「日本のすてきを紹介しよう」と板書した瞬間に、教室の温度が二つに分かれることがあります。旅行の話をたくさん持っている子と、そうでない子です。この単元でいちばん先に外しておきたい地雷は、そこにあります。
だから第1時で言い切ります。紹介するのは「行ったことがある場所」ではなく「日本にあるもの」です。桜も、夏祭りも、雪も、ラーメンも、行ったかどうかとは関係なく日本にあります。過去形を一度も出さない設計になっているのは、文法の都合だけではありません。思い出話にしなければ、旅行の経験の差も費用の差も教室に出てこないからです。
もう一つ、この単元には強い装置があります。「季節と行事 → できること → 感想」の3点セットです。順番が決まっているだけで、5年生は英語で3文話せるようになります。ここでは小5 Unit 7「日本のすてきポスターで Welcome to Japan!」の単元パック(NEW HORIZON Elementary 5 Unit 7 "Welcome to Japan!" / Here We Go! は6年配当で Unit 2 "Welcome to Japan." 対応)の7点を使って、8時間を組みます。
8時間の見取り図
| 時 | 主な活動 | 帯(はじめ5分) | 記録 |
|---|---|---|---|
| 1 | 先生・ALTの「日本のすてき」を聞く(Welcome to Japan. / We have ... に出会う)+「だれに伝えるか」を決めて掲示 | 歌/チャンツ | — |
| 2 | 季節・行事の言い方練習(絵カード)+季節めぐりすごろく(活動1) | Small Talk①話題1(先生の好きな季節) | — |
| 3 | You can .... の言い方+感想 It's .... とリアクション練習 | 歌/チャンツ | — |
| 4 | 3点セットを口で組み立てる(季節→できること→感想)+書きWS① | Small Talk①話題2(外国の友だちに教えたい日本) | — |
| 5 | グループでポスターの台本づくり・役わり決め(活動2) | 歌/チャンツ | ◎行動観察(知技) |
| 6 | ポスター発表リハーサル①(グループ交換)→中間指導 | 歌/キーフレーズ暗唱 | ◎行動観察(思判表) |
| 7 | 世界の国のすてきを聞く(教科書OH)+ポスター発表本番→おわりに「行ってみたくなったポスター」発表 | 歌/チャンツ | — |
| 8 | パフォーマンステスト(発表+やり取り)+単元の振り返り | なし——テストに使い切る | ◎テスト(知技・思判表)+振り返りカード(態度) |
第1〜2時:相手を決めて、教室に貼る
第1時の仕事は2つあります。1つは、先生(ALTが入る日なら二人で)が日本のすてきを英語で話し、Welcome to Japan. と We have ... の音に出会わせること。もう1つが、この単元の核です。だれに伝えるかを決めて、教室に貼ること。ALT、姉妹校の子、オンライン交流の相手——相手の顔が見えるほど、子どもの言葉は出ます。
We have は、U5「町・道案内」で自分の町を紹介したときに使った形です。新しいのは、うしろに in +季節が付くところだけ。「今日から新しく覚えるのは in だけ」と最初に言い切ると、子どもの構えがほどけます。have を「持っている」と訳さないのも大事なところで、「日本には〜があるよ」の合図の音として、かたまりのまま渡します。ここで文法の説明をした瞬間に、話せなくなります。
第2時は絵カード16枚で季節・行事のことばを浴びてから、季節めぐりすごろく(活動シート1)へ。盤は16マス、班に1枚、サイコロも班に1つ。止まったマスで「We have(行事)in(季節).」→「You can(できること).」の順に2文言えたら、そのマスに止まれます。言えなければ1回休みで、次の番にもう一度挑戦。班の人は盤や絵カードを指さして助けてよいけれど、言ってあげるのはなし——このルールだけ徹底します。
進む手順そのものが3点セットの順番になっているのが、この盤の仕掛けです。ゲーム中に順番を説明し直さないほど、第5時の台本づくりで「順番が分からない」が減ります。サイコロが足りなければ、1〜6を書いた紙を裏返して引かせれば同じように回ります。サイコロ探しで5分溶かさないことのほうが大事です。
第3〜4時:感想は「おまけ」の位置に置いておく
第3時で You can .... と感想の It's .... を足します。ここでことばを増やしすぎないのがコツで、Small Talkの中間指導でも黒板に並べるのは fun / beautiful / delicious の3つだけ。1回に増やすのは1つにします。
すごろくで3文目(It's ~.)が「言えたらもう1マス」というボーナスの位置に置いてあるのも、同じ理由です。3文全部を必須にしたとたん、2文言えていた子まで止まります。
第4時は3点セットを口で組み立ててから、書きワークシート①へ。Welcome to Japan. をなぞり、ことばバンクから選んで We have ~ in ~. と You can ~. を書き写します。自力の英作文までは求めません(小学校の「書くこと」がどこまでかは聞く・読む・書くの評価にまとめています)。
この日のSmall Talkは「外国の友だちに教えたい日本」。町のじまんが思いつかない子には、学校でできることへ広げてやります。You can play dodgeball. / You can eat school lunch. は、クラス全員が持っている共有財産です。
第5〜6時:ポスターと、20分のサンドイッチ
第5時に台本と役わり、第6時にリハーサル、第7時に本番。作る日と発表する日を分けるのが時数のリアリズムで、1時間に詰めると必ず崩壊します。
台本は5行です。Hello! Welcome to Japan! / We have ... in .... / You can .... / It's .... / Please come to Japan. Thank you! 4人グループならこの5行を分け合って、1人1文以上。担当らんに名前を書くところまでが第5時の仕事で、知識・技能の見取りは、この( )の中でします。季節と行事が合っているか、You can のあとが動きのことばになっているか。写しでかまいません。
第6時の主活動20分は、時間を1分も足さずに2回へ割ります。
- 1回目・0〜7分 となりの班と見せ合い(発表3分+質問1つ)。先生は「質問が出なかった班」を見つけて回ります
- あつめる・7〜9分 聞きたかったこと・言えなかったことを日本語で出させます。発表側と聞く側の両方から、3〜4個で十分です
- 英語にする・9〜12分 補給表から近いものを黒板へ書き写し、全員で2回ずつ声に出します。先生がその場で英語を作らなくていいのが、この表の役目です
- 自分の台詞にもどす・12〜13分 2回目にする質問か、言い直す文を1つ決めて、となりに1回言えたら準備完了
- 2回目・13〜20分 別の班と交換。「質問が返ってきて発表は完成」と言ってから始め、終わりに本番の予告をして締めます
補給は聞く側に寄せます。発表の3文は台本にもう書いてあるので、2回目が伸びるかどうかは質問の数で決まるからです。ポスターの絵を指して言う What's this?、もう一歩ふみこむ Anything else?、そして August? のように語尾を上げてくり返すだけの確かめ。この3本が入ると、班と班のあいだに会話が生まれます。
「もちつき」「ぼんおどり」を英語にしてほしいと言われることがありますが、しなくていい、が答えです。mochitsuki、Bon-odori のまま出します。英語で何と言うかは中学校で出会うおたのしみ、と返して十分です。
第7〜8時:本番と、テストの日
第7時は教科書のOver the Horizon(世界の国のすてき)を聞いてから、ポスター発表の本番です。進行は第6時の台本のままで回せます。1グループ1分厳守。ここで延びると、第8時のテストへそのまま食い込みます。時間のおわりに「行ってみたくなったポスター」を出し合って締めます。
第8時はテストです。帯は置かず、45分をまるごと使います。先生と1対1で約1分、30〜40秒の紹介に質問を1〜2つ。1班8〜9人・約1分×35人で35〜40分が見当です。ポスターは1グループ1枚しかないので、朝のうちに全グループぶんを黒板へ貼っておき、子どもはテスト席から指さして話します。手元にあるのは活動シート2の台本だけ。持ち歩かせないので、取り合いが起きません。
先生はアンナさん(日本を知らない人)になります。Please tell me about your poster. から入り、What can I eat in Japan?(食べもの以外の子には What can I see?)で You can .... を1つ引き出し、Is it fun? で感想へ。Thank you! See you! のお別れまでがテストです。
待っている3班は、Bがポスターに足す「もう1文(You can ....)」を台本の空きらんに書き、Cが季節めぐりすごろくの延長戦(小声・盤は4〜5人に1枚)、Dが振り返りカードの単元のまとめ。1班終わるごとに役割がA→B→C→D→Aと1つずれていきます。どれも先生の手を借りずに回るものだけを置いてあります。
評価しないものも先に決めておきます。ポスターの絵のうまさと色ぬりの丁寧さ(図工の評価と混ぜない)、a や the の抜け、月名の発音。日本の行事にくわしいかどうかも、その場所へ行ったことがあるかも無関係です。見るのは、聞き手に伝えようとしているかだけ。
この単元でよくあるつまずき
- 「行ったことないから書けない」で手が止まる。紹介するのは日本にあるもの、と第1時の宣言に戻します。教室・学校・町で見られるものから出させると、全員が入れます
- ポスターづくりが図工の時間になる。色ぬりとかざりは英語の45分から外し、宿題か図工へ回します。英語の時間の本丸は、文を決めることです
- 行事の名前が英語にならない。無理に訳を作らないでください。日本のことばはそのままで通じます。その場でまちがった英語を作らないほうが、あとの単元で困りません
次の単元は小5 Unit 8 あこがれの人の授業、前半の流れは小5 Unit 3 できることの授業にあります。ALTが入る日の分担はALTと組む45分の進行台本、テストの日の回し方はパフォーマンステストの回し方へ。