ALTとの授業がうまくいかないとき、たいてい原因は英語力ではなく分担が決まっていないことです。廊下で5分だけ会って「今日はUnit 3です、よろしくお願いします」と伝えると、あとは出たとこ勝負になります。ALTは何をすればいいか分からないまま前に立ち、担任は英語で指示を出す場面が来るたびに緊張します。
先に分担を決めておけば、打ち合わせは「今日はここをお願いします」と紙を指さすだけで済みます。この記事は、その分担の型です。実物のALT打ち合わせシート(記入式・A4×1枚)は無料で配っています。
授業を回すのは担任、というのが出発点
小学校のALTの入り方は、学校によってかなり違います。文部科学省の調査では、5・6年の授業の75%以上にALTが参画している学校が約4割ある一方で、参画0%の学校も286校あります(令和5年度・英語教育実施状況調査)。つまり、ALTがいる前提では年間を組めないのが実情です。
だから、ALTが来た日だけ進み方が変わる設計にはしません。授業の流れは担任(T1)が回し、ALTは音のモデルとやり取りの相手という2つの役に集中してもらう。これが、いない日と地続きになる分担です。
担任の英語力への不安は現実で、杉並区の小学校教員396名への調査では、単独授業に不安を感じる人が76%、その要因として「自身の英語力」を挙げた人が81%でした(折井2022)。だからこそ、ALTに任せる部分を「先生が言いにくいところ」ではなく「ALTにしかできないところ」で切ります。
45分のどこで、誰が何をするか
| 分 | 場面 | 担任(T1) | ALT(T2) |
|---|---|---|---|
| 0–5 | あいさつ・歌 | 進行。出欠や連絡もここで | あいさつのモデル。名前を呼んでほめる |
| 5–10 | Small Talk/チャンツ | 話題を出す・日本語で補う | 担任とのデモ対話1分(台本は担任が用意) |
| 10–15 | 語彙の練習 | 絵カードを見せる・テンポを作る | 発音モデル。ゆっくり2回ずつ |
| 15–17 | めあての確認 | 板書・日本語で説明 | (見ている。子どもの近くへ) |
| 17–37 | 主活動+中間指導 | 全体の進行・中間指導 | ペアの1人として参加/インタビューのゲスト役 |
| 37–45 | 振り返り・あいさつ | 1行書かせる・次回予告 | 名前をつけてほめる |
太字がALTの出番です。この3つだけ決まっていれば、打ち合わせは1分で終わります。
5〜10分のデモ対話は、ALTがいる日にいちばん価値が出る場面です。子どもは「英語で話している大人2人」を見る機会がほとんどありません。台本は担任が用意します(単元パックのSmall Talk台本がそのまま使えます)。ALTに即興を求めると、話が速くなって子どもが置いていかれます。
10〜15分の発音モデルでは、必ず「ゆっくり2回」を頼みます。ネイティブスピードで1回だと、子どもは1回目を聞き逃した時点で終わります。
主活動でのALTは、前に立たせないほうが機能します。ペアの1人として教室に入ってもらうと、子どもは「英語が通じた」という経験を1対1でできます。インタビュー型の単元なら、ゲスト役をお願いするのがいちばん盛り上がります。
その場で使う英語は、5つで足ります
打ち合わせと授業中に必要な英語は、実際にはこれだけです。指さし用の1枚にして持っておくと、言い出せずに終わることがなくなります。
- Do you have five minutes?(5分だけいいですか)——これで打ち合わせが始まります
- This is today's plan. Here is your part.(今日の流れです。ここがあなたの出番です)——シートを指さすだけ
- Could you say this slowly, twice?(ここをゆっくり2回言ってもらえますか)
- How do you pronounce this?(これはどう発音しますか)——自分の予習にもなります。聞くのは恥ずかしいことではありません
- Sorry? One more time, please.(すみません、もう一度)——聞き取れないのはふつうのことです
最後に That was great! Thank you for today. と See you next time! が言えると、次回の関係が変わります。この5つにお礼の2つを足した7フレーズを、ALT打ち合わせフレーズ(指さし用・A4×1枚)として無料で配っています。
打ち合わせが5分しか取れない日の渡し方
理想は前日ですが、現実は当日の廊下です。5分で渡すなら、順番はこうです。
- 今日のゴールを1文で(子どもが何を言えたらOKか)。Students can say: .... の形で書いておく
- ALTの出番に印をつけた紙を渡す。デモ対話・発音モデル・活動参加のどれかに✓
- お願いを1つだけ口で言う。「ゆっくり2回」か「名前をつけてほめて」のどちらか
これ以上は伝わりません。3つに絞ると、かえって毎回同じ形になって、ALT側も動きやすくなります。単元ごとのALTシート(その単元で頼むこと5本)は、いまのところ小3・小4の全単元と小5「自己紹介」の単元パックに入っています。ほかの単元では、上の記入式シートがそのまま使えます。
テストの日と、ALTがいない日
パフォーマンステストの日にALTが来られるなら、待機グループの見守りをお願いします(During the performance test, please watch the waiting group.)。テスト席から動けない担任にとって、教室の後ろを見てくれる大人が1人いるだけで負担がまるで違います。テスト自体は担任が行います。評価は担任の仕事だからです。回し方はパフォーマンステストの回し方へ。
ALTがいない日にどう回すかはALTがいない日の45分にまとめました。単元ごとの流れは授業の進め方の記事一覧から選べます。