります。
四線の使い方は、部屋の話にすると一度で伝わります。4本の線があると、部屋は3つです。
- 大文字は26文字すべて同じ高さ。3本目の太い線(ベースライン)に立って、上の2部屋を使います
- 小文字の1階建て(a c e i m n o r s u v w x z の14字)は、真ん中の部屋だけ。i の点だけは上の部屋に置きます
- 小文字の2階建て(b d f h k l t の7字)は上の部屋まで。t だけは少し低く、上の部屋の途中で止まります
- 小文字の地下室(g j p q y の5字)はベースラインを突き抜けて下へ
- 語と語の間は指1本ぶん。日本語では単語を続けて書くので、区切りは意識しないと出てきません
指1本、という目安をわざわざ言うのには理由があります。解説は、区切りの指導を受けると語と語の間のスペースを不自然に長く取って書く子もいる、と両側の失敗を挙げています。あけない子と、あけすぎる子。どちらも「指1本」でそろいます。
書き順は、書きやすさと読みやすさの点から標準的なものを扱う、とされています。細部にこだわる必要はありません。筆記体は小学校の外国語科では扱いません。解説は、筆記体は中学校で生徒の学習負担に配慮しながら指導することができるとされている内容だ、と整理しています。
国語との接続もあります。解説は、ローマ字表記で用いられる文字は英語の文字との違いに気づかせながら指導し、ローマ字表記で用いられない文字は十分触れさせてから書くようにする、という工夫を挙げています。ローマ字ではほとんど出番のない l・q・v・x のような文字は、書かせる前に見る回数を増やしておく、ということです。
書く活動を1コマにどう載せるかは、小5 Unit 1 自己紹介の8時間に具体例があります。自分の名前を大文字で書くところから始めるのが、いちばん抵抗が少ない入り方です。書かせるときの注意も解説にそろっています。ドリル学習のような単調な繰り返しに終始せず、書く目的やゲーム的要素をもたせること。一度に全ての文字を扱わず、数や種類に配慮すること。そして、書く活動は教師が想像する以上に時間がかかるので、十分な時間を確保すること。「四線に書く」は5分では終わりません。
4時間で終わらせない——帯で回す紙
単元の4時間だけでは、文字は定着しません。かといって単元を増やすわけにもいきません。そこで、単元が終わったあとも朝学習や帯活動で何度でも使える紙を別に用意してあります。アルファベットの汎用教材8点がそれで、単元パックが「出会い」、こちらが「くり返し」という役割分担です。
| 紙 | 学年 | どこで使うか |
|---|---|---|
| 4せんでかこう(大文字A〜Z) | 5・6年 | 書き始めの数時間。26字を4ブロックに分けてあります |
| 4せんでかこう(小文字a〜z) | 5・6年 | アルファベット順ではなく、背の高さの3グループ順 |
| ネームプレート | 3〜6年 | 4月。3・4年はなぞりまで、5・6年は自分で書く |
| 小文字カード(a〜z) | 4〜6年 | 並べかえ、ペアさがし |
| 大文字・小文字ペアカード(16組32枚) | 4〜6年 | 神経衰弱、ペアさがし、かるた |
| アルファベットビンゴ | 3〜6年 | 聞き取り。大文字でも小文字でも○にするのが肝 |
| ならべかえ・ぬけた文字さがし | 3〜6年 | 10分。3・4年は言うだけ、5・6年は最後に四線へ |
| 文字あつめノート | 3〜6年 | 1枚を学期じゅう持ち続ける記録型 |
ビンゴだけ補足します。マスに書く文字は大文字でも小文字でもよいことにして、読み上げは名称だけ(D はディー)にします。D と d のどちらでも○になるので、「大文字と小文字は同じ名前」が体験として入ります。読み上げるたびに Big D, small d — same name! と添えると、ねらいが子どもにも見えます。ゲームの回し方はゲーム大全に15種まとめました。
文字あつめノートは、3年のさがしビンゴ(1時間の遊び)とは別物です。1枚を学期じゅう持ち続けます。見つかりにくい Q・X・Z・j・q・v・z は、校内のありかを先に下見してヒントを出すと最後まで進みます。
見取りは、ふだんの活動の中で
3・4年の外国語活動には数値の評定もA・B・Cもありません。指導要録には、観点に照らして顕著な事項がある場合にその特徴を文章で端的に記述します。かるたで聞いて反応できているか、せいくらべで形の違いに気づいた発言が出たか。単元中に数人ずつメモを取れば十分です。文例の作り方は外国語活動の所見の書き方にあります。
5・6年では、読むことと書くことの評価材料になります。大文字と小文字を見分けて名前が言えれば読むことのアは達成、四線のどの部屋を使えているか・語と語が離れているかが書くことのアの見どころです。
文字の名前は言えるのに、語の中の音になると分からない——この段差をどう扱うかは、小学校でどこまで踏み込むかという別の判断が要ります。文字と音をつなぐへ続きます。単元ごとの流れは授業の進め方から、実物は単元一覧から選べます。ALTに手伝ってもらえる日の分担はALT連携へどうぞ。