can は、小学校で子どもが出会う助動詞の第1号です。文法用語で説明したくなるところですが、5年生に「助動詞のあとは動詞の原形」と言っても手が動きません。この単元でやることは1つだけ、can と can't を耳で聞き分けられるようにすることです。
もう1つ、この単元には地雷があります。「できること自慢大会」になってしまうことです。ねらいはできることの数ではなく、たずね合って相手を知ること。ここでは小5 Unit 3「できることビンゴ・クラスのすごい人発見」の単元パック(NEW HORIZON Elementary 5 Unit 3 "Can you play dodgeball?" / Here We Go! 5 Unit 4 "He can run fast." 対応)を使って、8時間を組み立てます。
8時間の見取り図
| 時 | 主な活動 | 帯(はじめ5分) | 記録 |
|---|---|---|---|
| 1 | 先生とALTの「できること・できないこと自慢」を聞く(can / can't に出会う) | 歌/チャンツ | — |
| 2 | 動作の言い方練習(絵カード)+できる?できない?聞き分けかるた(活動1) | Small Talk①話題1(先生のできること) | — |
| 3 | Can you ...? — Yes, I can. / No, I can't. のたずね方・答え方の練習+きくワーク(同じ動作で can と can't を聞き分ける) | 歌/チャンツ | — |
| 4 | ビンゴのマスづくり(できること9つを選ぶ)+書きWS① | Small Talk①話題2(できるようになったこと) | — |
| 5 | できることビンゴ大会①(活動2)→中間指導 | 歌/チャンツ | ◎行動観察(知技) |
| 6 | 書きWS②(たずねる文とすごい人の文)→できることビンゴ大会②+「クラスのすごい人」メモづくり | Small Talk②話題1(先生の「意外なすごい人」) | ◎行動観察(思判表) |
| 7 | 世界の子どものできることを聞く(教科書OH)+クラスのできることマップ(活動3)→おわりにレアな can の人へ Wow! を言いに行く | Small Talk②話題2(できることマップを読む) | — |
| 8 | パフォーマンステスト(やり取り)+単元の振り返り | なし——テストに使い切る | ◎テスト(知技・思判表)+振り返りカード(態度) |
第1時:先生が「できないこと」から自己開示する
第1時の入り方で、この単元の空気が決まります。先生が先に I can't swim. と言ってしまうことです。できないことを言うのは恥ずかしくない、という基準を大人が先に作ります。ALTがいる日なら、二人で「できること・できないこと自慢」をやると、can と can't が自然に何度も出ます。
ここで I can't を言えるようにしておくと、後半のビンゴで No, I can't. と答えるのをためらわなくなります。逆にここを飛ばすと、できる子だけが盛り上がる時間になります。
第2〜3時:can と can't を、文法ではなく音で
文の中では can は弱く短く「クン」に近い音になり、can't は強くはっきり言って最後に息を止めます(Yes, I can. のように文の終わりに来るときは、can もはっきり言います)。この違いを説明する必要はありません。先生が続けて2回言い、どちらだったかを当てさせるだけで、子どもは自分で気づきます。
第2時の聞き分けかるたがその装置です。先生(第8時は子ども)が I can swim. / I can't swim. と読み上げ、can なら班でそのカードを取り、can't なら取りません。取ったら文をまねして言うところまでが1セットです。聞き取りが苦手な子は、先生の口元が見える位置に座らせます。can't の息の止まりは、口の形でも見えます。
第3時で Can you ...? のたずね方に進みます。答えは Yes, I can. / No, I can't. の2つだけ。ここで「できないと答えると悪い」という空気が出ないよう、先生が No, I can't. But I can .... と続けて見せておくと、子どもが真似します。
第4〜6時:ビンゴと、20分のサンドイッチ
ビンゴのマスは9つ。自分が「たずねてみたいできること」を選んで書きます。英語で書けるかどうかは評価しません。絵でも日本語でもよい、と最初に言い切ります。ここで英語のつづりを求めると、書ける子だけの活動になります。
第5時のビンゴ大会が主活動です。20分は2回に割ります。
- 1回目(6分) 相手を替えて Can you ...? でたずね、Yes ならそのマスに友だちの名前を書く
- あつめる(2分) 「言いたかったのに言えなかったこと」を日本語で出させます(班で1つ選び、3〜4班が言う)
- 英語にする(3分) Wow! Really? / I can, too! / A little! など、反応のことばを補給表の8本から板書
- 自分の台詞にもどす(1分) 言えなかった子がとなりに1回言う
- 2回目(8分) まだ話していない相手へ
2回目を8分とるのは、この時間の記録(知識・技能)を2回目の話す姿で見るためです。
この単元の補給は「反応」に寄せます。Yes/No で終わると会話が1往復で切れるからです。I can, too! が1つ言えるだけで、ビンゴの列より会話のほうが面白くなります。Yes と No のあいだを言える A little! も、この単元の当たりのことばです。
第6時の「クラスのすごい人」は、上手さのランキングではありません。「へえ、意外!」の発見です。ここで子どもは自然に「〇〇さんは一輪車に乗れるらしい」と言いたくなります。その瞬間に He[She] can .... の形を先生が板書で見せます。この単元では出会うだけで、くわしくは次の単元(NEW HORIZON Elementary 5ならUnit 4「Who is this?」、Here We Go! 5ならUnit 5「My hero is my brother.」)で扱います。三人称の -s が出ない形なので、文法の壁なしに三人称を話せる——教科書がこの並びになっているのはそのためです。
第7〜8時:発表と、テストの日
第7時は教科書のOver the Horizonと、クラスのできることマップです。先生が16の動作を Can you ...? でたずね、できる人が手をあげ、その手の数だけをマスに書きます。手をあげるかどうかは自分で決めてよく、できない人の数は数えません。人を「できることの数」で並べると、たずね合って相手を知る単元が自慢くらべに変わるからです。おわりに、手の少なかった「レアな can」の友だちに Wow! を言いに行きます。みんなに伝える1文は、希望した班の代表が席で2〜3班言えば十分です。
第8時はテスト。45分を使い切るので帯は置きません。1人約1分×35人で35〜40分。班をA〜Dに分け、1班終わるごとにA→B→C→D→Aと役割がずれます。待機班は、聞き分けかるた(読み手は子ども)、すごい人メモの清書、振り返りカードです。テストに持って行く絵カードは教卓の提示用から選ばせます。班のかるたセットから抜くと、B班のかるたが16枚そろわなくなるからです。
テストで見るのは、Can you ...? に答えられるか、自分から I can .... を1〜2文言えるか。挑戦枠として He[She] can .... で友だちを1人紹介できたら◎ですが、言えなくても減点しません。
この単元でよくあるつまずき
- 「できないこと」を言いたがらない子がいる。言うか言わないかは本人が決めてよい、と第1時に明言します。先生が先に言って見せるのがいちばん効きます
- 習い事の有無が出てしまう。絵カードには走る・とぶ・歌う・そうじなど、道具も習い事も要らない動作を必ず混ぜてあります。マス選びのときに「9つのうち3つはこの中から」と条件をつけると、家庭差が出にくくなります
- ビンゴの列を競い出す。列がそろった子には、空いたマスを続けて、Yes のあとに Wow! や Me, too! を1つ返すことを次の課題にすると、たずね合いに戻ります
前の単元は小5 Unit 2 誕生日の授業、単元の評価規準づくりは評価規準の作り方へ。ALTが入る日の分担はALTと組む45分にまとめています。