Small Talkの悩みは、たいてい「ネタが思いつかない」という形で出てきます。けれど話題を増やしても、次の週にはまた同じところで止まります。詰まっているのは中身ではなく、何分やって、だれが話して、そのあと何をするかという型のほうだからです。
先に答えだけ書いておきます。1〜2分程度の対話を2回程度、2時間に1回程度。あいだに中間指導が入るので、帯として押さえるのは5分前後です。毎時間やる必要はありません。
そして、その型は自分で考える必要がありません。文部科学省の小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック(平成29年)に、頻度から進め方まで書かれています。この記事は、その公式の型をそのまま45分の中に置き直したものです。
公式の型は、5行で言い切れる
研修ガイドブックがSmall Talkについて示していることを、そのまま並べます。
- 2時間に1回程度、帯活動で行う
- 5年生は指導者の話を聞くことを中心に、6年生はペアで伝え合うことを中心にする
- 授業の初めに、相手を替えて1〜2分程度の対話を2回程度行う
- 1回目の対話のあとに中間指導を入れる
- ねらいは2つ——既習表現を繰り返し使って定着させることと、対話の続け方を指導すること
ここで効いてくるのが1と5です。まず、毎時間やらなくてよい。週2時間なら週1回で公式どおりです。そして、ねらいが「既習表現の繰り返し」である以上、Small Talkは新しい表現を教える時間ではありません。今日の新出表現を先取りして入れる必要はなく、むしろ入れないほうが型に合います。使うのは、前の時間までに音で慣れ親しんだ言い方です。本サイトの台本も、第1時で出会った表現を第2時のSmall Talkでもう一度回す形にしてあります(新しい言い方をこの5分で初めて出すことはしません)。ネタ探しの範囲がここで一気に狭くなります。
45分のどこに置くか
本サイトの単元パックは、45分をこう組んでいます。Small Talkは冒頭の帯、5〜10分の位置です。
| 分 | 場面 | 使うもの |
|---|---|---|
| 0–5 | あいさつ・歌 | 教科書付属の音源 |
| 5–10 | Small Talk/チャンツ | Small Talk台本 |
| 10–15 | 語彙の練習 | 絵カード |
| 15–17 | めあての確認 | 黒板に型を掲示 |
| 17–37 | 主活動(途中で中間指導) | 活動シート |
| 37–45 | 振り返り・あいさつ | 振り返りカード |
8時間の単元でSmall Talkが入るのは、16単元すべてで第2時と第4時です(小5 Unit 1だけは第6・7時にもう1枚あります)。あいだの1・3・5時の帯は歌やチャンツ、第6時はキーフレーズの暗唱、テストの第8時は帯を置きません。単元の前半で「2時間に1回程度」のリズムを作り、後半は主活動に時間を回す形です。残りの回に無理やり入れると、10〜15分の語彙練習が削れて、その日の主活動が回らなくなります。
歌・チャンツに当てているその1・3・5時の帯を使いたくなったら、5分のはしごがあります。既に出会った表現を、時間を短くしながらもう一度言うだけの帯で、音源も要りません。ただしSmall Talkのコマは置きかえないでください。単元8時間のうちSmall Talkは2コマしかなく、ここを潰すと聞く量とやり取りの本体が減ります。
もうひとつ、単元計画の上でSmall Talkの時間に記録に残す評価を置いていないことも書いておきます。記録は第5・6・8時に寄せてあります。帯は指導に徹する時間で、ここでメモを取り始めると、子どもの前で先生の目が下を向きます。
5年と6年で変えるのは、話す人の割合
ここが公式の型のいちばん大事な分かれ目です。5年と6年で、活動の名前は同じでも中身が違います。
5年は「聞く」が中心です。先生がまとまった話をして、子どもは反応できればよい。Yes! でも、うなずきでも、絵カードの指さしでも成立します。小5 Unit 1「はじめまして、5年◯組」の台本を例に挙げると、先生が絵カードを見せながら I like soccer. と話し、I like dogs. Do you like dogs? Cats? と聞いて、犬派・ねこ派で手が挙がる。これで1分です。子どもに長く話させようとしなくて構いません。
6年は「ペアで伝え合う」が中心です。先生の話は1分で切り上げて、ペアの時間を確保します。小6 Unit 3「週末・夏休みレポーター」の台本では、先生が I went to the supermarket. And... I ate curry and rice! と話したあと、How about you? Pair talk! でペアに渡し、相手を替えて2回。ここで先生が話し続けると、6年の型が5年の型に戻ってしまいます。
答えられない子への手は、学年に関係なく同じです。2択にして指ささせる。Park? Or house? と絵カードを2枚見せて、選んで指させたら That's nice! で成立とします。この一手があるかどうかで、教室の下のほうが動くかが決まります。
過去形の文が出てくる6年の話題では、文法の説明はしません。went と go の関係に気づいた子には「よく気づいたね、中学でその秘密が分かるよ」と返して流します。中学校で1年生を受け持ってきた立場から言うと、ここで説明されて分からなかった経験を持ってくる子より、「気づいた」という感触だけ持ってくる子のほうが、文字と文法が始まる入り口で立ち止まりにくいと感じます。
話題は「本当のこと」から作る
研修ガイドブックは、なりきりではなく実際の出来事や気持ちを話すことを原則にしています。これは教育的な建前ではなく、実務的な理由がある決まりです。作り話は子どもに伝わりますし、作り話だと分かった瞬間に、子どもの側も本当のことを言わなくなります。伝え合う中身が消えると、残るのは英文の暗唱です。
話題を選ぶときの条件は3つだけです。
- 子どもが既習の範囲で答えられるか(I like .... / I can .... / What ... do you like? の圏内か)
- 全員が持っているか(持ち物・旅行・習い事は、持っていない子が黙る話題になりやすい)
- 先生が本当に語れるか(語れないなら、その話題は今週やめる)
地味でいいのです。むしろ地味なほうが効きます。「スーパーに行ってカレーを食べた」という週末を先生が話すと、教室は「その程度でいいのか」と安心します。「どこにも行っていない」という声が出たら、I stayed home. I watched TV. It was relaxing! と板書して選択肢に加えます。家で過ごした休みも対等な話題だと、先生が形にして見せることになります。
配慮が要る話題では、先生の話として完結させ、質問だけ安全な方向へ寄せるという手が使えます。たとえば家族の話をするなら、先生が自分の祖母の話をしたうえで、子どもへの質問は「おばあちゃんの料理は好き?」のように食べ物に寄せる。家族構成そのものを子どもに言わせない形になります。
日本語訳は、はさまないほうが伝わります。訳した瞬間に、子どもは日本語を待つようになります。代わりに使うのは、実物・写真1枚・絵カード・ジェスチャーです。写真がなければ棒人間の絵でかまいません。笑いが起きるぶんだけ得をします。
中間指導の1〜2分で何をするか
1回目の対話のあとに中間指導を入れる、というのが公式の型です。ここを飛ばすと、2回目は1回目のくり返しになり、Small Talkは「同じことを2回言う時間」になります。
中間指導で扱うのは、話題ではなく対話の続け方です。研修ガイドブックは、対話を続けるための基本表現を6つの働きに分けて示しています。教室でそのまま使える言い方にすると、こうなります。
| はたらき | 教室で使うことば |
|---|---|
| 始める | Hello! / Hello, everyone! |
| くり返す | Good at soccer?(相手のことばを語尾を上げてくり返す) |
| 一言感想 | Nice! / Me, too! / Really? |
| 確かめる | Pardon? / One more time, please. |
| さらに質問する | How about you? / What sport do you like? |
| 終える | Thank you. / See you! |
大事なのは、この6つを一度に配らないことです。1回の中間指導で扱うのは1つだけ。1〜2分の手順は次のとおりです。
- 拾う(30秒) 「今、Me, too! って言えた人?」と挙手させる。できた子を見つける形にします
- 全員で言う(30秒) 出てきたものから1つ選んで、全員で2回声に出す
- 宣言する(10秒) 「2回目はこれを1回使えたら名人」と課題を1つだけ渡して再開
6つを年間で一巡させると考えれば、1回に1つで足ります。5年の1学期は「一言感想」だけでも十分で、「さらに質問する」は、本サイトでも小5 Unit 1の終盤で What sport do you like? を一度出したあと、6年の Unit 1〜3 で Why? / How about you? と少しずつ増やす順にしてあります。急いで6つ全部を配らないことのほうが大事です。
なお、ここでいう中間指導は帯の中の1〜2分の話です。主活動20分の折り返しに入れる中間指導は別物で、そちらは「1回目 → ことばの補給 → 2回目」を20分の中で回す進行台本を、5・6年の全16単元の活動シートに入れてあります。時間は1分も足さない設計です。単元ごとの回し方は授業の進め方の各記事に書いてあります。
ネタが尽きたときの3つの引き出し
それでも週が進むとネタは尽きます。引き出しは3つ用意しておくと回ります。
1. カレンダーから引く。 敬老の日、お月見、運動会、衣替え、七五三、大そうじ。行事は全員が知っていて、しかも毎年来ます。「月曜日は敬老の日だね」から始めれば、話題探しは終わっています。
2. 既習表現から逆に引く。 話題を決めてから英語を探すと詰まりますが、順番を逆にすると詰まりません。今週使える文が I can .... なら、「先生ができること・できないこと」で1本できます。What color do you like? を習ったばかりなら、衣替えの話がそのまま乗ります。
3. 教室の「いま」を使う。 運動会の練習でくたくたな週、給食に新しいメニューが出た日、席替えの翌日。子どもが今いちばん話したいことは、たいてい教室の中にあります。
そのうえで、毎週の分は用意してあります。連載今週のSmall Talkを、2学期は毎週月曜に1本ずつ配信しています。8月31日の週の「先生の夏休み」から12月21日の週の「冬休みの計画」まで17週分、季節の話題と既習表現を組み合わせた台本です。今週の台本は無料で読めます(モデル音声とアーカイブはPremiumで、第1回は音声まで無料でお試しできます)。
台本は、そのまま読み上げてよい
単独で授業をすることに不安を感じる教員は76%、その要因の81%が「自身の英語力」でした(杉並区の小学校教員396名への調査・折井2022)。この不安に対する答えは、英語力をつけることではなく、その場で英語を作らなくてよい形にすることだと考えています。
本サイトのSmall Talk台本は、T(先生)とS(児童)の行を日英併記で書いてあります。一言一句そのまま読み上げてよい設計で、5・6年の全16単元に入っています(小5 Unit 1だけは単元の性格上2枚あり、合計17枚です)。各台本には、話題ごとの板書、答えられない子への手(help)、その日の中間指導で何をするか、の3つが添えてあります。
読み上げに抵抗があるうちは、台本を黒板の横に貼っておいても構いません。子どもが見ているのは、先生が紙を見ているかどうかではなく、先生が本当のことを話しているかどうかです。発音が気になる場合は、連載のモデル音声を前の休み時間に一度聞いておくと、かなり違います。
聞き返しのことば(One more time, please. / Slowly, please.)は、こまったときのえいごのポスターとして黒板の横に貼りっぱなしにできます。中間指導で「確かめる」を扱う日は、この紙を指させば説明が要りません。
Small Talkが効いてくる場所
帯の5分は、単元のゴールに直結しています。話すこと[やり取り]のパフォーマンステストで差がつくのは、話す内容の量ではなく、相手の話に何か返せるかです。Nice! と返せる子と、黙って次の質問に移る子とでは、同じ英語力でも1分間の中身が変わります。その返し方を練習できるのが、この5分です。
テストの回し方はパフォーマンステストの回し方に、単元ごとの評価規準の作り方は評価規準の作り方にまとめました。ALTが来る日はデモ対話をお願いする場面でもあるので、分担はALTと組む45分の進行台本を、ひとりで回す日の組み立てはALTがいない日の45分を参照してください。
なお、公式の型が想定しているのは5・6年です。3・4年の外国語活動には、本サイトでもSmall Talkの台本を置いていません。この時期の帯は歌・チャンツ・あいさつリレーのほうが実態に合うと考えています。3・4年の活動は単元一覧から、活動の型そのものはゲーム辞典から選べます。
よくある質問
Small Talkは何分やればいいですか?
1回の対話が1〜2分程度、それを相手を替えて2回程度です。あいだに中間指導が1〜2分入るので、帯として押さえるのは5分前後になります。研修ガイドブックが示しているのはこの形で、長くやることは求められていません。5分で足りないと感じるときは、時間ではなく話題の絞り込みを疑うほうが早いです。
毎時間やらないといけませんか?
いりません。示されているのは「2時間に1回程度」です。週2時間の学級なら週1回で公式どおりで、1単元8時間なら4回程度になります。毎時間やろうとして続かなくなるより、隔時間で型を守るほうが趣旨に合います。
中学校でも同じ型でいいですか?
このページで扱っているのは小学校(外国語科)の型で、根拠も小学校の研修ガイドブックです。中学校のSmall Talkは、既習表現に慣れることより「その場で組み立てる」ほうへ重心が移り、時間も型も変わります。中学校での帯の回し方は即興で話す力の育て方にまとめてあります。